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夜空
死んだ人が私のなかで生きていて、死なないで死なないでと私は唱えて、張り裂ける。 それは私の日常です。 あまりにも、 死んだ人が多すぎる 私は心の核弾頭をはるか空へ向かって ぴゅーん 僕は その星の方へ歩き始めた。 砂粒のなかから芽吹いた僕の亡霊は、確かな26.5cmで踏みしめ、踏みしめ、夜を巡り結った。かつて魂を宿していた証拠だけ身に纏って、ゆっくり生き続けた。この鼓動のない足音を、聴こえるように。僕を愛してくれた人へ、聴こえるように。たくさんの思い出をありがとうございます。 わずかな綻んだ風に舞い上げられた他の亡霊たちが、僕にいちいち贈り物を渡してくれた。それは、笑顔の遺伝子を、悲しみのグラナを、不甲斐ないテロメアだったり、この地に染み付いたタトゥーのようなものだ。僕もこうやって小さな歪みのなかで消えてしまうかもしれない恐怖を持ちながら、いちいちの贈り物を大切に保持するようになった。愛は少しずつ散骨されていく。新芽は健やかな幸先で、土壌になる。この砂漠はやさしさの一粒一粒の積もりで熟された。 水の惑星を旅する僕は、ただ一筋のその安穏と流れる箒星へ、永遠に向かい続けている最中だ。こんなにきれいな心の海を、僕たちは互いにただ死にゆくだけで、なんだかもったいないね。約束なんかじゃないから、絶対死なないでねって言わせてくれよ。死ぬときに、死なないでねって言いますので、ぜひ、その際は、耳を傾けてくださいね。 こんなに寒いから雪が降っております。 気が付けば雲に透けて、朧な月光です。 馴れない天候に、傘を持たぬか持つか、 玄関で逡巡しております。 ささいな悩みなのに、 今日はそれがひどく重要なのでないかと、 感じて 慎重にフェイクレザーの右手を 柄に重ねて、 心の目を閉じます。 公園に足を伸ばしたら、つむじ風が グラウンドの中心で巻き、 何かを失うように、 あ、と声が漏れました。 〈感情のあふれる描写〉 変化に抗えない私たちは、 ゆっくりゆっくり歩いていきます。 ゆっくりゆっくり散骨されていきます。 間違いなんて一つもありません。 ここまでの途轍に、 夜風が吹き抜けます。 友達が 詩を読んでくれます。 かるべが何か言ってるな、と よくわかんないけど、 僕が生きていることを、 知っていてくれます。 亡霊にはテロメアなんてなくて、 もう、死ねないんだ。 ぜったい、死なないでね。 ぜったい、死なないでね。 何回も何回も詠唱しますので、 耳を、今だけ僕に捧げていてください。 何回も何回も詠唱しますので、 なんてきれいな星空なんだろう―― 〈感情のあふれてしょうがない描写・博多駅で泣き崩れている・靴紐を結ぶだけでパニックになっている・抱きしめている・公園で逆上がりをしている・叫ぼう・泣き叫ぶと・少しすっきりして・お腹が空いて・ご飯を食べて・また泣き叫ぼう・そこで少し座って休むのを受け入れてもらえるやさしい博多駅〉 砂丘の上に なにかが突き刺さっている。 夜空に咲く樹木だ。 突き刺さっているのは、夜空に伸びる掌。 その覆いの下で、 僕は雨宿りをしながら、 少しずつ消えていきました。
夜空 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1202.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 13
作成日時 2018-12-02
コメント日時 2018-12-06
