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人魚
死に向かって泳ぐ魚 水のなかの空を進む 瞳を潤ませ 鰭(ひれ)を群青に染めて 結びあわせた命の航路は 背徳者を導く救済の暗号(コード) 雨を呑み成長した 体重分のしあわせ 螺旋に血を噴き上げ 果てることを恐れず 光のなかを飛ぶ銀色のナイフ 死に向かって泳ぎ 有限の生を輝かせている 生きる感傷を抱いた少女 あわせ鏡の夢裡に唄う 眼帯と長い前髪で武装し 悪意のさざめきに背を向け かき鳴らす赤いギターは 復讐の花束 または 祝福の機関銃 こゝろの裏 殺意にひとしい愛を希求するから 時に 届かぬ獣の爪のように叫(おら)び いつか宇宙の塵になり 星間漂うのが悦び 街角に立ち 絶望と希望のあわいを唄っている 久遠に唄う人魚たち 岩礁に腰かけ 双生児(ふたご)の月に照らされている 「あの娘(こ)はもういないのね」 「不老不死を捨て、人と魚の2つに魂を分かち、人界に下るなんて」 「考えただけで恐ろしい、神様もよくお許しになったものだわ」 「もう終わったことよ、あの娘のためにも唄いましょう」 異世(ことよ)の海はフラクタル 常若(とこわか)の国はフラジール ぬばたまの夜 氷らせた虹を楽譜(スコア)に あだめく人魚たち 蠱惑の唄を合唱している
人魚 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 885.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-03-20
コメント日時 2018-03-25
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
いわゆる「セイレーン」の設定と、アンデルセンの人魚の設定と、どちらが一般的なものかよくわからないのですが、ここでの人魚は不老不死の存在であるようです。 一連目の「背徳者」が一冊の本の題名になりそうな重量を持っているので、そこで何となくひっかかったのですが・・・三連目まで読むと、不老不死の人魚としての在り方を裏切り、有限の生を疾走する生き方を選んだ、ということになるのでしょう。 久遠などの文語的な詩語がアクセントとして聞いているかどうか、ということなのですが、ことよの海、とこわかの国、というような対語的な用法や音韻としての響きを活かした使い方の場合は、歌的な効果が加わるように思うのですが、口語的、散文的な部分に入れ込むと、装飾的な印象が強くなるように思いました。 復讐をエネルギーにして生きようと念じる少女と、銀のナイフのような鋭さと決意を持って海中を飛ぶように泳いでいく人魚とを、別個のエピソードの並列のように並べながら重ね合わせていくところに魅力を感じましたが、少女がいささか図式的というのか、観念的に(キャラ設定的に)描かれている感があり、そこにもどかしさを感じました。少女の切実さ、ギラギラと生きる欲望を光らせている様や理由が、暗示されているともっと強く読者を引き込む作品になったと思います。
0岩垣弥生さま、こんにちは。 華々しく、ステージで踊るスタイルの良い少女たちのイメージをいだきました。 入れ替わり立ち代わり、中身は変わっても、偶像視される対象は永遠にそこにある。 考えさせられる作品でした。 ありがとうございました。
0まりも様 拙作を読んでいただきありがとうございます。 第1に人魚の設定ですが、これは常若の国(ティル・ナ・ノーグ)マン島の人魚とセイレーンを混ぜ合わせて、さらにアレンジしたものになっています。(マン島の人魚は不老で不死ではないですが、死んでも翌日よみがえるそうです) 分かりやすく不老不死という設定にして、唄で人を魅惑するセイレーンのイメージを加えました。 第2にこの作品はまったく推敲がされていません。 ケルアックが「推敲は読者に対する裏切りだ。その時でてきた生の言葉を共有するのだ」みたいなことを言っていて、ケルアックの何が良いのかわかりませんが、「そういうものか」と思い実践しました。