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たこつぼ
「たこつぼ」 悲しいかな 俺はタコの住み家だ 管の中をぐぬりと動く 腹の底で毒墨吐いたな 紫の液体金属駆け巡る 毒の抜ける穴は無し この苦悶は誤魔化して耐えるしかない 『あなたの話を聞くとき 私という私の全てを 一度抛らないといけない気がするのです』 -白と黒のアーガイルを かぎ編むように泳ぐタコ- 管の中をぐぬりと動く 今度は手に居るんだな 何本かの足を俺の指に通して突っ張らせてる 思い通りに動かすことも思い通りにさせねーな これじゃピアノも絵もダメだね 『あなたの話を 私を介して聞いていると 何かが屈折しているような そんな気がするのです』 -実存と物体の千鳥格子を かがり縫うように泳ぐタコ- 管の中をぐぬりと動く 見透かされると威嚇する 俺の頭を締め付ける 肩も喉も締め上げる 茹で上げてやろうかこの野郎 『あなたの思考を 無謬的に受け取ることができない自分を 忌ま忌ましく思うのです』 -現象が虚空に溶けかかっているマーブルを 染め分けるように泳ぐタコ- 管の中をぐぬりと動く 口から出ようとしやがった 俺の顔面に足を張り付けて 人様に墨を吐きかけるつもりか 俺はゴキュンと飲み込んだ おまえの生臭さを好んで嗅ぐやつなんていねーよ 『申し訳なくなるのです』 帰れよ おまえのいる場所はそこじゃねーだろ 左胸に帰れよ -蕭条とした灰色の中に タコは姿を晦ました- 『無碍になりたいのです 限りなく透きとおっていたいのです』 悲しいかな 俺はタコの住み家だ
たこつぼ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 793.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-04-15
コメント日時 2018-04-29
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
この詩を社町迅さんに捧げます。 私のぶしつけな質問に丁寧に答えていただき、本当にありがとうございました。 この詩を作る上で非常に参考になりました。
0投稿ありがとうございます。 『白と黒のアーガイル』『マーブル』と云ったフレーズによる表しにフックがあって、それらが情景へ誘いますね。読んだ気持ちはポップだったです。
0ひゃー、すごい! たこつぼってことは、あの厄介な存在を捕らえたのですね 恥にタコの皮を被せてタコにして捕らえたのですね それなら一先ずはアレが漏れ出る心配が無い!私のとは違う! これは見事です! 悲しいかな、と独りごちていますけど 実際はちゃんと受け入れてるような雰囲気がありますね。 また、タコの動き方や、自制の対象になっているものの呻き声がサブリミナル的に現れるのが、 恥の原因たる自身の矮小さをリアルにしているのだと思います。 おまけに、使われる語彙のセンスにも琴煢さんの技量の確かさを感じます。 知らない言葉が多いから、とても勉強になります。 私に「捧げる」なんてのは大仰ですよ~、でも嬉しいから受け取ります~! 印刷してメモ帳に挿んでおこうかな? 作業服と一緒に選択しちゃったらごめんなさい。(今月4回やらかしました) ところでですが、あれからまた恥を使った作品について考えて、 昔テレビで流れてた「羞恥心」って曲があったな、と思って聴いてみたんです。 そしたらアレ、別に恥そのものの表現ではなかったですね。 やはり恥の作品は少ないんでしょうか? んで、それとはまた別に、ピアノの演奏曲かなにかで 要所要所でわざと音を外して笑いを取る、みたいなのがあったなー、と思ったんです。 検索しても曲名が分からなかったのですが、確かにあったと思います。 恥は笑いを引き出す。分かってやれば、笑いはルールに則ったものとなり、 恥をかく者にとっても見る者にとっても攻撃、罰にはならなくなる。 …で、考えたんですよ、 詩で恥を表現、若しくは体現しても、漫画や漫才のような笑いを取ることって出来るんでしょうか? それを実現してしまったらなんとなく詩というものの領域を外れて 漫才ネタの領域になりそうな気がしてる所なんですが… 詩で笑いを取るっていっても、ギャグはむりなのかなあ、と。 下ネタを使ったとしても、どうしてもシュールになるのが詩の癖なのかなあ、と。 琴煢さんはどう思いますか? 変な感想文になっちゃって申し訳ないですが、この詩を読ませていただいてありがとうございました。 私の方はまだ誇りと恥を詩に出来てません。少々(ずっと?)お待ち下さい…。
0選択じゃなくて洗濯でした。
