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10月の雹
君が僕に手渡した真新しい一冊の本。その装丁は星空から舞い降りてきたような光を放っていた。君の処女作。1ページずつパラパラとめくると虹色の文字列が踊る。僕の微笑みに君の瞳が瑠璃色に染まった。 僕は茶色の鞄を小脇に抱えて、しばし足を止めて目を瞑った。そして、少し不思議そうな顔をした君のもとからダッシュして満天の夜空を360度見渡した。 実はちょっと失望したんです。 否、かなり失望したんです。 生きるとは紡ぐことだから。 生きるとは失うことだから。 君が綴った言葉には未来がなかった。 君が綴った言葉には過去がなかった。 もっと寛容でありたかった。 もっと鈍感でありたかった。 君の感性を共有したかった。 君と同じ風景を見たかった。 大人の理屈で片付けたくない。 子供の君を赦せる自分でいたかった。 いつまでもずっと弄ばれる子供のままでいたかった。 時は果てまで流れてゆく。 僕が、君が、辿ってきた軌跡を思う。君がようやく立った表舞台。僕は君を称えるでもなく単なる批評家気取り。 こんなふたりでも人生なんてどうにかなるものさ。別々の道が用意される。 10月の雹がバラバラと降る。 この指の先端から放つ閃光が君に未来を指し示す。穏やかにみえて、頑なな性格の君に送るよ。今、ふたりの心に映った道しるべ。二股に裂かれた未来。 銀杏並木の匂いが徒らに鼻腔をくすぐる。僕の千鳥足は風に揺れる樹木の音を辿る。夜の灯は傾いて、暗闇に媚びを売る。ひとり道行く僕は失望をも失くす。君を赦す術もなく、身勝手な僕は赦されず、生き続けてまた何かを失う。 未来行きの列車が僕の肩口を乗り越えていった。
10月の雹 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 843.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-10-11
コメント日時 2018-10-14
項目 | 全期間(2024/11/24現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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技巧 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
君と僕はきっと優しい関係性なんだろなと想像していたところから、実はちょっと失望したという展開はショックで、詩のドラマ性を高めたいると思います。その後の別れの表現も上手く魅せているなと感じます。ただ、私の中では誰かと別れて行く道と10月の雹がうまく結び付きませんでした。もしかしたら、星空を思い浮かべながら詩を読んでいるのに、雹が降るからかもしれません。タイトルであるし、インパクトは強いのですが、少し唐突な気がしました。
0ヤエ様 コメントありがとうございます。 確かに唐突感があるかもしれませんね。 詩にアクセントをつけたかったという思いはあります。 この詩は今まで慕っていたある詩人との決別のつもりで書いておりまして、勢い強い表現になってしまったかもしれません。 ご指摘ありがとうございました。
0返信を読んで、なるほどそうかと思いました。そのままに詩人との決別がテーマなのですね。そう考えると雹が持つ固いイメージが違和感なく受け取れました。決心して、離れるという気持ちは、強い表現と結びつきますね。ありがとうございます。
0ヤエ様 ご返信ありがとうございます。 補足しなければ伝わらないあたり、まだまだ改善の余地ありですね。 自分では思いも及ばなかったヒントをくださり、本当にありがとうございました。今後も精進して参ります。よろしくお願いいたします。
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