喉をほどく - B-REVIEW
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ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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喉をほどく    

山羊の鞣した皮で喉を塞いだ
 煙を満たした甲状腺から溢れるホルモン
 止める術を知らない
 零れていく気概を
 必死に受け止めようとする粘膜は
 決して何らの暗喩ではない
 ありありと起こる出来事を
 そのままの感触で食べてしまうと
 指先から腐食していくようだ
 だが、まだ指は生きている
 整った爪先が自然に綻んでゆくことを
 老いる、と呼ぶならば結局
 老いているようでまだ青い 眼の反射で見ていた
 光の輪郭だけを頼りに
 脈打つ器官の揺らぎを計る
 硝子の向こうで乾いた風が
 軋むように喉を鳴らす
 その音はやがて波紋となり 肌に染み込んでゆく 言葉より速く、触れるより浅く
 記憶の中で形を変えながら
 ゆっくりと沈殿する
 消えていくか、残るかの境界線を
 ただ指先でなぞる 朝の冷えた空を裂くように
 一羽の鳥が飛び立った
 置き去りにされた羽根が
 静かに呼吸している
 それは確かに柔らかく
 ひどく脆く、あたたかい
 喉を塞ぐ皮膜をそっとほどけば
 風にのせた声が溢れ出し
 遠く、霞んだ方角へ 朱雀の方位に、太陽は動き出す
 爪先の青さをまだ宿したまま
 羽撃きの残響に耳を澄ませる



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喉をほどく ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 4
P V 数 : 953.9
お気に入り数: 0
投票数   : 1
ポイント数 : 0

作成日時 2025-03-17
コメント日時 2025-03-26
#現代詩 #縦書き
項目全期間(2025/04/07現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
可読性00
エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
総合ポイント00
 平均値  中央値 
叙情性00
前衛性00
可読性00
 エンタメ00
技巧00
音韻00
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閲覧指数:953.9
2025/04/07 03時24分46秒現在
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    作品に書かれた推薦文

喉をほどく コメントセクション

コメント数(4)
レモン
レモン
作品へ
(2025-03-17)

こんにちは。 >山羊の鞣した皮で喉を塞いだ
 から、 >喉を塞ぐ皮膜をそっとほどけば までは、喉を塞いだ息苦しさから、尚も漏れるものの記述で、 >喉を塞ぐ皮膜をそっとほどけば 以降は、 喉が自由に放たれた美しさを描いていると、読みました。 とても理知的で機械的な雰囲気さえあるのですが、 どんどん表現が人間臭くなってきて、 >喉を塞ぐ皮膜をそっとほどけば からは、見事に解き放たれた自由を描いているように思います。 鳥の描写が素敵です。 ありがとうございます。

1
中沢
レモンさんへ
(2025-03-18)

コメントいただきありがとうございます。 鳥の描写はいつも迷うので、褒めていただき嬉しく思います。

0
A・O・I
作品へ
(2025-03-18)

一言でいうと 「踏みとどまる」と「文(言葉)を留まる」といったイメージを持ちました。「老いる、と呼ぶならば結局」「老いているようでまだ青い」と言い聞かせつつ、こうして言葉として「軋むように喉を鳴らす」こうして文留フミトドまる、「言葉より速く、触れるより浅く」時間は流れ、形を変えるいまこのあいだも、書いたり消したりしながら。「ただ指先でなぞる」ここまで。転じて「一羽の鳥が飛び立った」とある。なぜかはわからない。わからないけれどきっとそれは偶然だ、そして必然であったと思う。きっかけに疑問はない、ただ「置き去りにされた羽根が」振り返らずに「静かに呼吸している」一つ一つその感触を確かめながら、感覚を取り戻していく。「喉を塞ぐ皮膜をそっとほどけば」ときにいまに身を委ねるように「風にのせた声が溢れ出し」「遠く、霞んだ方角へ」導かれる。この流れは、「朱雀の方位に、太陽は動き出す」まるで詩そのものが生きているように話者を導く「爪先の青さをまだ宿したまま」まだ腐っていない、この青さのまま、今この瞬間を「羽撃きの残響に耳を澄ませる」詩の声を探し続けている。 私がこの詩を読むと老いというよりも、出尽くした干からびたといったかんじ。そうダイレクトに染み込んで喉潤ったんで、こう自分ダダ漏れで吐き出してしまいましたとさ

2
1.5A
作品へ
(2025-03-26)

かっこいい作品と思う反面、本作を一読させて頂いて感じたのは、表題と本文がうまく頭の中で結びつかなかったということでした。なんだろう、『喉をほどく』という表題からイメージする想像と、本文がそれよりもずっと上空に漂っているような、そんな感想を持ちました。余談ですが、喉をほどくという言葉(かっこいい!)から想像したのは、なぜか空也上人立像なんですよね。日本史の教科書とかにも多分載っている不思議な像。それくらい、瞬きも忘れてじっと世界に入り込むような、そんな雰囲気をまとった作品だと思いました。

2
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