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綺麗な産卵
監視人の外套から落ちた手帳には触れてはならない洗浄液の運びの法が記され、貧しい先住民はそれを読めない。文字が読めぬまま死んでしまえとリニアに伸びた45番の棒は湾曲に振り落とされ共晶点が私たちに刻まれた。43℃の印は沸点さえも程遠く水を与えられない。綺麗な狂気になるまでの間に雨が降る。羽ばたく綺麗な狂気が生を抉り心臓と獣たちの皮を生け贄に暦の先を直覚する。タナトスが青銅を帯びた言葉の箱に柩とする糸を張る。私たちの血は抜かれ、管は透明な皮膜のままに剥製となって、重曹化された残り滓には偽りがなかったと印された。混じり色の雨が変質する最中、僕とあなたが復活をする。生きながらえていたアメーバ状の奴隷のひとりが微細なペニスを形ある最後の姿にして赤い水源の肥やしへと投げ出される。新しい芽生えは水面をゼリー状へと変えた。孵化することが期待された私たちの卵。洪水をなぞりながら浮かぶ船員達に引き揚げられ、直ぐにでも食べたいように船が揺れている。
綺麗な産卵 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1073.8
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-11-05
コメント日時 2018-11-12
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
アンドレ・ブルトンとかそのくらいの手法への先祖帰りですか?
0コメント有難う御座います。ブルトンあたりの手法への先祖返りとは異なる手法を使っております。手法について自説をしますと鶴見俊輔氏の著書「限界芸術論から遠い作品、つまり専門芸術の範疇とみなされたい作品を書くことをテーマとしました。そのテーマを掲げた理由として一つの仮説を立てました。専門芸術の定義と限界芸術の定義は交わる点を持つのではなかろうかと。二つの定義については省きます。交点を求めるにあたり、立証実験の手法として「固有の知識以外は使わずに書く」とのルールを課しました。得られた結果が拙作となります。もう一つ自説しますと本作を書く直前に約20年ぶりに小林秀雄氏の著作と地獄の季節を読んでおりました。と、書いて気が付きました。すみません。ブルトンあたりの範疇にランボウが含まれておりましたら、なゆた創さんのご質問にはYESと答えなければなりませんでした。失礼しました。
0非常に読み応えがある。「神話を一度書いてみたかったからこの詩を作った」とツイッターで拝見したが、男女の性にまつわる物語が暗喩に次ぐ暗喩で隠蔽されながらも描かれているという点で、この作品はまさに神話的だろう。この暗喩に次ぐ暗喩でむしろ実像を際立たせるスタイルは「性や酒を人には分からない方法で書いているだけ」と公式キャスでコメをされた北村灰色氏の作品を彷彿とさせた。北村氏が現代社会の吹き溜まりのような場所で神話足り得る詩を絶妙に描いているのならば、この作品は三浦氏の観念的世界、時折見せる思索的、内省的姿勢の中で生まれた、また描かれた神話だと言えるだろう。とにかくも読み応えがあった。同調する人は少ないかもしれないが傑作の部類だと思う。
0ディストピアSF的世界と神話的世界がねじれて繋がっているような、惹きつけられる詩でした。不思議とメビウスの帯やクライン管を想起させられました。詩論に暗い私にはこの程度のことしか書けず、申し訳ないです。好きな詩です。
0ステレオさん 終末思想が魅力を存分に発揮する期間を過ぎて僕たちはモラトリアムな気分から抜ける必要に迫られた。次にぶら下げられた餌はワイヤードロジックを構築する夢の近未来で、終わらなかった世紀末を知る世代の僕らには最早、ダンスをする気分を促すトラックは鳴り終えていた。経済にコミットする権利を限定された僕たちの後の世代は近未来と化石の神話を融和させることの楽しみを見つけ新古の価値を容易く捨てた。それは聖域とされていた宗教にさえ楽しみの手法を見つけ出した。しかしながら僕たちの世代だけがやれる楽しみがある。一つだけの抜け道がある。アンケートとマーケティングの防壁の中でスポイルから外れて生き延びる手段を僕たちは知っている。詩人になれることを知っている。
0永峰さん コメントありがとうございます。ディストピアと評していただきとても嬉しい。ディストピアはあらゆる有名作家や映像によって出し尽くされ、スタンダードな世界観にもなってしまった感があります。書こうとすれば既視感が伴ってしまう。それを回避する手法は極私的な固有の知識を駆使することではなかろうかと思い付いて書いた次第です。当掲示板にもおそらくはディストピア的なる作品が過去にもこれからも投稿されることでしょう。それらの作品が描く世界が全てパラレルに存在すれば、楽しいことに思えます。
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