散り散りに。 - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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散り散りに。    

弾けて、飛んで、鎖国して、 ウルサイ雛が何羽か死んだ。 ピーピーピピーピ…… 「詰まるところ、鎖国とはそういうことなんだよ」 「今更かよ、ハハッ」 「先があったろうに……」 「いや、やっぱり違うよ」 「羨ましいんだ?」 「もっと恐ろしい何かが……」 「存在する価値があったのか?」 「僻むなよ」 「ちょっと静かに……こっちに隠れ住んでるって噂が」 「世界が違うんだっつーの」 「俺の後輩も……」 「自然淘汰ってやつ」 「知識人気取りが」 「まさか最近引っ越してきたっていう彼も」 「今こそ保護すべきだ」 「あっちにはあっちの考えがあるんだろうね、知らんけど」 「聞かれても構わないさ、何が出来る」 「保護ってのは結局、金持ちどもが食い散らかすだけ」 「今年になってから、もう……」 「それがどうした」 「ま、私らにゃ関係ない話さね」 死んでいない雛はウルサイらしい。 ピピーピピーピ…… --アーアー。本日も空に影なし。あばた広がり、中に蠢くモノあり。……羽根……エー、羽根をむしり……を、凝視、して……恐らく毛穴、か、いや……或いは血に……。 --アー、……エー、本日も空に影なし。これから初老の一羽への接触を試み…… --……う随分と前から……ですね、お国が鎖して……りましょうか……、私もですがね、空なんて見や……んよ。……何を見……。そこに宇宙があ……のですがね、他の方は、天使……海……掘り進め……仰っており……私……よくわからな……。しかしやはり、そこ……鍵が眠っ……信じ……、これで……。 --……ァ、アー。本日も空に影なし。引き続き聞き込みを……。 ピーピ…… あぶらの抜けた羽根が埃と舞った。 「あれ見た?「ドローンのやつでしょ、ないわー「ねー、ボッコボコ「クレーター的な?「それなw「てか、西部劇かよって「あー、羽根でしょ「そそ、いかにもって感じ「アイシュウ漂うー、みたいな?w「よくあんなとこ住めるよねw「まじそれなw「ねね、これヤバくな「これめっちゃいいよ!「ちょ、食いつきすぎなんですけどw「つかこれ、あれのハーフって?「や、ないでしょ。鎖国してんじゃん、あっち「あーね「えーでも、こことかさー……ぽくね?「んー「てか、どっちでもよくね?w「それなw「だなw「あ、明後日なんだけどさー「あー、どしよ「うち的には前に言ってたんでいいと思うけど「やっぱ?「じゃ、そっち系でー……うわ、もうきた「ちょ、早くね?「てか来んくて良しw「それな。だるすぎるんですけど「ねー、んじゃ、後で時間決めよ「りょ「あいあ「あ、教科書「きりーつ。礼。……着席」せんせーせんせー、ちょっとロッカーから教科書取ってきまーす」 遺伝子汚染、混濁あるいは順応。 置換率と認知度の因果関係について。 新種か雑種か。優劣の基準を……。 ピピ…… --ええ、存じ上げ……。……かし、まあ、あれは我等……別物……紛い物……。 --……は流石でございます。何がと……すのも烏滸がましい……分かったと……て失礼にござい……。そこ……味わい……ますゆえ。冠? こ……、あの、先生へのリスペク……決して……まだ……。 --昨今の……は反抗的な……、翼だ、空だ、梢……い夢ばかり語り……、破門にしてやっ……です。どこぞ……とか散ったとか……。……にはもう……ませんので……。 --……材? アポを取っ……ボクは独立し……偉大さ……ないのはカワイソウだか……。……にかく、もっと良い機……と……を……で……れから……。……嫌なら別にいいよ、バイバイ。 ピーピピーピー…… ベルベットの夜から野ざらしのあさへ。 風になった止まり木は数知れず。 「ねえ、ホントにこっちでいいの?」 「もう戻れないだろ」 「進んでる?」 「諦めるの?」 「何年経った?」 「……これも違う」 「あれ見て!」 「どこ?」 「あれだよ!」 「……え?」 「ほら、あんなに……」 「待ってよ」 「せめて僕らだけでも辿り着かなきゃならない。そうだろ?」 「ねえ、ホントにこっちでいいんだよ……ね?」 すれた靴底。 理想。 色褪せた地図がはためく。 ピピ…… --……ったもので……。……こから流出……こへ来よ……る愚か者……ちません。ここは純血……も選りす……。身の程……に……ありませんよ。……しい……。……れですか。外……迷いこん……のでしょう、気に……。……し上げますよ……いえ結構で……頂き……。 ピピー……  私はある老鳥から、一葉の紙切れを受け取った。手帳の頁らしきそれは異端児のものであろう、拙い文字が書かれていた。以下にその全文を記載する。   この世の誰が鳥を愛でようか。   喜びも悲しみも、   愛でるすべも、   魂さえも、   拡散し、   漂う、   散り散りに。   幼い夢のさめる度、ひとりふたりと同胞は去り、   見送る俺の老いた肉は今や惜別の涙もなく朽ちゆく。   癒着した古い夢もろとも、人知れず、   散り散りに。     恒星の死ぬるが如く、       散り散りに。   弾けて、飛んで、鎖国して、   ウルサイ雛が何羽か死んだ。


