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ペットボトルのなかのメダカ
ペットボトルのなかのメダカは幸せだ やわらかな水草のベッドに、澄んだ水、底には赤玉土 プラスチックの囲いで守られて 一匹だけなら十分な広さ 風が吹こうが雨が降ろうが関係ない 猫がきたって水のなかに手は入らない 鳥がきたってくちばしは滑るだけ 食べ物は髪のながい人間の女がいつもくれる 外敵はなく、いつも安全、快適だ ペットボトルのなかが世界のすべて ここは天国、苦しみもなく、悩みもなく、 解決しなければならない問題もない あり余る時間と自由、なにをしようが怒られない でも、ペットボトルのメダカは知らない できることは泳ぐこと、鑑賞されるために泳ぐだけ 家族もなく、仲間もいない、一匹ぼっち ある意味、煉獄 知らないことは幸せなことなのか ペットボトルのメダカは知らない すぐ側には小川が流れ、川の底には学校がある 太陽の差し込む水のなかで、風でゆれる水草の下で 大勢のメダカが毎日毎夜、みんなで遊んでいる そして、大きな魚や野鳥や虫と闘いながら生きている 常に食べられてしまうかもしれないという不安 嵐がくれば水はにごり死んでしまうかもしれない恐怖 ペットボトルのメダカには、そんなことは想像もできない でも小川のメダカだって、ペットボトルの世界を知らない 小川に生きるメダカだって幸せだ 必死に幸せだ ペットボトルの世界を知らないのだから そこが世界のすべて 世界の行き止まり 楽園であり、地獄である どちらのメダカが幸せなのか どちらのメダカが不幸せなのか もしも選べるものならば、幸せであれ不幸せであれ そんなことを軽々と飛び越して 生きている実感の持てる世界を選びたいものだ
ペットボトルのなかのメダカ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1366.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-07-26
コメント日時 2018-08-14
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ある意味、煉獄 に尽きます。
0ペットボトルのメダカと野生のメダカ・・・の対比は、扶養されている(しかし自由はない、危険もない)立場と、自力で生きていかねばならない立場の対比に重なります。 実際にそのメダカを見ながら感慨(ある種の悟り)を覚えた、という設定かと思いますが、すべてを作者が語ってしまうと、読者の側が想いを馳せる余地がなくなってしまうような、そんな息苦しさを感じるようにも思います。 たとえば・・・ 対比している語り手を、今度はメダカの側から見てみたら・・・とか、メダカを見ている最中に、小川で自在に泳いでいたメダカがザリガニに食われる瞬間を視た時の衝撃を挟み込んで、写生的な描写で両者を描き出してみるとか・・・なにか変化を加える工夫をしてみると、もっと味わいが出るかもしれません。
0かるべまさひろ様 コメントをいただきありがとうございました。感謝いたします。 まりも様 コメントをいただきありがとうございました。ご指摘ありがとうございました。感謝いたします。
0はじめまして。 煉獄、というと火をイメージするのでメダカのいる水とは相容れないなあと思いつつ、窓辺に置いたペットボトルに直射日光が当たって干上がってしまう恐怖、みたいなのを思い浮かべてメダカも大変だなって思いました。 そして私には、今とは別の選択肢を掴み取る手足があって、よかったなと思いました。
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