(勿論お酒もドラッグもやらず、構成と大体の青写真が頭のなかで出来ている状態ではじめたのですが) それで問題の2連です。1連に比べて詩として弱い、端的に言えば下手です。なぜこうなったかというと、2連は1連に比べてぼんやりしたイメージしか出来ていなかった。準備不足だったのですね。もともと少女の境遇を表す言葉として「青い鳥籠」というのを用意していたのですが、2行目になぜか「眼帯」というビジュアルイメージから入り、ギターを赤く塗ってしまった。これで「青い鳥籠」は使えなくなり、もうこのままの勢いで書くしかない・・えーい。で出来たのが2連です。 「何か下手だけどこれが読者と生の言葉を共有するということなのか?」とそのまま投稿しました。(この2連を読んでライヴ感を感じる人がどれくらいいるのか広く聞いてみたいです) もともとこの少女は「囚人を親にもち基金で育てられた」みたいなヘビーな設定はなく、「音楽で身をたてることだけを望む、クラスで孤立している変わり者」くらいのイメージだったのですが・・・(だから2連に用意していた言葉で使ったのは「悪意のさざめきに背を向け」の箇所だけです) 第3にわたしが非日常的な古い言葉を使うのは、音読した時のリズムや響きを整えるためでもあります。たとえば「夢のなか」という5音を「夢裡」にすることで2音に出来るわけです。 ただこの詩の3連はどうしても説明的になってしまうため装飾に走ったことは否めません。これも気になり「あだめく」は「蠱惑」を強調するくらいの効果しかないので、削ろうかと思いましたがそのままにしました。(これが生の言葉を共有することなのでしょうか?) 最後に適切な批評、アドバイスありがとうございます。急には無理なので少しずつうまくなりたいです。 (ケルアックのせいにしないで)
0くつずり ゆう様 拙作を読んでいただきありがとうございます。 そうですね。 時代や場所が変わっても、人を惹き付ける魅力(チャーム)の本質は不変なのかも知れません。 言葉にないイメージをいだいて下さったようで嬉しいです。 感想ありがとうございました。
0一連の観念的な世界と三連の台詞を伴う具体的な描写の世界観。その中間的な役割に位置する二連が惜しいですね。例えば私を主体に語られる世界観。どうせならばここもまた違った世界観で語らせてほしかった気もします。一連二連は惹き込まれる魅力がある。それだけに。
0アラメルモ様 拙作を読んでいただきありがとうございます。 なるほど。 少女本人の口から「痛み」や「生への渇望」を語らせるという手法は非常に有効かも知れません。 メリハリも出来るし。 それはそれで技術が必要ですが。 全体の構成と1連は割と気に入っているので、いつか直せたらいいなと思います。 (書いてしまったモノの呪いがあるのでしばらくは無理ですが) 感想、アドバイスありがとうございました。
0実際のモデルがある人魚であれば、マナティだとか、あるいはマン島ですか。人魚と言えばどうしてもアンデルセンの北欧の方を思い出すので、イギリスなども緯度からしたらえらい北偏の地ですが、意外と新鮮な感じはしました。しかも人魚とセイレーンとを混ぜ合わせてと聞けば、レスレスと言うのか、レスがかなり参考になると実感できます。 「雨を呑み成長した 体重分のしあわせ」など詩表現に感心します。多分にセイレーンを、ギリシャ神話を勉強したくなる詩ですね。
0エイクピア様 拙作を読んでいただきありがとうございます。 1冊だけ人魚関連の本を読んだことがあるのですが、人魚は水恐怖症(ハイドロフォビア)から生まれた想像の産物らしいです。そして、半人半魚より半人半鳥の方が歴史が古い。人は海よりも空の方が怖いということでしょうか?(古代ケルト人は本気でいつか空が落ちてくると信じていたようです) また、泉鏡花の「人魚の祠」という短編は、イメージだけで実体としての人魚は出てきません。 色々無駄話をしましたが、嬉しい感想ありがとうございました。
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