Happy Colors - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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Happy Colors    

 僕の彼女は、何一つ穢れのない、「純白」を絵に描いたような人。その場その場の色を全部体に飾り付けて、幸せそうに笑うんだ。  黄色。あのうだるような夏の日、君は、突然僕を引っ張るようにしてドライブに誘ったんだ。 「じゃあ、運転宜しくね」 なんて気楽な要求に僕はほいほい乗ってしまった。10分もすれば運転は終わるだろう、なんて考えていたけど、彼女の「右、左、まっすぐ」に付き合わされて二時間田んぼやら山道を走らされたっけな。そろそろしびれを切らして目的地を聞こうかと考えていた僕の目に飛び込んできたのは、一面のひまわり畑だった。二メートルくらいの大きく育ったひまわりたち。その真ん中を子供のように走り回ってはしゃぐ君に、僕は夏の小さな女神を見たんだ。  赤色。十一月九日、この日は君の誕生日。僕は君に誕生日のケーキをこっそりと準備した。苺の乗ったショートケーキを目にした君は、嬉しさの余りからか泣いてしまって、僕も慌ててしまった。お祝いのメッセージのかかれたチョコレートと苺を残しながら、ケーキを 「勿体ないなあ」 と言いながら少しずつ食べる君がいじらしくて、次の日もケーキが要るかな?なんて話をしたね。  青色。水族館での君は、いつものはちきれんばかりの笑顔じゃなかったね。いつになく真剣な顔でガラス越しの魚と見つめあったり、よく分からない指の動きをして、魚とコミュニケーションを取ろうとしていたのかな? 「ねえねえ、ナマズって、全身で味を感じるんだって!」 得意気に話してるけど、それはさっき壁に書いてあったことの受け売りでしょ、というと、少し困ったような顔でふにゃっと笑う君がいとおしかった。  肌色。橙色。  あるときは瑠璃色、またあるときは飴色。  この世には百の幸せがある。そのひとつひとつに、様々な色があり、それを纏った君がいる。散りばめられたそれらは、思い出せば心を弾ませ、頬張ればふわりと甘い、カラフルなグミのように。  果たして、彼女に百一個目の幸せを与えたのは、白色の錠剤であった。彼女は穏やかな笑顔をしていた。僕には与えてあげられなかった幸せだった。  この世には百の哀しみが残った。九十九の白色と、僕の心の、一つの黒。


Happy Colors ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 6
P V 数 : 1079.3
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2018-09-20
コメント日時 2018-09-26
項目全期間(2025/04/24現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
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閲覧指数:1079.3
2025/04/24 06時27分27秒現在
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    作品に書かれた推薦文

Happy Colors コメントセクション

コメント数(6)
蛭子子
(2018-09-21)

カラフル感があって喚起されるイメージがとても綺麗だと思います。最後の白い錠剤も、清潔感と悲しいっていうかどうしょうもない感じが素敵だと思います。ただとても失礼だとは思うんですけれども他の色が具体的なものがあるのに最後の黒だけが、よくあるイメージっていうかオチをつけた感がある気がします。

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かるべまさひろ
(2018-09-22)

カラフルは物語として読んだときに、いささか技術が未熟なところが読者として察知できてしまいます。 エピソードの描き方が、具体的なのか想像を膨らませる系なのかが曖昧なのが一つの原因かなと感じました。 この形でしたら、絵本の文などを参考に推敲してみたら、ぐっと最後で泣いてしまいそうです。イメージは面白いです。

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まりも
(2018-09-24)

1面のひまわり畑・・・に辿り着いたとき、向日葵の陰の暗がりに目を止めていた君(自分が向日葵のように生きられないことに、そうした期待に応えられない、という重圧に苦しんでいる姿)、赤のお誕生ケーキの陰に、1度もお誕生日を祝ってもらったことがなかった(かもしれない君)・・・というような、具体的な陰影があると、より説得力のある文章になったような気がします。 あとは、少し筆が滑ってしまって、言い過ぎているような部分をカットしていくと、より凝縮された作品になるのではないだろうかと、期待を込めて。

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ふじりゅう
(2018-09-25)

拝見しました。 そう。詩とは難しいものです。これは見る人が見れば一見「小説」のように感じるのですが、やはり紛れもなくこれは詩なのですね。小説と詩の境目、そのひとつが心理状態を捉えるかどうかにあるのだと私は考えています。 さて、本題です。個人的にはかなり好きな詩です。彼女の描写はやけに生々しく、毒々しいほどに幸せであるがゆえに常に死神に心臓を握られたような恐怖を沸き起こさせられます。そしてふと起こる彼女の喪失。喪失。喪失。ここでバシッと色を失う主人公もいい感じです。 なぜか心が抉られる詩ですね。一文一文が心に刺さる感じです。凄くいい感じです。

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じゅう
(2018-09-25)

コメントありがとうございます。全て拝読しました。 蛭子子 様 素敵、とのお褒めの言葉ありがとうございます。オチに関しては、確かにありがちなイメージになってしまったかもしれません。 かるべまさひろ 様 序盤の具体的な色のイメージの辺りは出来るだけ冗長に表現しようとしたために、とりとめのない感じになってしまいましたね。自分の技術の至らないところです。絵本のイメージで推敲、、、ですか。面白そうですね。やってみます! まりも 様 最後の部分で、主人公の感じた突然感を表現するために、前半はただひたすら何も見えてない主人公の感じた幸せな景色を冗長に書いたのですが、そのぶん平坦な文章になってしまいましたね。筆が滑る、というのも自分によくあることでして、気をつけていきたいところです。 ふじりゅう 様 前半を具体的に冗長に書いたために、確かに小説のように見えてしまいますね。小説と詩の狭間は何か、ということ、初めて考える機会を与えてくださりありがとうございました。喪失の突然感が伝わったようで嬉しいです!

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渡辺八畳
(2018-09-26)

ヒロイン殺しときゃ感動するでしょって丸わかりなギャルゲー並みに脈約無く薬飲んだなぁって。それに到るまでのエピソードもまさに男にとって都合のいい女像って感じ。 その女像でもウハウハ萌えて消費できるようなら一定の需要が出てくるけど、結局やっぱエピソードが嘘くさい(ノンフィクションを書けということでなく、詩中世界において彼女がそれらの行動を行う道理が見えてこなく、つまり彼女の人間性が薄い)から冷めてします。

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