空が雪を見下ろす一本道を、
ずっと一人、歩いていたね、遼。
樹々は枯れて、枝は灰色に変わり、
前を見据えても、地平線が臨めるだけ。
誰もが嫌がる道を、その一本道を、
口をつぐんで歩いていたね、遼。
母親は黙って止めたし、
父親はどこかにいなくなってしまった。
でも、誰も君の不幸せを望んでいなかった。
なのに、君の長靴は雪にうずもれては、
また前へ、また前へと一歩踏み出していく。
知ってるかい?
君は充分幸せになってよかったんだ。
知ってるかい? 遼。
君は十字架を背負わずとも、
人に愛されることが出来たんだ。
ねえ、遼。
僕らは、ただの友だちのままでいられたはずなのに。
例え、
太陽が僕らを焼き焦がそうとしても、
月が僕らの眠りを妨げようとしても、
僕らは幸せに、満たされて、
たった一杯の水に事欠くことなんてなかったんだ。
ねえ、遼。
人には色々な生き方がある。
貧しい人からさらに奪う人生。
ただ一つの拠り所として、妻子を選ぶ人生。
放蕩のあと、抜け殻のように去りゆく人生。
赤を青だと言い聞かせて、自分自身をだます人生。
それとも、大きな好運に恵まれて、富を得る人生。
色々あるんだ、色々ね。
遼。君はそのどれをも選ばなかった。
君の目に映るのは、ただ雪原。
指先を凍らせ、かじかませる雪原。
踏みしめて踏みしめて、
それでもなお、真っ白なままの雪原。
遼。君は本当にそれでよかったのかい?
集めたレコードも、大切なアルバムも、
すべて焼き払って、笑顔も、笑い声も捨てて、
その先には何があったんだ? 遼。
黒くくすんだ向日葵でさえ、
一瞬にして燃えつきる、
一本道の先に。
作品データ
コメント数 : 2
P V 数 : 614.4
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作成日時 2024-10-23
コメント日時 2024-10-25
#現代詩
#縦書き
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2024/11/23 18時52分20秒現在
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主人公の宛先のない語りによって、遼という人間の冷ややかでありながら熱心で一途さが際立っているように思います。 詩の全体的なテンポもまるで遼が雪を踏みしめてゆくかのように、ずっしりとゆっくり進んでいく。寂しげで行き先が見えない恐怖がありますが、爽やかな雰囲気のある作品でした。
0らりるれろさん、コメントありがとうございます。この詩はひたすら雪原の一本道を歩く青年の姿をイメージして書きました。青年の姿と彼の半生を重ねながら。遼という名前はソフトバレエの遠藤遼一氏から拝借しています。この詩は彼、遠藤遼一さんのように、普通にしていれば苦しみもなく大きく人に愛されたであろうすべての人、誰もが未踏の場所へあえてチャレンジしたすべての人、に捧げられています。 爽やかな読後感、嬉しいです。 挑むことは、素晴らしいことです。
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