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 11 | 11 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合ポイント | 13 | 13 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 11 | 11 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合 | 13 | 13 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「死んだ人が私のなかで生きていて、死なないで死なないでと私は唱えて、張り裂ける。」 冒頭から心を掴まれました。死とはもちろん字面通りの意味もあるのでしょうが、生きていながらそのひとが喪失されてしまう経験なんかも含まれるのかなと勝手に考えてしまいました。以前に拙作のコメント欄でかるべさんが友達が入れ替わりであることに悩むということがあると書いてくださったことをぼんやりと想起しました。だから余計に 「ぜったい、死なないでね。 ぜったい、死なないでね。 何回も何回も詠唱しますので、 耳を、今だけ僕に捧げていてください。 何回も何回も詠唱しますので、」という箇所が、もう誰も失いたくはない作中主体の悲痛な叫びとして響いてきました。 「〈感情のあふれる描写〉」 「〈感情のあふれてしょうがない描写・博多駅で泣き崩れている・靴紐を結ぶだけでパニックになっている・抱きしめている・公園で逆上がりをしている・叫ぼう・泣き叫ぶと・少しすっきりして・お腹が空いて・ご飯を食べて・また泣き叫ぼう・そこで少し座って休むのを受け入れてもらえるやさしい博多駅〉」 ここで感情のピークが訪れていて、それを具体的な描写ではなく、○○の描写と書くことで、読み手にその具体性が託されていて、そこにこの作品のよさが特に現れていると思いました。すごく好きな詩です。
0蛾兆ボルカ 様 コメントをありがとうございます。 普段、亡霊が物理法則に拠る描写を全く信じていないのですが、人の内でのことならあるかなと感じ、テロメアが出てきました。 心があるものは全て老けていきそうです。 鬱海 様 コメントをありがとうございます。 好きと感じてもらえて、すごくうれしいです。 少し自分を切り売りする術を組み込んだのはすでに自分の中で賛否があったんですが、感情について、うまく読み手に託せているなら、安心です。 ありがとうございます。
0「夜空」 > 死んだ人が私のなかで生きていて、死なないで死なないでと私は唱えて、張り裂ける。 > それは私の日常です。 > あまりにも、 > 死んだ人が多すぎる > 私は心の核弾頭をはるか空へ向かって 死ぬという単語ですが、思い出を振り返る事に繋がります。一行目で、自身の吐露も書かれていて分かりやすいです。核弾頭を~なんですが、夜空を心象にすれば良かったのになぁーが本音です。 > ぴゅーん 分かりやすいです。ですが、独自のモノでも宜しいかもしれません。同じ語句を扱った一例です。 ぴゅーん(死なないで死なないで死なないで、、、) > 僕は > その星の方へ歩き始めた。 > 砂粒のなかから芽吹いた僕の亡霊は、確かな26.5cmで踏みしめ、踏みしめ、夜を巡り結った。かつ>て魂を宿していた証拠だけ身に纏って、ゆっくり生き続けた。この鼓動のない足音を、聴こえるように。僕を愛してくれた人へ、聴こえるように。たくさんの思い出をありがとうございます。 > わずかな綻んだ風に舞い上げられた他の亡霊たちが、僕にいちいち贈り物を渡してくれた。それは、笑顔の遺伝子を、悲しみのグラナを、不甲斐ないテロメアだったり、この地に染み付いたタトゥーのようなものだ。僕もこうやって小さな歪みのなかで消えてしまうかもしれない恐怖を持ちながら、いちいちの贈り物を大切に保持するようになった。愛は少しずつ散骨されていく。新芽は健やかな幸先で、土壌になる。この砂漠はやさしさの一粒一粒の積もりで熟された。 水の惑星を旅する僕は、ただ一筋のその安穏と流れる箒星へ、永遠に向かい続けている最中だ。こんなにきれいな心の海を、僕たちは互いにただ死にゆくだけで、なんだかもったいないね。約束なんかじゃないから、絶対死なないでねって言わせてくれよ。死ぬときに、死なないでねって言いますので、ぜひ、その際は、耳を傾けてくださいね。 ここで、心の海と出たので、空が心の空だと感じましたが。分かりません。統一感が無いからです。