別枠表示
体温
「私の事を、愛さないで下さい」 帰らない山彦が その吐息の密度を濃く 豊かに変えた 純白の寝室 貴方のつたう涙に、 少しだけ 少しだけでも触れたかった 微々たるくすみだけで 手入れの不行き届きの分かる ゴミ箱や 目覚まし時計やら 一人暮らしには広すぎる部屋 女性らしく継ぎ接ぎの跡が目立たない ズボンの端っこ いつやらか ちらり ちろりと 懐かしい顔が 飛び出していた 思い出のシャワー 代え続けていたバケツや 徐々に徐々に栞を挟み 完成へ進むアルバムが 懐かしいだけの宝物になった、だから 後ろに自転車走らせる 登校時のルート 同じ匂いがする 帰り際に買ってたパンは もう売ってすらいない あの頃と違う いつの間にか嗜む ブラックコーヒーと 君の前では見せられない ケムリを買い足す メビウスの輪を語る 倫理学の薄本に一瞥 、そして 硬直した君の 皮だけの頬に触れる 記憶の洪水が 世界と空間、や はたまた僕といった いろいろな色々ないろいろな色々な ものを決壊させて 貴方の言葉を千切る 精神と別離され 分子となった 唇へ そっと体温を合わせ やけにリアリスティックな 耳打ちから逃れて 埃や 食べ遺した弁当が散らかる 色んな普通の生活を投げ置いた 部屋で 、 ぽ つ ん 、 栞をつまんで一葉一葉をぼけ・と眺めたり 徐に かつ 救われるように 手入れの必要のない唇を さすり としたり 何故か笑顔で差し出された変テコなお土産だったりとか その 様な物も のに しか、貴方 の 温もり が 宿 ってい ないと、知っ た。
体温 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2025.1
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-11-16
コメント日時 2018-12-06
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
伝承と現代人の感性も大して違わないのだろうと感じました。 (分析的に読むのが苦手というよりずれ過ぎてて記録に遺さず対面でオフレコでなら喋れる普段のスタンスなので、ふじりゅうさんのいつもうれしい分析コメントに釣り合わない感想コメントになってしまい申し訳ないのですが) もっと愛というテーマがぐっと前面にあっても面白くなりそうだなと感じました。
0とてもわかりやすい恋愛の情がある作品として読める。やや冗長さを感じるが、それがリアリティを持たせてあるとも言える。ただ、これは妙な評になってしまうけれども、作品をながめて見た時に昇華されずのままな世界がある。平たく言うと印象が弱い。読めばわかる作品でなくてながめて見たときに作品が発しているもの。それが詩情ではなかろうか。 話が逸れるけれども、私はこのコメントを書くにあたって手前のことは棚の最上段にしまって、自分が世界で唯一の大詩人だと思い込んで書いている。ある意味で中原中也、あるいは自分が小林秀雄になったつもりで読み、批評を述べていて。そうすると見えていなかったことが見えてきたりして、私自身の学びの場にもなっています。
0かるべさん、ありがとうございます。 分析的に読むことが詩に対する感想の理想形か、と言われると決してそうではないと考えていますし、コメントをくださるだけで私にとってはうれしい限りであります。 確かに、愛、というテーマは前面に押し出してありませんが(メインテーマではありませんので)、作品に込めたテーマが隠れすぎていたのは事実ですね、勉強になります。
0みうらさん、コメントありがとうございます。 冗長さ、は意識してませんでしたので、重大な欠点ですね。印象が弱い、のも同様ですね。 詩情というものが私にとってどのようなものかつかめないでいましたので、勉強になります。私にとってこの作品はそれなりに力を込めたものでしたので悔しい思いもありますが、それ以上にかるべさん含めお二方のコメントは非常に勉強になりました。ありがとうございました。
0いいなぁ。彼女との想い出から過去の記憶を辿っていく描写。その中で「完成へ進むアルバムが/懐かしいだけの宝物になった、だから」からひと段落空いての「後ろに自転車走らせる 登校時のルート」という描写。ちょっと涙腺ウルッと来てしまいました。ここから詩が一気に加速しますね。そして最後ヒューンと小石が落下するように「その 様な物も のに しか、貴方 の/温もり が 宿 ってい ないと、知っ た。」と落としどころを見つける。上手いし綺麗で、何より情趣があると思いました。半角の使い方が心に余白が生まれているのを表すのにも効果的だと思いました。〇
0ステレオさん、コメントありがとうございます。 恋を失ってしまった主人公は、いつまでも生き続ける愛を確かめるために登下校のルートをただ走り、写真を眺める。涙腺を刺激できたならもはや、本作の本懐は果たされたのかもしれません。 半角で落としたのは、前作「灰の様なこころ、灰のようなこころ」の反省から最後にのみアクセントとして持ってきました。 主人公、は心の余白、を遥かに超えた絶望を宿していますが、その強度という面ではまだまだ反省と改善の余地がありそうです。好意的な評嬉しく思いました。
0拝読しました。だんだんバラバラになっていく主人公の内面、不安定な心情が上手く表せているなあと思いました。泥にずぶずぶ沈んでいくような。 「貴方」は、まだ語り手の近くで眠っているのでしょうか?いい塩梅のホラーも感じられて好きな詩です。
