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Alpha
生まれる前の闇に ぽつ、ぽつぅんと 浮かんでいる 光の結晶たち (すっかり消費されてしまったね) アタシの葉脈を 衛星軌道上から観察した彼が 火曜日の声で呟く (きっと 約束は空を飛べないだろう) 半額になったアタシの 緑の指に口づけをして かつての密告者たちと 同じ背中を見せながら 彼も遺跡へ旅立つのだ (アタシは座標になりたかった) 黄ばんだ契約書を 暖炉の火に投げ込んで 壊れたように繰り返す 誕生の瞬間の声で 何度も繰り返されてきた (始まりの前からずっと) そして繰り返されていく (終わりの後もきっと) いつしか風が止み 獣たちの影が 静かに横切る夜明け に 寂しい、と 口にしたら 消えてしまう結晶たちが アタシの中で そっと 光りはじめる
Alpha ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 949.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-04-04
コメント日時 2017-05-03
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
とても張り詰めた気持ちで読めました。 (消費されてしまったね)、(きっと/約束は空を飛べないだろう)、「半額になったアタシ」、また、上空から「アタシの葉脈」を観察する「彼」等、諦めに近い言葉と状況が切なくなる一方で(「アタシ」を観察している「彼」さえ遺跡に消えてしまう)、しかし、「アタシ」は「寂しい」とは口にしない。 ここに「アタシ」の覚悟と気概のようなものを感じて、息が詰まりました。 「アタシは座標になりたかった」も良い。 「寂しいと、/口にしたら/消えてしまう結晶たちが/アタシの中で/そっと/光りはじめる」この最後がとても好きです。 おそらく光、という言葉は詩においては使い古されていると思いますが、確かに光が煌き始めるような感覚を少し覚えました。 恥ずかしながら、稚作「dark star」では、「輝くのは/闇よりなお昏い星」と書いたのですが、この詩では、最初と最後の連に光が出てくる。 自分は闇に拘るが、光に拘る人もいるのだな、と、そんな違いを勝手に考えて、面白がったりもしてしまいました。 また、何故か、田中恭平さんの「薄明」の最後に出てきて、もとこさんもコメントで言及されている「薄明」なども思い出し、人にとっての「光」とはどんなものか、とも考えました。 もしかすると、B-REVEWに投稿されてるもとこさんの詩で一番好きかもしれない。タイトルも好きです。繰り返し読みたいなと思いました。
0白犬さんへ 文学極道代表代行でもある詩人の平川綾真智さんは、私が生まれて初めて「本屋で詩集を手にとり、内容に惚れて買った日本の現役詩人」です。後で彼が私と同じ誕生日で、同じ街に住んでいるということを知りました。まあ年齢は私よりすっと若いし、才能もはるかに上なんですが。でも私と同じく目に疾患を抱えていて、しかも私よりずっと病状が重くて片目は失明状態だそうです。そういう状況にも関わらず、彼は詩に関することだけでなく熊本地震の復興にも力を注いでいます。その姿勢には、本当に頭が下がる思いです。 私も若い頃は闇という言葉に憧れていたのですが、年齢を重ねて目に爆弾を抱える状況になってみると、光というもののありがたさを実感するようになりました。やはり、自分の現状というものは作品に大きく影響するようです。私の拙い詩をここまで真剣に読んでいただいたことに、心から感謝します。本当にありがとうございました。
0ディストピア後の世界を描いているようでありながら、アルファ、これから始まる予感。「われら孤寂なる発光体」(伊東静雄)を思い出しつつ、半額の・・・でちょっとずっこけ・・・(スーパーマーケットで、少しくたびれて半額になったレタスを連想してしまいました・・・)宇宙に旅立っていくようなイメージから「ぼくたま」(日渡早紀でしたっけ)を連想したり・・・。 植物の電気信号をとらえた写真を見たことがあります。闇に発行する、命の光。水分子を突き抜けると光るというニュートリノ、とか・・・命と発光って、なんで繋がるんだろうな、と思いながら・・・「彼」を見送る「アタシ」が、星の王子さまと薔薇のようにも思えてきたりするのでした。 言葉が綺麗すぎるのが、何点(じゃなかった)難点かなあ。「半額になったアタシの」の連、詩脚がそろっていて、見た目にも美しい、リズムも整っていて、バロック音楽のような美しさになっている、と思います。その整然とした美しさのゆえに、「密告者」とか「遺跡」とか「半額」とか、本来ならそこで立ち止まるはずの言葉をするっと飲み込むように読んでしまう。「ぼく地球」的なイメージを喚起されるのは、こうした言葉をさりげなく埋め込んでいく手仕事の故かもしれません。
