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冥府へ
冥府の王女は 自分が何者かを忘れて 地上の夜の住人に ここではないどこか いつか巡り会うべきだれか 夢見て 焦がれて 春の子鹿のように 自ら迷い込む だれしも 同じく いつまでも たどり着かない 理想郷は 冥府にしかないから 絶対に振り返ってはいけないと 決めたのはだれ わたしたちの町に 赤い靴が落ちている リコールセンターで 何千体もの人形が裸にされ 燃やされていく 流れるのは血? はらはらと からだを伝っていく カッターナイフで あなたを守れる? 生産終了した 型落ちのウォークマンでは もうあなたを救えない パラソルの下には 消えることのない影 斃れる革命家の喉に 檸檬の雫を 啜り泣く母の小さな足に オリーブの花を どこに祈れば 願いは届く? クモの巣状に張り巡らされた ソーシャルネットワークに 容赦なく火の粉が降りかかる 蝶々はなすすべもなく 貝のようにうずくまる おびただしい手が迫る 臆病な嘘つきは すみずみまで手抜かりがない 何も口にしてはいけないと 決めたのはだれ 少女たちよ 目覚めなさい 目覚めなさい 歌声を 張りつめた肌を これ以上奪われる前に あなたの王国を 思い出して
冥府へ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1049.8
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-10-13
コメント日時 2018-10-14
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
冒頭の神話的、童話的な導入部と、中間の切実な様相との落差について考えています。 真に迫ってくる強迫感のようなものを緩和するために、語り手が自らを・・・あえて離れた場所において、そこから語り始める、という手段をとっているから、なのか。 読者をスムーズに主題へと導くために、神話的導入を用意したのか・・・ 絶対に振り返ってはいけないと・・・から詩を立ち上げる方が、読者へのインパクトが数段増すように感じたのですが、どうでしょう。 そこから次第に、現代の神話と古来からの物語を重ねていく、というような構成にしていくのも、ひとつの方法かもしれないと思いました。
0物語にはネガティブな事象の転換を願う語り手の思念が奥底に流れていて、そこには俯瞰する視点が固定カメラのようにある。私にはネガティブな気持ちを誘う作品に対して死を探して読む悪いクセがあって。それが良くも悪くもバイアスがかかってしまう。そのような意地悪な読み手にあっても本作は生へのプラスな読後感を与えてくれた。それは何故か。 一つは希望が書かれているからだろう。しかもなんとなくな希望ではなくて誰人たりとも壊せないと思わせる堅固な希望。それが以下の引用箇所から伺えた。 >いつか巡り会うべき誰か >理想郷は >冥府にしかないから 更には「目覚めなさい」という強き呼びかけがあって、それもまた、覚悟ある希望に読める。もう一つ、挙げたい。「赤い靴」について。読者の多くも印象に残ったはず。私も少し違和感がありながらもインパクトがあって。読み返して思ったのは「赤い靴」とはその後に続く人形たちが履いていたうちのどれかの一足なのかと。焼かれても残ってしまった靴の存在が希望に読めてしまう。 これは蛇足になってしまうかもしれないけれど、本作から読んで受けた印象は三浦綾子の作品を読んだ後の、それに近かった。
0ゴスロリ少女が書きそうな詩だなというのが初読の印象。なんての、血とか王国とかってそれ系の語句が字としての意味を保ったまま在るというか。 ただ四連目 「 わたしたちの町に 赤い靴が落ちている リコールセンターで 何千体もの人形が裸にされ 燃やされていく 」 ってのは良かった。というより「リコールセンター」がか。詩語ぽくない語が詩にでてくるのすこ。
0「冥府へ」というタイトルは僕好みで、尚且つ「生産終了した/型落ちのウォークマンでは/もうあなたを救えない」などの世界観崩しの表現も随所にあって面白い。ただ「少女たちよ 目覚めなさい/目覚めなさい」というメッセージ性の強い箇所で書き手の熱量が異様に上がってしまったかな、との印象も持ちました。落差のある表現が筆者様の持ち味ならば、そこを極めて欲しいとも個人的には思ったりしました。
0まりもさん 政治をあまり思想的にならないよう詩に織り込む手段を模索しています。 今回は若者に選挙に行ってもらいたいというのがテーマでした。おとぎ話や神話のモチーフを現代に結びつけて出すことによって押し付けがましさ、緊迫感を抑制して、最後まで読んでもらえることを狙ったのですが、もっと冷静に書くべきだったかなと思いました。導入は難しいですね。更に長く書いて起承転結のあるものをと最初は思っていたので…この長さでは最初が緩慢すぎるかもと気が付きました。ありがとうございました。
0三浦天才詩人果実さん おっしゃる通り赤い靴は人形が履いていたものです。リコールセンターはアウシュビッツのイメージでした。人形の次に手をかけられるのは…という暗喩でした。どんなに暗い世の中でも少女たちには生きていってほしい一心なので、そこに希望を感じ取ってもらえたのかな、と思いました。嬉しい感想をありがとうございます^^
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