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詩的思考男性と現実的思考女性のプロポーズ顛末記
アレクサンドラ・リプリー著 新潮文庫 「スカーレット(四)」235頁より抜粋 「まあ、困るわ、あたしに感想なんて聞いたってしょうがありませんよ。でもどうしてもと言うのなら言うけど、あたしにはね、ハリエット、『春の日射しが美しい』っていうそれだけのことを、なんだかわざと回りくどく難解にして言っているような気がするわ。二章のところだってそうだわ。『ぼくはあなたを愛してます』ってことが言いたいんでしょう、要するに?それなのになぜ、ピクニックから始めて、やたらに小鳥や花が出てこなくてはいけないのかしら?あたしだったら、『ぼくはあなたを愛してます』と言ってくれた方がずっとうれしいわ」 私は、スカーレットの意見に激しく同意する。 故に、詩的思考男性と現実的思考女性のプロポーズ顛末記を実験的に書き記してみて、 どのようなプロセスを辿るのか、検証してみたい。 以下、詩的思考男性をSと呼称し、現実的思考女性をGと呼称することとする。 S「今日は、やっとGさんをピクニックに連れ出した。よおし、今日こそバッチリ、プロポーズを決めてやる」 Sはいそいそと、ウーバーイーツでデリバリーした有名ホテル監修のピクニックボックスとピクニックシートを用意した。 S「えっと、Gさんはビール以外呑まないから、お酒は生ビール。あ、そうそう。とっておきのバカラのピルスナーも持って行かなきゃ」 あれこれ、あれこれ、これも必要、あれも必要と用意した結果、 片手にはピクニックボックス、片手にはビールサーバー、背中には登山用リュックと、凡そロマンチックから程遠い出で立ちになってしまった。アルマーニのスーツが台無しだ。 Sは、自分の姿におおいにたじろいだが、これも現地に着くまでの辛抱だと、ぐっと歯を食い縛った。 時は折しも春。桜の花は満開である。 用心深いSは予め下調べして、 「ここならほぼ完璧」という場所を探しておいた。 電車を乗り継ぎ、北越谷の桜並木に、やっとの思いでたどり着き、Sはピクニックシートを敷き、美味しそうな食べ物の数々を並べてニンマリした。これならばGさんも気に入ってくれるに違いない。 Gは12時の待ち合わせ時間ピッタリに現れた。いつものオフホワイトのセーター、シマムラのジーンズ、古着屋さんで300円で買った、お気に入りのロングカーディガン。 しかし、髪はボサボサ、おまけにスッピンである。 G「Sさん、ごめんね。寝坊しちゃった」 と言って、大あくびをした。 顔も洗ってないのか、よく見れば、目の下に白いカピカピが付着している。 Sは内心ため息をつきながら、明るい声で言った。 S「大丈夫だよ!僕はGさんがいるだけで満足なんだ」 Gという女は、抜け目なく頭も良いのに、肝心なことをいつもスルーする。 G「えーっ!すごく美味しそう!高かったんじゃない?」 Gはいつも値段を知りたがる。 S「高そうに見えるけど、たったの3000円だよ」 本当は、その10倍の3万円なのだが、 高いと、いつもGは不機嫌になるのでSは嘘をつくのに慣れている。 G「これで3000円なら安いわ。Sさん、ありがとう!あっ!後で半分払うわね」 (やはり)と内心Sはガッカリした。もう知り合って一年になるが、Sがセッティングした最初のフランス料理のフルコースに招待したデートでは、Gは割り勘にしなければ食べないと言ったので、結局、5万円払わせてしまった。 Gの生活がラクではないことを知っているSは、しきりと後悔した。それ以来、デートの食事は、吉牛、マック、サイゼリヤのリピートである。(この頃ようやく3回に1回程度は奢らせて貰えるようになった) S「さあ、Gさん、食べよう!」 Sは明るく言って、率先してローストビーフのサンドイッチを頬張った。Gも安心したのかサンドイッチに手を伸ばす。Gは1口食べて唸った。 G「Sさん、凄いわ!大当りよ!今まで食べた中でいちばん美味しい」 SはGの舌が確かなのを知っているので、Gが満足した様子を見て微笑んだ。 S「Gさんが好きなビールも用意したんだ。飲もうよ」 Sがバカラのピルスナーを取りだそうとした時、またもやGはやらかした。 G「え?わざわざ用意してくれたの?Sさん、いつもワインしか呑まないから、私、自分の分はコンビニに寄って買ってきたわよ」 と言ってGが取り出したのは、発泡酒の銀麦500ml缶だ。いつもそうなのだ。GといるとSの調子は狂ってばかりだ。 SはいったいGの何処にこれ程まで惚れたのか、改めて考えた。 (僕は女には不自由してない。僕に群がる女は山ほどいる。だけど彼女たちが好きなのは、僕の金だ。どの女も、すぐに高価なプレゼントをねだる。中にはプレゼントをねだらない女もいるが、そんな女は、僕の愛をねだる。 Gさんは、僕に何もねだらない。プレゼントも愛もねだらない。なのに、いつも僕を心配してくれる。正直で、嘘がなく、真摯だ。そんな女はGさんだけだ。Gさんなら人生のパートナーとして信頼できる。Gさんこそ僕の天使、僕の女神、僕のいのちだ。 やはり僕はGさんしか欲しくない)と改めて決意するS。 S「Gさん、そろそろ腹ごなしに散歩に行こうよ」 さりげなく、Sは切り出した。 G「そうね。桜が散るのを見ていたいけど、いいわ。この頃運動不足だから」 運命の女神は僕に微笑んでいる!SはGが珍しく散歩に行く気になってくれたので、プロポーズの成功を確信して、内心小躍りした。 Sは新調したリーガルの革靴に足を突っ込みながら、さっさとスニーカーを履いて待っているGを盗み見た。 決して美人ではない。ずんぐりむっくりな小柄な身体つき。お腹がぽっこり出てる。 ゲジゲジの眉、つぶらな瞳、低い鼻、大きな口。どこをどう取っても、Sの周りにいる美女達とはかけ離れている。 それでもSはGが愛しくてならない。 1人になって、Gを思い出す度、Sは詩を書きたくなったし、詩を書いた。 Sはお狩り場の森に行くつもりだったが、森の入り口が見つけられず、あちこちさ迷ううちに本格的に迷ってしまった。 あろうことか、いきなり交通量の多い道路に出てしまった。 焦って冷や汗をかくS。 G「Sさん、変わった散歩道ね。これなら私、桜を見てる方が良かったわ」 Gはイライラしてきて、言葉尻がきつくなってる。 Sは覚悟を決めた! S「Gさん!僕と結婚して下さい!」 目を閉じて、Sはプロポーズした。 用意していたロマンチックな言葉は、役に立たなかった。 沈黙。 Sは恐る恐る目を開けて、Gを見た。 怒っている。間違いなくGは怒っている。 G「………どういうこと?」 ゆっくりとGは口を開いた。 G「どういうこと?Sさん。」 静かな声が却って不気味だと、Sは感じていた。 S「ど、どういうこと…とは…」 G「私たち、ただのお友達でしょ。私、Sさんから、付き合って欲しいとも愛してるとも言われたことが無いわ!」 さすがにSも叫んだ。 S「Gさんこそ何を言ってるんだ?僕は会う度会う度、詩と花を贈ったじゃないか!」 G「詩?あれは詩だったの?私は天気の話だと思ったわ!雨が降ったり、晴れてたり、曇りだったり、雪だったり、嵐だったり、夜だったり、朝だったり、月が出てたり出てなかったり、星空だったり、いっつも天気の話をして、それらを愛してるって書いてたじゃないの! 花?私、花が欲しいなんて、ひとことでも言った?私が欲しいものを、Sさん聞いてくれたことなんてあった?」 Sは脚から崩れ落ちそうな気がした。言われてみれば、そうなのだ。Sは詩と花で愛を告げているつもりでいたが、肝心のGが何を欲しがっているかなど、聞いたことがなかった。 いきなりGがしゃがみこんだ。 G「S さん、私、おしっこしたい」 Gは今にも泣きそうだ。Sも泣きたかった。 (おしっこ…おしっこ…おしっこ…おしっこ…) Sの頭の中では、おしっこだけがこだましていた。 飽きたので、検証はここまでとする。 尚、当方リクエストなど在れば、検証を続ける用意は御座候。 はぁ、疲れた。
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詩的思考男性と現実的思考女性のプロポーズ顛末記 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 379.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2025-03-06
コメント日時 2025-03-06
項目 | 全期間(2025/04/07現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