0まりもさんへ こんにちは、秋海棠です(やめんか) 伊東静雄は詩集として読んだことはなくて、新潮文庫くらいです。まりもさんが連想された「八月の石にすがりて」は、むしろ強烈な夏の陽光のイメージですね。「半額」に関しては、けっこう悩んだ末にそのまま使いました。私は基本的に頭に浮かんだ言葉をそのまま書く形で詩を作ることが多いんですが、この作品は最終連が最初に浮かんでしまったので頭を抱えちゃいました。その後に真ん中が浮かんで、第1連が最後という自分でも珍しい創作パターンでした。「半額」の連が揃っているのはまったくの偶然です。タイトルはヴァンゲリスの同名曲からで、最終連が浮かんだ瞬間から完成までこの曲が延々と脳内再生されていました。 それにしても、まさかここで「ぼく地球(たま)」が出てくるとは思いませんでした。あの作品が連載されていた頃の「花とゆめ」は、当時の彼女に頼んで買ってきてもらう形で毎週読んでいました。確かに、あの作品(特に月基地編の)イメージに近いかも知れません。実は「ぼく地球」を読んでいる当時も実際にヴァンゲリスの「Alpha」を流しながら聴いたりしていたので、イメージがつながっているのかも知れませんね。実際「Alpha」を一般にも有名な曲にしたのは、あの「コスモス」という番組でしたから、最初から宇宙からの視点を想定して作っていたのは間違いないと思います。読んでいただいて、どうもありがとうございました。
0桐ヶ谷忍さんへ 前述した通り、この詩は最終連の言葉が初めに浮かんで、そこから遡るように肉付けしていったものです。最初は意識していなかったのですが、ヴァンゲリスの「Alpha」を脳内再生しながら、萩尾望都の「偽王」や「神殿の少女」、それに「銀の三角」といった砂漠や遺跡や辺境の惑星といったイメージで書いていたみたいです。 (アタシは座標になりたかった)の意味は、桐ヶ谷さんが想像されたように彼のための座標、彼を導き出会うための座標という感じで書いた記憶があります。最後に第1連を書いている時は、もう当たり前みたいにループさせようと決めていました。読んでいただいて、どうもありがとうございました。
0もとこさんの詩について思うのだけど、いつも無音の静寂があって、イメージがきれいなんですよね。僕は、あまりイメージを 思い浮かべて生活しない方なので、こういうきれいさは、率直に、一見しただけで、美しいなと思えます。 そして、思想的な面でも、自分のうしなわれていく様子への哀惜のような、ファーストガンダムの最終回のような、達観的な 戦慄が、さーっと走り抜けていくようなことを伝えられるうまさと切実さがありますね。 実は僕も、目が病気状態です。あと少しで治るんですけど、それプラス多飲症と、不快感が、かなりきつい状態で、 生きている心地がしません。とはいえ、快方へ向かっており、希望を世界とのつながりの中で少しもって、自分でやるしか ないことは、頑張ってみています。話がそれて申し訳ありません。もとこさんの目も、健康も、良い状態であるといいな、 と思います。 もとこさんの詩の根底にあるものが、たぶん何かあるはずだと思うんですが、イメージの、そして記憶(、文化の、) 共同体的理想郷への共感を誘うための詩なのかな、と今は感じています。
0黒髪さんへ 私は視覚的なイメージから詩を書くことが多いようです。 http://www.geocities.jp/yumesawanachi/poem/poem-kajinoyume.html http://www.geocities.jp/yumesawanachi/poem/poem-kinironomadobe.html これらの詩みたいに昼寝から目覚めた時とか交差点で信号待ちをしている数十秒の間に、最初から最後まで全部ストーンと物語が落ちてくることもありますが、それは本当に稀なパターンです。ほとんどの場合は、まず心の中に色彩や風景が浮かび、それを言葉に変換するような感じで書いています。 黄昏時の野原、曇天の荒野、真夜中の海など、ほとんどは子どもの頃に家を追い出されて独りで彷徨っていた時の景色なんですよね。私の詩の大部分は、そういうイメージが元になっています。最近になって宇宙の闇に浮かぶ小さな光とか、そういう光景が良く浮かぶのは、やはり健康面の影響もあるんだと思います。黒髪さんも、焦らずゆっくりと健康を取り戻していってください。読んでいただいて、どうもありがとうございました。
0>寂しい、と >口にしたら >消えてしまう結晶たちが >アタシの中で >そっと >光りはじめる レスを読んだ後ですので、僕も後付けの感想になってしまうと思いながらも最後にこういうオチがあるという事で、なんだろうな、ちょっとした唐突な感じを受けました。それは悪い意味で、というのではなく、それまでの連で紡ぎあげてきた風景の描写が「に」で切られてしまう事によって現実の寂しさが舞い込んでくるという事。強がっていた結晶という幻想が、消えてしまうという所に光が宿るというラストに、言葉にならない気持ちが出てきました。 それまでの連で紡がれてきた情景は切り刻んでいくと、多分繋がっているよりは羅列のイメージが強くそれが形にも現れているのかなという感じでした。それが、こうしてレスを読んだ後で、逆算するように読んでみると、ある種の納得というかちょっとだけメイキングをみているような気がして、2回楽しめる作品だなと思いました。最後まで読めてしまったら楽しい作品だと思います。
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