黄金色に燃え 乱舞する光の世界 - B-REVIEW
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黄金色に燃え 乱舞する光の世界    

家の裏手に 広大なグラウンドを挟んで 三階建ての 清掃工場のビルがある 見たところ いかにも古びた なんのへんてつもない 廃墟に近いビルだが こいつ 日の出を迎える早朝になると にわかに豹変し それは信じ難い 魅惑的な建物へと 一気に変身する それは地平線に朝日が顔を出す その瞬間から始まる そのとき 清掃工場の二階三階の窓ガラスが こぞって黄金色に輝き始め 見る見る辺り一面 眩いばかりの光の乱舞となる そして次には 両階を通して窓ガラスを横断し 巨大な円形の光の環が出来る その中では あたかも太陽のマグマを連想させる 光りの炸裂が あちこちで勃発する その全体は 言いようのない力にあふれ 尽きることなく めらめらと燃える 私はそれを見て 思わず偶然の必然を感じた ありえないことが ありえることとして 至極当然のごとく そこに澄まして存する 光りはそれ程までに 自由闊達に演出し演技した しかし ときは早々と移ろいゆく 何せ 太陽は忙しい身だ 一点に留まるようなことなど ありえない そこで にわかに両階とも 仮死状態の建築物と化し 見たところ いかにも不満を凝固させて そこに独り 憮然として屹立していた ところで 私はというと この思い掛けない終焉に いつも困惑していた 流れの中で こっちとしてはいろいろと考えていたこともあるのだ たとえば 光のほとけのこと 宗教として そこまで関心を寄せることは 私には いかにも特異なことに思えた かの毘盧遮那仏は 光のほとけというではないか おもしろい 実に愉快千万だ しかし 欧米の理性は決してこのような考え方を許すまい なにせ 神は人間の理性をこえているとしながら その理性を以て 森羅万象一切を説明しないでは気が済まないのだから しかし 毘盧遮那仏はほとけである 神である たしか竹から生まれたのが かぐや姫ではなかったか そこにいかなる矛盾もない 論理を融解し 原型的に聖なるもの すなわち ヌミノーゼに変容し そこから 稀有のヴィヴィドな生命力を湧出させることーー これで充分に 事足りている かの毘盧遮那仏の誕生も かくして生まれたほとけである 神である…… いまは 清掃工場は仮死状態にある しかし また明日には 底知れぬ光りのエネルギーを得て 復活することだろう   


黄金色に燃え 乱舞する光の世界 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 7
P V 数 : 920.0
お気に入り数: 0
投票数   : 1
ポイント数 : 0

作成日時 2025-01-18
コメント日時 2025-02-01
#現代詩
項目全期間(2025/04/23現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
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閲覧指数:920.0
2025/04/23 15時10分14秒現在
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    作品に書かれた推薦文

黄金色に燃え 乱舞する光の世界 コメントセクション

コメント数(7)
あやめ
作品へ
(2025-01-19)

浅川さま 普段見落としがちな風景の一部が、ある一定の条件きもと光輝き、こころ奪われる、ということはきっと多くの人が経験するものと思いますが、浅川さんのこの作品はそれを過不足なく丁寧に表現されていて、夕焼けに浸った磨りガラスに圧倒された思い出がフッとよぎりました。 この世に圧倒された詩人が書いた詩というものは、読んだ者にこの世への新たな視点を与えてくれます。

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浅川宏紀
浅川宏紀
あやめさんへ
(2025-01-20)

お読みいただき、ありがとうございます。どこでも、自然は贅沢に演技しているということを、書いてみたいように思いました。これまで気づきませんでしたので、さっそくあやめさんの詩を読ませていただきました。事実の持つ過剰な重さを、素知らぬげに、つぎつぎとさわやかに転移しているかろやかさに感心しました。『靴を履き 物語をポケットに ポエムを歩く』の、「物語」と、さらに「ポエム」という一事が、それを可能にしているのかとも思いました。ありがとうございました。

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あやめ
作品へ
(2025-01-25)

浅川さま お返事だけでなく、私の作品も読んでくださったとのこと、感謝いたします。 詩で交流できるというのはとてもいいものですね。 ありがとうございます!

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浅川宏紀
浅川宏紀
あやめさんへ
(2025-02-01)

『靴を履き 物語をポケットに ポエムを歩く』を読みました。それも、何度も読みました。読むうちに、イメージが湧いてきました。その一つ一つが詩なのは、少し贅沢過ぎると思いました。 だって、「貝殻」「なんとはかなく生きて死ぬ私」「足の爪みたいに土がつまっているのです」「醜さを手に入れてこそ」「許してもいいのでしょうか」などなど、福袋の中身のようにゴージャスで奮発したイメージで満載です。私としては少し贅沢に思いましたが、「ポエムを歩く」ということであれば、当然許されることと納得した次第です。

1
秋乃 夕陽
秋乃 夕陽
作品へ
(2025-02-01)

自然による光の演出、その移ろいやすい現象をよく描いていて良いですね。 ビルの窓ガラスの日の当たる場所の鮮やかさと、その反面、当たらなかった時の歌詞状態の冷たさ、どれも細かく観察されていて読み手が想像しやすいです。

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浅川宏紀
浅川宏紀
秋乃 夕陽さんへ
(2025-02-01)

お読みいただき、ありがとうございます。この機会を利用して、さっそく夕陽さんの作品を読ませていただきました。そこには、詠う対象と「一枚」になった、静謐な表現世界が展開されていて、その作者のこころ根を思い、感心しました。そして、その表現世界が『蟻』のような苛酷なリアリズムに支えられていることも、同時に知りました。表現とは、いかにも複層多重なものなのですね。

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秋乃 夕陽
秋乃 夕陽
浅川宏紀さんへ
(2025-02-01)

浅川宏紀さん、そうなんですよね。 市は一枚岩では通せない、いわば頑丈な心のバリアーみたいなものかもしれません。

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