屈折率 - B-REVIEW
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屈折率    

映り込む空を裏側にして 知らぬ面をしている 確か 白いように思えた水は そうではなかったかもしれない 辺りは両端から這うように消えていき 走る光とまた光 それから 水晶体のカーブ それらの違いを指差すまでには 寸づまりの生命 冬の向こう側でますます 消えていく 周辺に立った私たちは いつまで経っても 水の色について語りきれないままだ あなたは目をつむり 私は言葉を失っていた あなたのシャツは確かに 白いように見えていたのだが


屈折率 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 5
P V 数 : 899.1
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2017-03-19
コメント日時 2017-03-27
項目全期間(2025/04/06現在)投稿後10日間
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2025/04/06 09時51分41秒現在
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    作品に書かれた推薦文

屈折率 コメントセクション

コメント数(5)
なかたつ
(2017-03-19)

 作中に出てくる「水晶体」のように、洗練された表現が印象的です。  詩の冒頭では、おそらく太陽が雲に隠れていて、その雲が次第に消えゆく過程を独特の言い回しで表現しているのだと思います。地上から見た空は、雲がなければそのまま表側として見えますが、雲=「白いように思えた水」があると、地上からはその雲の表側のみが見え、その裏側にあるはずであろう空が見えてきます。「辺りは両端から這うように消えてい」くことで、光が地上に走ってくる。  思えば、雲が白く見えるのも、雲が水で出きているのではなく、飛散している粒子と水が結びつき、その粒子が光を屈折させて、地上の人間の眼に感知されるので、白く見えるような気がします(間違っているかもしれません)。それと同時に、空がいわゆる空色として色があるのも、光の屈折が大いにかかわっているはずでした。  空は空色、雲は雲色、ただ、雲は水でできているはずなのに、地上にある水はいわゆる水色とは違います。いわゆる水色は空色とでも言うべきな気がしますが、混じり気のない水は透明です。  二連目は場面が転換して、前後の文脈を無視したワンシーンが映し出されますが、その前後の文脈も「あなた」も「私」も何があったのかは知る由がありません。ただ、そこにある事実は、目をつむったあなた・言葉を失っていた私・白いように見えたシャツでありますが、第一連を受け、「私が見ている世界は確証を得られない世界である」ということが表されているのだと思います。  自分が見ている色を他人が同じように見ているとは限らないですし、また、自分が何かの色を言い表す時、その色の名前を知らなければ表現することができません。色を特定することと同様に、自分が見ている世界を言語化するという行為は、自分が見ている世界を言葉という枠組みに当てはめて、たとえ暫定的=一時的であろうと、見ている世界に確証を持つということだと思います。それができないでいる「私」は、やはり自分が見ている世界に確証を持てないのだ、という姿勢が作中で表れているのだと感じました。

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MIKO
(2017-03-20)

なかたつさん コメントありがとうございます。細やかに読んで頂いて嬉しいです。 この短い詩が「私が見ている世界は確証を得られない世界である」ということを指しているは当にその通りで、唐突に見えるかもしれない二連目は色について語れない〈言葉を失った 私〉と色について興味を持たない〈見ていない あなた〉のコミュニケーションの(不)可能さを表したくて付けました。 世界を言語化する時に、誰に伝えるのか照準を合わせることでやり方は変わってくるかもしれません。言語化する行為が確証を呼び起こすこともあるのかもしれません。 色の濃淡にはある程度基準がありますが、世界の様々な事物が要素分解出来るわけではないので、周辺をぐるぐる回って少しでも対象に近づこうとする繰り返しをする。確証を持つことばかりは他人がしてくれることではないな、とコメントを読んで改めて思いました。

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もとこ
(2017-03-21)

例えば人が空を見る時、まず目から情報が入り視神経を経由して脳へと至る。そのプロセスは実に複雑で、それゆえにトラブルが発生する場合もある。例えば角膜や水晶体、網膜といった目の部分、視神経、さらに脳そのものに何らかの問題があれば、青い空を現実通りの色彩や視野で見ることができなくなる。そこまで深刻ではなくても、それまで暗い部屋にいたり、別の色を長時間見続けていたりしただけでも、空の青さは他の人たちと別の色合いへと変化する。ましてや、その情報を言葉で他人に伝えるとなると、その確度はさらに低下してしまう。 見えるもの、聞こえるもの、世界、他者……すべては私たちが思っているよりもずっと不確かなものだ。時として語り手のように、しっかりと見たはずの水の色や恋人のシャツの色すら相手に伝えることができなくなる。もちろん、愛する想いもだ。世界はどこまでもクリアであり、私たちは互いにその美しさを正確に伝えあっているという幻想。それに気付いた者だけが、本当の色に近付けるのかも知れない。

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まりも
(2017-03-23)

冒頭の「白いように思えた水」と終盤の「白いように見えていたのだが」が微妙にずらされながらリンクしていて、「あなた」と「私」との間の屈折、私の眼(水晶体)と世界との間の屈折、光の当て方(当たり方)によって、世界が異なって見えて来るのに、その差異をうまく言い当てられない、そんな表現上の屈折を洗練された表現で示しているように思いました。 冬の向こう側、周辺・・・本当に言い当てたい場所の周辺や手前側でもどかしく探っている、そんな「私たち」について考えさせる作品だと思います。

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百均
(2017-03-27)

>水の色について語りきれないままだ >あなたは目をつむり >私は言葉を失っていた >あなたのシャツは確かに >白いように見えていたのだが  水の色については皆さんのおっしゃるレスに同意する他ない。本当に面白い。「白いように見えていたのだが」ともってくる所に技を感じます。この詩を読んだ時に語るベきポイント、読むべきポイントというのが明確に提示されており、真っ向勝負でテーマに対する考察を深めている、表現しようとしている所に男気を感じます。いい詩だと思います。

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