そして、心の海と簡略できないのが、心の海なのかもしれません。 > こんなに寒いから雪が降っております。 > 気が付けば雲に透けて、朧な月光です。 > 馴れない天候に、傘を持たぬか持つか、 > 玄関で逡巡しております。 > ささいな悩みなのに、 > 今日はそれがひどく重要なのでないかと、 > 感じて > 慎重にフェイクレザーの右手を > 柄に重ねて、 > 心の目を閉じます。 ここまで来ると読み手の想像に任せるしか無いなという感じです。 > 公園に足を伸ばしたら、つむじ風が > グラウンドの中心で巻き、 > 何かを失うように、 > あ、と声が漏れました。 > 〈感情のあふれる描写〉 > 変化に抗えない私たちは、 > ゆっくりゆっくり歩いていきます。 > ゆっくりゆっくり散骨されていきます。 > 間違いなんて一つもありません。 > ここまでの途轍に、 > 夜風が吹き抜けます。 > 友達が > 詩を読んでくれます。 > かるべが何か言ってるな、と > よくわかんないけど、 > 僕が生きていることを、 > 知っていてくれます。 > 亡霊にはテロメアなんてなくて、 > もう、死ねないんだ。 > ぜったい、死なないでね。 > ぜったい、死なないでね。 > 何回も何回も詠唱しますので、 > 耳を、今だけ僕に捧げていてください。 > 何回も何回も詠唱しますので、 > なんてきれいな星空なんだろう―― > 〈感情のあふれてしょうがない描写・博多駅で泣き崩れている・靴紐を結ぶだけでパニックになっている・抱きしめている・公園で逆上がりをしている・叫ぼう・泣き叫ぶと・少しすっきりして・お腹が空いて・ご飯を食べて・また泣き叫ぼう・そこで少し座って休むのを受け入れてもらえるやさしい博多駅〉 > 砂丘の上に > なにかが突き刺さっている。 > 夜空に咲く樹木だ。 > 突き刺さっているのは、夜空に伸びる掌。 > その覆いの下で、 > 僕は雨宿りをしながら、 > 少しずつ消えていきました。 飛ばしてしまったのは、区切り説明する感想を書く必要性がありませんでした。何故必要では無いか、流れるように読めると判断しました。イメージが具体的ですね。夜空が肉眼での夜空では無い。そう思って宜しいでしょうか?
0つきみ 様 コメントをありがとうございます。(るーらんるーらん やってくる 予感のなか待っていました) まず、 「ぴゅーん(死なないで死なないで死なないで、、、)」 「夜空を心象にすれば良かったのになぁー」 についてですが、おっしゃる通りの上で今作の言葉にしました。(推敲するとしたら核弾頭と海についてだと感じています。) ぴゅーん、については独自性を出すべきかひとしきり悩んだのですが、前半を更にキャッチーにしてしまうと、凡庸な吐露の詩になり下がると判断してやめました。 言い換えると、 死なないで、を現実において僕、言うんですがわりと軽く、めちゃめちゃ重い人間関係の印象を与えることへの、逡巡そのもの、前半では「私」が言うことさえやはりできないので、描写に心情はこの時点ではまだ差し込めないな、と判断しました。ぴゅーん自体の擬音が正確であるかも悩みますが、「私」自体は今作では他者と「僕」をつなぐ一人のしがない人間性のある人間なので、変にぴゅーん以外の言葉は置けないなと判断しました。核弾頭が浮き気味なので、それをつなぎとめるためにもぴゅーん。核弾頭自体を単語を変える余地がまだあるのですが、最後の突き刺さる描写に必要があったので、でもミサイルではないし、うーん、今の時点では核弾頭が語彙のなかで浮上します。 つぎに、 「統一感が無いから」 おっしゃる通りの上で、ここは上記したように推敲できそうです。砂と水をつなぎとめるイメージの補助が一つの詩の中でないからかなと思っています。ただ、色々考えているのですが、今作ではこの飛躍はまだ赦されている気がしています。それは多分最終的にこの水のくだりがわからない部分であるとハッキリ明らかだから意図の存在を読み取れると判断しているからです。しかし、些か悩んでいるところなのも事実です。砂と水はやはり飛躍してますかね。 