アハッ
雨のなか、走ってきたよ
出された水をぐっと飲み込んで
プロポーズした
でもきみは
窓の外は目まぐるしく動いているから
せめてわたしたちはこのままでいましょうねって
アハッ
バカだな、オレって
*
カサのなか
カサのなかでは
きみの声がはっきりと聞こえる
雨はフィルターのように
いらないものを取り除いてくれる
ぼくの耳に入ってくるのは
ただきみの声だけ
*
雨の日、あの日。
市松模様の
歩道の敷石の上を
きょうは白、きょうは黒、と選んで
一面ごとに跳び越えてみたりした
幼い頃
雨の日、あの日
ぼくはママといっしょに
歩いてた
カサは一本しかなくって
アーケードが途切れるたびに
ママはぼくの腕をとって
歩いた
ぼくは、ぼくの腕をつかんだ
ママの指の感触がこそばったくて
こそばったくて、恥ずかしかったけど
だけど、とっても、うれしかった
ぼくを産んでくれたひとを追い出した
パパを憎むことよりも
血のつながりのない
ママを憎むほうが容易だった
ぼく
ぼくはパパの代わりにママを憎んでた
パパには憎しみを直接向けることをしないで
容易に憎むことのできたママを憎んでた
そうしてパパを責めてたつもりだった
ぼくはとても卑劣な子供だった
雨の日、あの日
ぼくはママといっしょに
歩いてた
あの日、ぼくは
敷石の上を跳び越えなかった
ぼくは、ぼくが
ママのことを好きだったんだってこと
ずっと前から気がついてたけど
いや、そうじゃないかなって
思ったことがあるだけなんだけど
雨の日、あの日
ぼくにははっきりわかったんだ
ぼくは、ぼくが
ママのことが好きだったんだってこと
雨の日、あの日
ぼくはママといっしょに
歩いた
あの日、ぼくは
なるべく、ゆっくりと歩いた
作品データ
コメント数 : 11
P V 数 : 651.8
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2024-10-01
コメント日時 2024-10-12
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
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閲覧指数:651.8
2024/11/21 22時32分33秒現在
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あらゆる技術を尽くして、恋人への愛を描いていますね。その原点には、お母さんへの愛があった。 田中さんに極度の不幸があったことは知っていますが、こんなに愛を受けて育ってきて、それに自覚的 である田中さんには、詩を書く原動力としてこんなことがあったんだ、と、とても感銘を受けました。 詩行が、はかなくて、はかなくて。
0黒髪さんへ お読みくださり、ありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。
0お母さんとお父さんどっちが好きか? 結局僕もお母さんです。もっと言えばおっぱいです。 伝統的かつ、古典的な愛を描いていると思います。ちょっとコントみたいな喜劇性も感じました。特に前半。
0継母の出てくる作品は、複雑な思いを持って接していたために、こんなものになりましたけれど、ぼくには実母もいたのですが、実母は狂っていて、ぼくの人生を破壊したひとだったので、憎しみしかありません。
0ブライアン・ウィルソンの「スマイル」的な粉々になったあやうい魅力がある。 田中宏輔さんの作品の個性は、いつも最後の方に出るなと思っています。
0アハッ、で始まったのが自分的に新鮮でした。
0同じような親への思い、有るので印象的でした。ままならない心。親子の愛憎だけでも生きるのは難しいです。恋もハードルが高くなりますね。
0同じような親への思い、有るので印象的でした。ままならない心。親子の愛憎だけでも生きるのは難しいです。恋もハードルが高くなりますね。
0おまるたろうさんへ お読みくださり、ありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。
0ほばさんへ お読みくださり、ありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。
0湖湖さんへ 恋はたくさんしてきました。 いまはもう思い出だけでいっぱいです。
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