色合いが止まった冷たい朝には
やさしいきみとは何も話したくないから
わたしは枯葉の積もる公園のベンチで
手袋を脱いだ手のひらを空に向けて
この星から水がこぼれてしまわないように
くるみくらいのジャイロスコープを回してる
静けさに藍を溶かした昨日の部屋の暗がりの
輪郭になじまない記憶からの垂線をたどって
真夜中のコーヒーの雫がノートに落ちると
重さのないダウンコートのポケットのなかで
きみがくれた丸いチョコレートがゆがんでる
黄色い芝生に忘れられたテニスボール
使い古した左手のチープカシオの
簡単なデジタル数字のきまじめな点滅と
ヘッドホンからクリアに伝わるピアノの旋律が
この星を満たす水の表面で同心円に広がって
底に積もる細かい砂に曖昧な模様をえがいてる
わたしは小さなブランコに座って
座標から逃げて声を求めるベクトルと
曲がる空間を静かにめぐる矮星の光差を
紙に映した文字の反射で測りながら
乾いた枯葉にいつかからだを埋める
きみの素肌を守るボディクリームと
となりに供える鮮やかな花を探してる
青くならない空に残った弱い星の光
いまきみもあの星みたいに死に続けてる
分厚いニットを着込んだきみにそう話しても
時間はいつもわたしの方が少し遅れて進むから
せめて画質の高いディスプレイを右手でかかげて
透きとおるグラデーションの写真をわたしに送る
空の手前で枯木に残った一枚の葉が震える
鋭い鳥のなき声が内側から強く気持ちをなぞる
ビルの間の陽光が少しずつ傾きと濃度を変える
わたしは冬が終わるまでこの朝を繰り返し
動きを止めてオレンジ色の液体に浮かんでる
作品データ
コメント数 : 5
P V 数 : 503.2
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作成日時 2025-01-03
コメント日時 2025-01-05
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2025/01/07現在) |
叙情性 | 0 |
前衛性 | 0 |
可読性 | 0 |
エンタメ | 0 |
技巧 | 0 |
音韻 | 0 |
構成 | 0 |
総合ポイント | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
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技巧 | 0 | 0 |
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2025/01/07 00時06分51秒現在
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繊細な人の気配がした。オレンジジュースはひだまりのような暖かさですね。
1あーあれですよねーポッケに入ってた丸いチョコレイツはお徳用サイズの丸いやつじゃねいですよねーいあいあ描写がひとつひとつ丁寧で丁寧で…ちょっとそのヘッドフォンよこしなさいな!って意地悪したくなりますわよっ!また読めて嬉しかったッス!
1湖湖さん、ありがとうございます。 オレンジジュースは繊細で酸っぱいです。
1湖湖さん、ありがとうございます。 オレンジジュースは繊細で酸っぱいです。
1三明十種さん、コメントありがとうございます。 いじわるしないでください笑 前作の「バランス」の書き直しです。だいぶ違う感じになりました。
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