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月明かりを君に
月明かり照らす君の瞳が、 寄せてはかえす夜の波を映すから、 僕は、 気付いてしまった。 ああ、きっと、 この欠けた心が再び満ちることは、 もうないんだって。 本当は、 知っていたのかもしれないけど、 ずっと、 逃げていたんだ。 僕の弱さに蓋をして…… 君の長い爪に咲く薔薇のせいにして…… 波間を漂う小舟のような浮き雲がつくる、 刹那の闇に安心を覚えることにも、 気付いてしまったから。 僕は祈る。 月明かりがいつも君を照らしますように、と。 たとえば、 琥珀に囚われた憐れな猫の嬌声が、 饐えたマットレスに溶け込み、 コケティッシュにその尾を揺らしたなら、 どうか、 黄ばんだカーテンをも貫いて、 月明かりが君を照らしますように。 そして、 満月に目覚めた爪が、牙が、 熱い吐息があでやかに夢見る青白い喉笛に注がれ、 自惚れた娼婦が絶望を化粧する様や、 その吹き出物の生まれ変わる先までもが、 マクロファージに喰い尽くされる。 その一挙手一投足、睫毛の伸びゆく様も、 吐瀉物にまみれた魂を満たす素粒子の震えも、 確りと、僕に見えるように、 祈る。 いつか、 月明かり照らす君のシタイを、 寄せてはかえす夜の波に漂う海月が愛撫して、 そっと摘み取った薔薇の花殻を次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸してから蔗糖と一緒に遮光瓶に詰めたものを小舟いっぱいに積み込み粛々とコルクボードの思い出まで漕いで行き傍らのオゾンホールに放り投げた僕の弱さに群がる泥鰌を真っさらな五線譜にポイで掬いあげていく一部始終をネットに晒した卑しい野良犬の興奮のまま朝日に満ち満ちた公園の回らないジャングルジムの哀しみが油を注がれたことで有名な天の川のほとりで乙女を貪る白鳥の鎖骨を駆け抜けたくてカデンツァ。 どうか、 月明かりを君に……
月明かりを君に ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 950.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-02-21
コメント日時 2018-02-23
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
※渡辺八畳@祝儀敷さんの「ワタシのきもち (エルサポエム)」とそのコンセプトに触発されて、私なりの「愛と悪意」をもって、「エルサゲートを意識した、ポエム派や、詩をあまり読まない人たちへ贈る詩」を作ってみました。文字数的には敬遠されそうですが、タイトルと冒頭何行かで釣れたら良いなぁと……。
0読みました。 渡辺さんのを読んでいたので、ぽいなあ、と思いながら、どこだっけ、あ、第四連の最終行で、さらにぽいなあ、が深まりました。 ポエムというか、ポエムっぽいというか、たとえばネルヴァルの小説とかのセリフには出てきそうな感じだなあと思いました。まあ、古風というか。 でも、順当な運びで内側から食い破るとか侵蝕といった感じはなかったです。 と思いきや、《いつか~》のところでドッカーンときたので吹きました。卓袱台返し(ノ--)ノ~┻━┻ とても楽しめました。
0藤一紀さん、コメントありがとうございます。 この詩はコンセプトの都合上、まずはポエムっぽく始めねばなりません。しかし、私はポエムに精通していないので、やっぱり「うろ覚えで描いたエルサ」になりましたかね(苦笑) そして、白状しましょう。 私は現代詩に精通している訳でもないので、エログロっぽいものに逃げようと考えましたが、抑えに抑えた「僕」の興奮という皮を被った私の鬱憤が最後に溢れました。普段、自分がいかに読み手の事を考えずに好き勝手に書いているのかを再認識した次第で…… いや、 そもそも恋愛詩(?)は、 私には荷が重過ぎたんだー ノ ̄□ ̄)ノ ~┻━┻ おっと失礼。取り乱しました。 おふざけが過ぎるかと内心ビクビクしていましたが、 楽しんで頂けて光栄です。ありがとうございました。
0普通に良い文章とか言ったらあれですが、多分芳香剤としてのポエムみたいなのが上手く機能しているのかなと思いました。ポエムの部分については、僕もぶっちゃけ勉強してないので、あんまりポエムっぽいみたいな言葉は使いたくないのですが、この詩だと月明かりを君にと言う形で、語り手である僕は直接的な関与をするわけではなく、遠くから見守るような形で愛を語ると思うんですがその均衡が崩れるのが、多分マクロファージなどの語彙選択からも見えるような部分なのかなと思います。急に生々しくなるのは文体の変化というだけではなく、語り手が多分明確に変化しちゃったからだと思います。 >どうか、 > >月明かりを君に…… 故にこの一文はギャグになっていく。いや、あんた既に手だしたんやから、もうそうじゃないでしょみたいな感じです。今更何を言うかみたいな。
0百均さん、コメントありがとうございます。 芳香剤ですか、なるほど。すごく納得できます。 「今更何を言うかみたいな」 これにも同感です。タイトル詐欺で、私のイタズラみたいなものです(笑) この詩は作者としては、ポップス等有名曲のジャズアレンジ(ピアノ)をイメージして構成しています。聞き覚えのあるフレーズに始まり、原形を無くし、しれっと終わる……最後の静かな和音をその一文に任せました。 でも、 「僕」としては大真面目に君を思ってその言葉(月明かり云々)を紡いでいるので、どうしてそう言われるのかが理解できません。こんなにも、誰よりも一途に、君の全てを愛しているのに……! ……人を愛するって何でしょうね。私には分かりませんでした。 時間の問題かもしれませんが、彼はギリギリ手は出して……いない、はず……です。触れる前に捕まってしまえ、とも思いますが。
0沙一さん、コメントありがとうございます。 「たとえば、~」「そして、~」 この二連は月からの連想とそれまでのイメージの破壊の為に、狼男にしましたが、「僕」が狼かは内緒です。序盤との落差を好意的に受け取って頂き、素直に嬉しく思います。ありがとうございました。
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