0三浦さん コメントありがとうございます。 アーガイル、千鳥格子、マーブル、灰色はタコの擬態から着想したものです。 狙ってはいませんでしたが、ポップと言われるとたしかにそうですね。 こういう風に詩に模様という形で背景を忍ばせるのが好きなので、暗い詩を書いても私の詩はポップになってしまうのかもしれません笑 こういう方法は分かりやすいですし、「詩を分かる」ということだけで少しポジティブな気持ちになれるような気がして、詩が楽しくなる。 そういうものを誰かと共有したい気持ちが私にはあると思います。
0迅さん ちょっと体調を崩してまして、ここに来れなかったので、返信が遅れてすみませんでした。 でも、迅さんに気づいてもらえてよかった! ぶっちゃけますと、自分は極度のあがり症でして、レジで会計をするだけでも緊張してしまうんです。 あがっているとき、何か得体の知れないドロッとしたものが手足の末端に流れるような感覚があるんですが、誰もこの感覚を分かってくれなかった(笑) 家族に説明しようとしても、上手く説明できないし、何とか頑張って話しても、説明している内に何かが違うような気がしてくる。 でも、詩なら自分が納得できる形で表現できるのではないかと思ったんです。 それでこの感覚を何に例えようかと考えたところ、すぐにタコが浮かびました。 「邪悪なタコが毒をまき散らしながら自分の体内を這っている」と考えると腑に落ちました。 私の恥はこんな感じなんです。 この詩には3つの観点があります。 タコを嫌がる自分、虚構を泳ぐ謎のタコ、肉体を離れた理想の自分がささやく声 そういうものが全て私の中にあるから「たこつぼ」な訳ですが、実はこの詩は3つの詩を別々に作ってコラージュしたものです。 そうすれば、詩自体がタコの擬態になるのではないかという試みでした。 なんとなくつぎはぎをしていたら、いい塩梅になったので、この形にしました。 しかし、こうやってできたこの詩を最初から順番に読むと、誰が何が、自分なのかタコなのか分からなくなってきたんです。 「最初はタコは客体だったのに、これは自分自身ではないのか」 「タコが自分の肉体を痛めつけていると考えていたが、本当はタコが病気ではないのか」 「理想の自分がささやく声は実はタコが発している悲鳴ではないか」 こういうことを考えている内に、自分の実存が揺らいでくるんですが、考えてもしょうがないことに気づいて、諦めるしかなくなる。 それで「悲しいかな」という言葉が浮びました。 最初はなかった言葉ですが、最後の最後で付け加えました。 迅さんの言う通り受け入れるしかなくなるんです。 恥を笑いに昇華させるというのは、実社会を生きていく上で非常に賢いやり方だと思います。 思い浮かんだのは出川哲朗さんですね。 でもあの人はそもそも人が恥ずかしいと思うことを恥ずかしいと思っていない節があるかも…笑 しかし、恥ずかしいことをしているという自覚がある上であえて勇敢に立ち向かっているようにも見える。 どちらが本当なのか分かりませんが、「恥」というものをここまで上手く使いこなせる人はいないんじゃないかと思います。 「詩で恥を表現して笑いをとる」ですか… スベる覚悟があるなら、可能かもしれませんね。 恥って根本的には人と人の関係なんで、笑いに昇華させたいのなら、やっぱり責任問題になると思うんですよ。 その責任は最低限、顔と名前が一致していないと果たせない。 それは芸人でも詩人でも一緒だと思います。 谷川俊太郎が面白い詩を書いてちゃんと成功するのは、彼が詩人として認知されているからだと思います。 自分の詩でスベることに責任を負えるわけですよね。 だから「恥ずかしいことはできない」。 逃げ道を作っちゃうと仕事が来なくなりますから。 その意味で、責任を果たして表現される恥というのは、罪のない笑いを生むか、人を安堵させるものに集約されるのでしょう。 責任を回避しようとする恥はいたたまれなくなって目をそむけたくなりますからね。 迅さんとの議論や、自分で詩を書いてみて、ちょっと心境が変わりました。 今までは恥の本質に向き合おうとしていたのですが、僕は詩を書いているんだから、読まれることをもっと大事にした方がいいと。 その立場でいくと、この詩は責任を負わないイタイ詩だと思います。 (迅さんに捧げといてこんなこと言ってすみませんw) 自分にしか分からない言葉で書いていて、読んでくれる人のことなんて全く考えてない。 「恥ずかしいことはできない」と思えるまで、命を懸けてみろと自戒しています。 この詩を洗濯してもらえると、タコも大人しくなるかもしれませんね(笑) 次はちゃんと人と共有できる詩を書こうと思います。 読んでいただいてありがとうございました!
0花緒さん コメントありがとうございます! おっしゃる通りだと思います。 書いてる自分に酔った勢いで投稿してしまって、もっと寝かせるべきだったと後悔しています。 パンチが足りないのは、きちんと完成させてないからだと思います。 この文体も冷静になってみると全く好きではありません(笑) 日を跨いで読み返すべきですね 次の作品はじっくり作ろうと思います
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