散り散りに。 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 5
P V 数 : 1267.8
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2018-06-20
コメント日時 2018-07-18
項目全期間(2025/04/16現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
可読性00
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閲覧指数:1267.8
2025/04/16 19時03分39秒現在
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    作品に書かれた推薦文

散り散りに。 コメントセクション

コメント数(5)
R
(2018-06-22)

花緒さん、 これ、元々の台詞じゃないバージョンがありまして……いや、なんというか、やり過ぎちゃいましたかね……。

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かるべまさひろ
(2018-06-23)

カギカッコの中身は申し訳ございません、ぜひもっと会話文の読書量を増やしてから挑戦して欲しいと思いました。 会話は、詩に扱うには簡易でいいので歴史を踏まえないと面白さが勝てないです。 三点リーダの多い箇所は面白く読めたのですが、会話が詩に用いる強さがなくて、本当にもったいないです。詩なら、現代口語演劇を上回って欲しいです。「鳥」が「散り散り」に鳴く様はもっとカオスだと感じました。 R 様の詩は基本的に総ての文字に意味があるので、考えて練られていらっしゃる点は大好きです。 でも、鳥が散り散りになるのか切なくなるには、もっと一読者の僕を鳥にして欲しくなります。 描こうとしてる部分は多分感動できそうな、人の侘しさに近いのかなと感じました。

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R
(2018-06-23)

かるべまさひろさん、コメントありがとうございます。 台詞は、そうですか。作品として思いっきり書いたのはこれが初めてですが、台詞で状況を説明する事と説明し過ぎない事のさじ加減が難しいです。台詞ではないバージョンの背景に流れる声を拾ってみた感じです、が、演劇。高校時代のみとはいえ、元演劇部員としては大いに反省せねばなりませんね。 歴史を踏まえるとか面白さについては、よく分かりませんでした。申し訳ありません。 「総ての文字に意味がある」そう言って頂けて嬉しいです。 今回ももちろん、総ての文字に意味があります。 「」の大部分は鳥ではない人の台詞です。 私は人ですが寝惚けた異端児なので、人も鳥もよく知りません(比喩的な意味でも、そうでなくても)。多分、鳥は各々よろしくやっているのでしょうし、人は人で相変わらずってやつかと……。「ハーフ」が本当に混血児なのか何かが擬態しているのかも私には区別がつきませんが、どっちでも有り得る気がします。ただ私は書き始めてから、(比喩的な意味での)鳥にも変わり者がいるらしいと知ったくらいですので、私の話はあてにならないかもしれません。

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藤 一紀
(2018-07-17)

おはようございます。私は好きな作品だな、これは。どこがどうと言語化するのはちょっと難しいのだけど、何度も読みました。想像するに、さまざまな声で語られている状況が像を結んでいないために、誰が何について語っているのか読みとりにくいということなのかな、とは思うのですが、見えないところでなにがしかの事件というかドラマが展開していることを感じさせてくれます。それは「具体的にはこういうドラマなんですよ」というような明示はなくて、交わされたり発せられる「声」の背後に隠れていて、時々仄めかすように影をちらつかせる。奥行きを感じさせてくれます。その表面で「声」による展開があるのだけど、その「声」にも浮き沈みというのか、響き方の変化があって、「混線」にも似たはっきりとは聞きとりがたい声もある(個人的にはこの部分が最も好きです)。表面で聞こえる「声」と場面場面での声色の変化、そして、そこで何が、どんなことが起こっているのかが、だんだんと見えてくるようでありながら、それはやっぱりうっすらと想像するにとどまって、つまるところ、表面ですすむ展開とそうさせている何事かの見えなさは解決されない。けれども、最終部分では既に起こってしまったことになっていて、声の主たちは消え、何があったのかという謎はー読みながら「起こっていることを突き止めよう」と追いかけていた意識はー宙吊りになってしまう。この、なにかは明確にはわからないけれど、けれども重大な、痛ましいことが起こったにはちがいない、という印象はあとをひきます。複数の声と奥行きからなる立体的な作品に思いました。

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R
(2018-07-18)

藤一紀さん、コメントありがとうございます。 好きという一言も嬉しいけれど、何度も読んでくださったということが何よりも嬉しいです。そして、うっすうすの気配を拾い上げてくださり、ありがとうございました。もう死んでもいいや(極論)  先のコメントで触れました、「台詞ではないバージョン」を投稿することも考えていましたが、とりあえず保留にして、代わりに種明かしを……しない方が良いのでしょうかね。悩ましいです……余韻をぶち壊すことは避けたい。それに、種明かしをするにしたって、どこからどこまでを白状すれば良いのやら。

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投稿作品数: 1