最後に、 「流れるように読める」 とのご判断いただけたのはうれしいです。ありがとうございます。 「夜空が肉眼での夜空では無い」 は、素敵な読み方の一つだったので嬉しいです。雨が降ってたんやないんか、描写がわからん、みたいな読みもあるし、雪やないんか、みたいな読みもあったので、うーん、夜空どこいったとか思わせる危惧危惧していたので、いったん安心しています。雲の先まで心の目による視野が広がれるか、に最後は賭けているので、もしかしたらもっとぐいっと運んでもよかったのかもしれませんが、気持ち的に悲しいので、今はこのくらいの運び方にしました。それでも視える可能性があると思えたので、ありがとうございます。 改めて、コメントをありがとうございます。
0かるべまさひろさんへ。おはようございます(*・ω・)*_ _))ペコリン「夜空」自体の全体としての印象は悪くないですし。私が書いた言葉が、かるべまさひろさんが求めるモノにたどり着けない言葉であれば、捨ててくださいませ。私が感じたり思ったり考えた事が正しいのではないです。あくまでも、きっかけになればと書いているコメントです。最初の部分では、夜空が見ているモノなのか、イメージなのか、分からず、読んで行く内に「夜空が肉眼での夜空では無い」に至り、心象だけではない、イメージだなと、改めて読んでそう考えています。私が思っている事を他の誰かが指摘してくだされば、私も乗っかって答えるかもしれません。イメージが具体的過ぎれば、読み方が不自由に成り、読み手の自由が奪われる事を踏まえると、ちょうどいいと、思いますよ。
0つきみ 様 重ねてコメントをありがとうございます。 「ちょうどいい」安心しております。 ありがとうございます。
0かるべまさひろ様、応援しています(*・ω・)*_ _))ペコリン
0かるべさんの詩の中で一番好きです。「死んだ人が多すぎる」とか「亡霊にはテロメアなんてなくて」とかキャッチーなフレーズがあるからでしょうか。常々というか、ここ最近とみに思うんですけど、詩書きさん同士の批評のしあい、感想の投げ合いがあって、これ面白いね、ここがいいねとか分析して盛り上がっても、一般の人が「何言ってるか分からない、あんまり面白くない」ではアウトだと思うんですよ。ある程度の大衆性、ポピュラリティが必要になってくる。この詩にはそれがある。全体として孤立感にも似た焦燥が感じられましたが、長い詩なのに最後まで引っ張っていくことが出来ていると思います。
0stereotype2085 様 コメントをありがとうございます。 一番好き、と言ってもらえるとやはりうれしいです。 今までいろいろコメントをしておいてまさかですが、実は推敲をほぼしたことがありません。発表場所に合わせて、句読点と改行を整えるくらいで、書き始めたら書き終わるまで2時間くらいがっと書いています。これもそうです。 高校の頃、美術の友達と言い合いをしました。大衆性が、ポピュラリティが必要かどうかです。僕は当時は必要派で、友達は不要派でした。 不要派がいることにその時、驚きました。それはどういうことだ?と考えまくりました。 今の僕は、かなり慎重派です。ありとあらゆる信条や宗教的信念を失ったからです。残ったものもあるので、詩は書くのみなのですが、なのである種の焦燥は常に滲んでしまうなとは思っています。 自分の文体に個性を感じているので、調整して、強みになるよう精進するのみですが。 いつも大衆性と閉鎖性は考えています。この詩は、かなり距離を引いて書きました。ただ死なないでって言いたいだけなのに、言わない選択をした社交性ゆえですね。 かるべはどっぷり近いと重くて面倒くさいので、さわりくらいだととても魅力があるようですので、詩が「さわり」として多くの人や、十年後の孤独なゲイの少年とかに響けばいいと思ったり。大衆性と閉鎖性の両立はきっと、賛否両論の価値のように大事な価値だと思います。 長くなりました。 ありがとうございます。
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