笑、おもしろく読ませていただきました。 まあ、あれですね。広い世の中、男性も女性も色々なタイプが有りまして、この二人の性格は作者の見方のひとつとは思われますが、「詩的思考男性VS(&)現実的思考女性」という決めつけはそれほど間違いでもない。とわたしも世間一般的にもそう感じていると思います。 例えば詩を読んでその傾向を集めたとしても一般的に男性は夢を語りたがる。大凡報われることもないであろう願望を語りたがるのです。理由を付けながら、或いは基地を持つように図面を引き、そしてときにはそれら積み上げたモノを粗雑に暴力で叩き壊そうと考える。女々しいという言葉が男性に対して用いられるのもよくわかります。最後には攻撃的な力に頼るというのはやはり受忍するユーモアには女性よりも劣るからでしょうね。 その反面、身体的構造も違う女性が受容を好む傾向にある。というのは誰しもが理解できるところではあります。何よりも子供を産み育てるという行為が男性とは決定的に違う。男性は(野生動物の雄にしても)元々自立心が強いので、その特徴から思考傾向も違って当然でしょう。言葉に置き換えてみても男はこころで独り呟くのを好み、女性は対話を好みますね。あの止まることを辞めない長話しにはついていけないし、元々捕獲(収穫)する力が男性よりも劣るので、日々の糧を心配して誰かを頼りに暮らしていかなければならない。生まれながらにして現実の厳しさに対処しなければならないのです。成長し愛を育み新たな家庭射止め結婚して子供でも このように相対的な関係からしても物事の興味は異なってきます。
1わーい。 こんばんは。 コメントありがとうございます! ちゃんと玉がついてるひとがいて、 とても安心しました! 文章の中身は否定でも肯定でも面白いでも、頭可笑しいでも、何でも良いのです。 あれこれ楽しんで貰えれば、書いた甲斐があります。 そうですね。 男性は夢を語りたがる。 だから可愛いのです。 女性は対話する。 そうでしょうか? 私は女性ですが、世間話は僧侶の説教より価値があると言われても、 長話はお断りしたいです。 それは私に子宮が無いからではありません。 幼い子供の頃からそうでした。 子供の頃は、母や姉たちの愚痴話などを、黙ってにこにこしながら聞いているような子供でした。 この頃、少し女らしくなりましたが、昔は書き込みをすると、 98%、男性だと思われていました。
1※ 途中で機械が勝手にバグってしまいましたよ。笑 続き ~子供でも持てば目の前の生活を一番に考えるのは当然で、夢などは後方に追いやられてしまうのです。このように相対的な関係からしても物事への執着興味は異なってきます。 ※ 詩的男性と現実的女性による思考傾向の違い。この創作文のテーマがそのどちらもが希求する愛にあるとするならば、その「愛」とは様々な解釈によっても異なってくるので一概に説明することは難しいですね。 思考傾向の違い偏りはあるにしても、端的に言わせてもらうならば、男性の求める愛とは大いなる理想郷(桃源郷でもいい、笑)で、 女性の求める愛とはやはり大いなる夢(楽園でもいい)で、そのどちらもが天国へとつながる階段の足踏み、(詩)であることに違いはないのでしょうね。 やれやれでたぶん誤字脱字ごめんでした。 敬具 ~
1そうね、傾向として中性子を持つ人も増えてきて、男性の名前を語る詩人。またはその反対。そういう書き手に惑わされてしまうことが多いので、書き言葉や源氏名で決めつけて読めない難しさが多々ありますね。 性別、書き手にははじめからわかっているので、これは間違えても仕方ないですね。 夫婦別姓から女性言葉男性言葉の同等な扱いには慣れていません。性別は、それを読む側が常用常識で勝手に解釈してもいいのではないか。とも思います。
1わーい。わーい。 続きだ!続きだ! やっぱりメルモsアラガイsさんは、 サイコです! やっぱりダイスケです! 天国への階段 とても素敵な曲ですね。大好きです。 桃源郷に楽園=詩 うーん、ポエムですね。大好きです。 やっぱり、(si)は、大好きでーす! ありがとうございます。
1でも、 いきなり男性ですか?女性ですか? と聞くのも可笑しいですよね。 だとしたら、 最初から性別の偏見なく、 相手を「人間」として話す必要がありますね。 このラベル剥がしは、私にとって結構、難しいです。 頑張ります。 ありがとうございます。
1ああ、そうかな。会話嫌い。女性にも当然そういう人がいる。男性も然り…(夢は現実大統領!利得だ金儲け) 特に携帯情報社会になってから、女性同士会話を好まない人も増えてきているのでしょうね。 この指先操作の情報化社会現象が、将来人間の声帯を変えることになるのかも知れない。 大声で歌いましょう! ですね。
1はい。了… え?え?え?ちょ、ちょーと待った! 詩は大声で書きます。 鼻歌を歌うのは大好きです。 だけど、私の鼻歌を赤の他人に聞かせるつもりはありません。 蟻が父さん。
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