0刺さりました。冒頭から胸に刺さりました。あ、駄目だ。言葉がうまく出ませんが繰り返し読んで楽しめる作品だと思います。冗長、というより程よい語りだと自分は感じます。
0じゅうさん、コメントありがとうございます。 沼にずぶずぶ沈んでいくような、との表現、正しくその通りですね。 そうです、この詩はホラー的な要素もあると考えています。的確に読解され嬉しく思います。ありがとうございます。
0帆場さん、ありがとうございます。 私は繰り返し読んでこそ楽しめる詩を目指している為、かもしくは普通に技術がない為もあるでしょうが、初読のインパクト、ないしは詩情といったものが本作は足りてない、との指摘を受け、なるほど、と真摯に反省致しました。その上で好意的な評を頂き、本作も満足気だろうな、と、何故か俯瞰的な気持ちになりました。 是非繰り返し読んで頂ければ、面白い、と勝手に自負致します 笑 例えば冒頭ですが、〈私は貴方が好きではありません。さようなら〉でなく、何故「私の事を、愛さないで下さい」としたのか、にも勿論理由がありますし、想像を巡らすことの楽しみを私の作品から感じ取っていただければ、これまた俯瞰的ですが、本作も涙を流して喜ぶだろう、と思います。
0ふじりゅうさんへ「体温 」 感想です。私なりですが。この作品は丁寧に言葉を綴らせて頂きますが、できるだけです。 >「私の事を、愛さないで下さい」 >帰らない山彦が >その吐息の密度を濃く 豊かに変えた >純白の寝室 貴方のつたう涙に、 >少しだけ 少しだけでも触れたかった 「私の事を、愛さないで下さい」の部分は女性特有のマリッジブルーにも有るんです。 私の経験です。失う事が怖くて、幸せすぎて、同じ言葉を言った事が有ります。 触れたかったまでの言葉の運びがとても丁寧です。 触れたかったという言葉には癒したい気持ちもあるのかもしれない。 触れられなかった事を悔やんでおられるのかもしれない。 愛しているのに、愛しているからが混じっているのかもしれない。 とても、豊かな表現を行われています。一連目に温が有りますね。 >微々たるくすみだけで >手入れの不行き届きの分かる >ゴミ箱や 目覚まし時計やら >一人暮らしには広すぎる部屋 >女性らしく継ぎ接ぎの跡が目立たない >ズボンの端っこ いつやらか >ちらり ちろりと >懐かしい顔が 飛び出していた 振り返る思い出の重いには様々なモノが込められています。 あえてここは触れないでおきます。 >思い出のシャワー >代え続けていたバケツや >徐々に徐々に栞を挟み >完成へ進むアルバムが >懐かしいだけの宝物になった、だから >後ろに自転車走らせる 登校時のルート >同じ匂いがする >帰り際に買ってたパンは >もう売ってすらいない >あの頃と違う いつの間にか嗜む >ブラックコーヒーと >君の前では見せられない >ケムリを買い足す 振り返る思い出のおもいのおもみが私にはものたりないです。 でも、ものたりないというのは、もっと書けるのではないですか? という意味ですし、丁寧な一連目を崩すのは私としては許せないのではなく、丁寧なおもいもあるからこそ、悲しいです。 >メビウスの輪を語る >倫理学の薄本に一瞥 、そして >硬直した君の 皮だけの頬に触れる >記憶の洪水が >世界と空間、や はたまた僕といった >いろいろな色々ないろいろな色々な >ものを決壊させて >貴方の言葉を千切る >精神と別離され 分子となった >唇へ そっと体温を合わせ はぁっという感嘆の溜息が出ました。 素敵ですし、凄く丁寧ですし、素敵です。 おもいのつよさ。 おもいのおもさ。 一連目を私は喚起して読んでいるので、尚の事。 感慨深い言葉の連なりですね。 詩が生きています。 >やけにリアリスティックな >耳打ちから逃れて >埃や 食べ遺した弁当が散らかる >色んな普通の生活を投げ置いた >部屋で 、 ぽ つ ん 、 男性らしい生活の一部だと私は思います。 ぽつんまでの言葉の運び、ここまででも奥行きのある。 奥深い連立です。 >栞をつまんで一葉一葉をぼけ・と眺めたり >徐に かつ 救われるように >手入れの必要のない唇を >さすり としたり >何故か笑顔で差し出された変テコなお土産だったりとか >その 様な物も のに しか、貴方 の >温もり が 宿 ってい ないと、知っ た。 半角の空白が詩を鮮明に立体的に構成しています。 最後の最後まで丁寧です。 良質な詩を読ませて戴けた事ふじりゅうさんありがとうございます。 しか、という言葉が私は苦手でして。だけ。でも宜しいのではないかと思いましたが、作品がしかで強調されています。ので。だけ。で無くても良いですね。
0つきみさん、ありがとうございます。コメント返信遅れてしまい大変申し訳ありませんでした。 丁寧に読み解いて頂き、私としては言葉もありません。本当にありがとうございます。 しか、をだけ、
0との変更案、なるほど、と感嘆致しました。かなり練り込んだつもりではありましたが、確かにそう言われますとそうですね。まだまだ自身の技術の甘さもありますが、お褒めの言葉も頂き感無量です。 (コメント途切れてしまいました。申し訳ないです。)
0いえいえ。こちらこそ、良質な詩をありがとうございます。フル選評にて大賞候補作に選出させて頂きました。これからの詩作応援しております。
0