別枠表示
サバンナの光と液
半粘性の液がとくとくと垂れ流れている 青緑の、今は白反射な広野に透き緑な液が注がれている 心地よく伸びる地平線に赤若い太陽は沈もうとしていて 斜度の低い残光が針としてサバンナを走り抜ける その針が地を漂白してまぶしい、太陽も地もその日の終わりに輝いている 美しい、上へ下へ広がっていく空間もまったく美しくて 美しくて、美しくて、気持ちがいい 流れる液体は動物たちであった ゾウもキリンも、今日はもう終わりなので自ら溶けてしまったのだ それぞれの背丈から湧き出る瑞々しいとろりとしたうるわしい緑の液体 見るだけでもひんやりとしてくるそれが大地を潤していく 太陽がてっぺんのうちはライオンもカバもめいめいに動き回っていたけれど 日が終わるころにはどの動物もその場に立ち止まって サバンナの荒い木のよう体を溶かし液体に変わって流れていく とくとくとリズムよくすがすがしい液体翡翠 傾いた太陽からの光がそれを通過して刺さるのも気持ちがいい 目の前にアカシアの木はなく 滑るように心地よく地平線が伸びていてもはや快感そのものだ 上から流れ落ちる液体の中で私は潤っている たぶんこれはハイエナだった液だ、なめらかに私の縁を流れていき 私が立つ、少し粘りのある緑色な液体が垂れていくこの大地も潤っている 今日はもう白く焼けきった、カラカラな草も潤ってきれい 透きとおる液体に包まれて私もやわらかくなっていく この中から見る沈みかけた太陽は宝石のようですごくきれい 美しい、美しい、なにもかもが美しくてきれい 太陽が昇れば動物は動き出して 一日がまた始まるのだ
サバンナの光と液 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1269.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-07-14
コメント日時 2018-08-06
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
おもしろかったです。 その上でさまざまな試行錯誤の上で綴られていると思いましたので、感じたのは、擬音が果たして普遍的な言い回しで効果があったのかな、というところです。 もっと淡々と情景描写にまわるか、あるいは引っ掛かりをもっと施すか(粘性の液体、の辺りは詩のアイデンティティだと思いましたので、受け入れてしまって引っ掛からなかったのです)、その方が泣けるくらい感動しそうな、気がしました。
0かるべまさひろさん 擬音に関してはこれを書くにあたって全く意識の外でした。無難なものとして特に考えず「とくとく」と。情景が超常的なのでそれの描写に意識を注いでいました。 他の人もそうかもしれないが詩作において使ってしまう表現・語句というのはどうしても出てくるじゃないですか。一時期私は崩れるとか壊れる描写が多く、それに依らない新しい境地を開拓できないかと考えてたどり着いたのが「きれい」「美しい」でした。この詩はそれの一番はじめです。
0まったくもって、蒸し焼きになりそうな暑さだ、と思いながらアスファルトの道を歩いて買い物に行ったりしている体感に、案外近いものがありました。 緑の液体に溶けていく獣たち・・・アメーバのようにとろけていく感じもあって、面白い映像だと思います。 虫系のアニメなんかで体液が緑色に描かれたりするのを見たことがあるけれど・・・そのイメージと関係はありやなしや。 赤の補色としての緑、なのか、癒し系の色としての緑、のイメージなのか・・・ サバンナの光、と来ると、影、あるいは夜、を予測する。そこに液、という、ぱっと見、似た文字が置かれることで全体が流れ出すような始まり方がいい具合に裏切ってくれていて、面白さのタネになっているのかな。 美しい、きれい、という言葉も、出来れば使うのを避けましょう、と(いわゆる初心者に対して)しばしば言われる「お約束」であるわけで・・・それを連呼することで、くどさを通り越して、一つのスタイルに様式化してしまうような流れも出て来るな、とか。 白反射はともかくとして、透き緑とか赤若い、という・・・絵の具の名前を無理やり和訳したみたいな造語が、うまく機能しているかどうか。なんとなく雑音的に、引っ掛かりを作っている気がして、それはそれでアクセントとして面白いけれども、それが一連に集中している、というバランスは、どうなんだろう、とか。
0まりもさん もうこの詩はひたすらに映像が先行して、それをどう言語でアウトプットするかに尽きる詩でした。 既存の言葉でアウトプットが上手くいかないならDIYの精神で造語していきます。「赤若い」ですが、『詩と思想』2018年4月号の新鋭特集で載った私の詩「天邪鬼と帰る」では「赤冷めていく町」という造語が出てきます。赤は使いやすいんですよね。赤方偏移の伸びるイメージ。 造語で言えば「裏路地」(https://www.breview.org/keijiban/?id=602)には「黒照りのアスファルトは強温(つよぬる)くて」というのが出てきますが、私の中であれが一番うまくいった造語ですね。ルビふらないと読みが不安なのだけが欠点だが。
0のっけの半粘性の液がとくとくと流れている で、面白いイメージが浮かびわくわくして読みました。色彩が豊富で映像が自然と流れていきました。この亜熱帯みたいな夏の一夜に読むとき、自分も液体となっていくように楽しく読ませていただきました。
0KURA_HITOさん サバンナの夕暮れはたぶんいいかんじに涼しいんだろうななんて思って書きましたね
0こんばんわ まずは、率直な感想を。 なんだか 妬けました。 わたしは とあるサバンナをモチーフにした挿絵をコピーして何年も 持ち歩いているのですが、一度も 自身の心の中に培ってきたサバンナを詩にしようとしたことがありません。だが、ここには まるで絵のようなサバンナが存在している。ジェラシーです。 この詩は絵だと思います。「液」という語が一体 何個あるのでしょうか? 半粘性の液、流れる液体は動物たち、などなど。 「液体翡翠」という造語は 宮沢賢治ぽいなと思いました。物質の状態+鉱石だからです。なんだか賢治がやからしそうな語だと感じました。 けれど、せっかく 詩なのだから 視覚的なものだけではなく、 風や匂いが感じられるなにかがあっても よいのになーとも ちょっぴり思いました。
0