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夜のはじまり
夜のはじまりはどれですか。 それはここからですよと訴えた。この世界の切り取り線は、広い宇宙の中というよりは、四畳あまりの部屋の中で済んでしまう。 広いと錯覚していたあの頃。ヒロインはいつだってスポットライトを浴びている。代わりに浴びる街灯は夜を教えてくれて、ヨーイドンで走り出すにはあまりに月が眩しい。これじゃあ転んでケガするよ、と誰かが言った。夜が深呼吸をすると、泣き止んだ。 歯を食いしばった思い出も、笑い転げた思い出も、夜が記憶してくれる。みんなの宝物をそっと大事にしてくれて、夢の中に案内してくれる。朝なんて大嫌い。だって笑い声が聞こえてくるから。朝なんて大嫌い。でもそろそろ泣き止むから、ちょっとは認めてやろうかな。 そうしてはじまる夜はまたおわり、次の夜が呼んでいる。夜のはじまりはどれですか。
夜のはじまり ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 829.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-05-22
コメント日時 2018-05-25
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「どこ」ではなく「どれ」と問われるように具体的で、そして「ここから」「切り取り線」という形で身近に感じられている「夜のはじまり」が語り手の感覚の中にあって、しかしその感覚が全く「広い宇宙の中」という外部性へは接続されておらず、「四畳あまりの部屋の中で済んでしまう」程度の個人的で内部的なものに留まっていることが自覚されています。それは語り手が「スポットライト」「月が眩しい」という注目されるような大々的な光を恐れ、また「笑い声が聞こえてくる」朝が嫌いでその(嘲笑めいた)笑いの数々が自身に向けられるのを恐れているからなのかもしれません。対して語り手は「街灯」という孤独な小さい光に親和性を感じ、その夜の孤独な中で「これじゃあ転んでケガするよ」という失敗への恐れを思い返して「夜」に感覚を重ねる形で自身を慰めているようで、夜は誰からの干渉もなく、嫌になったら眠れば全て夢の中へ消え去るという安心感(「みんなの宝物をそっと大事にしてくれて、夢の中に案内してくれる」)も含まれているのかもしれないように感じました。 こうした夜の感覚は比較的共通したもので、多く語られていることのようにも思えます(私はサカナクションの曲を聴くことがあるのですが、「白波トップウォーター」や「スローモーション」にある夜の孤独さや嘲笑、灯りの眩しさは似たものが含まれているように感じます)。しかしその既に語られたものでは満足せずに語り手がそれを自身の手によって書こうとしているのは、また夜があるのだということを自分に確信させ、そうしてまた朝に訪れるかもしれない苦しみに耐える意思をここで見出しているからなのかもしれないと感じました。ただ逆に言えばそうした夜への確信と同時に朝の苦しみへの確信を同時にこの中へ含みこむことは、語り手自身をむしろ苦しませる方向性へと向かわせてはいないでしょうか。言葉の力によって夜の確信を強めるばかりではなくて、さらに朝に強く希望を与えるということが詩にできればより素敵なことだと思いました。
0頭の中でニューミュージックと称された時代の音楽が聴こえてきました。
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