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未完の完
突き付けられた絶対零度の銃口は 肉体に先んじて 精神を凍死させる 命乞いの言葉は 瞬く間に霜を纏って雹となる ピンク色のミシン糸で無惨に縫い付けられた唇 縫合の隙間から滴る叫び声が ぽろぽろと地上へ落ちてゆく ああ 夏に見た夕立雲 不気味に黄ばんだ空から降る氷の粒は 断末魔の残り滓だったのだと、 まるで釣り堀の鮎を釣るように 鼻先にわざとらしく垂れる黄金の蜘蛛の糸 ゆらり揺れ 獲物を誘惑する上等の模造品 偽物でもいい、どうかこの手に一縷の希望を 「偽物だって掴めやしないよ」 滑り落ちる手の中から弾け飛び 四方に散らばる光粒の煌めき 運命に抗った線香花火はぽとりと首を落とした 見上げれば 月で餅つく白兎 まん丸真っ赤の目が六つ じっとこちらを見下ろして 芒を垂らして笑ってる どうしたってこの世界は! 名前を呼んではくれなくて 目も合わせてはくれなくて 愛しくて抱き締めたこの腕を 邪魔そうに振り払ったこの世界は! 最後に残ったなけなしの優しささえ 脊髄にストローを刺して ジュースのように飲み干してしまうから、 昨日 花束を貰う夢を見た 可愛い黄色のコスモスは ほんのり晩夏の匂いがして 御影石のこの身体に虚しく空いた噴火口へ 白檀の香りを添えて 二つに折って投げ入れた 今この瞬間 この胸に飛び込むのは 元素番号82 エピローグの完成を待たずに撃ち込まれたピリオドは 書き手のいない「あとがき」の 1ページ手前に腰を下ろした おしまい.
未完の完 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 735.6
お気に入り数: 0
投票数 : 3
ポイント数 : 21
作成日時 2024-09-02
コメント日時 2024-09-14
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 10 | 10 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 3 | 3 |
総合ポイント | 21 | 21 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 10 | 10 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 3 | 3 |
総合 | 21 | 21 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
愛の不足を書いてらっしゃってかなりお上手ですが、その不足を訴える例えが世界への愛を予測させ、愛を知っているからこそ嘆く人間像が浮かび上がります。愛は人ばかりではない、動物や自然に逃げるのも一手です。
1痛い所を突かれてしまいました。 詩を書くことは、心の身だしなみを整えることと思って書いていますが、ここまでバレてしまうと恥ずかしいものですね。湖湖さんの詩を読ませて頂きました。どうしたらあんな、羊の背中で眠るような優しい詩が書けるのでしょう。見習いたいです。。
0羊の背中で眠るようだなんて嬉しいです!読んで下さってありがとうございます。又お話ししましょうね!
0本当に絶望的で「終わり」であることと、その怒りを感じました >まるで釣り堀の鮎を釣るように >鼻先にわざとらしく垂れる黄金の蜘蛛の糸 >ゆらり揺れ 獲物を誘惑する上等の模造品 このように自ら皮肉っておきながら、 >偽物でもいい、どうかこの手に一縷の希望を とあることから、よほど追い詰められているのを感じます。 >「偽物だって掴めやしないよ」 この言葉によって、 >滑り落ちる手の中から弾け飛び >四方に散らばる光粒の煌めき 一縷の希望が消えていくのを表している。 >元素番号82 鉛の重さ、または、話者の胸を貫くような弾丸のイメージなどを思い起こさせます。 最後に >おしまい. とあるのも、釘を打つように「終わり」に徹していることが伝わります。
こんにちは。うーんと、一連目のまず命乞いがあって、そこから銃口の描写に入るだけで 何か違ってくると思うんですよね。 その、作者固有の「私性」観みたいなものに連を追うごとに一貫性が見受けられなくて それが悪いことではないんですけれど、やっぱり生活で感じた「絶体絶命」に対して フルでぶつかって書いた方が、とも思ってしまうんですけれど この作品、広義な意味でエンターテイメントなんですよね。 エンタメなんだけれども、ああ、こうね、こうね、とどこか安心して読めてしまった 自分がいたんで、何か、こう、エッジを効かせて、うわっと思わせて欲しいというか。 僕はもう枯れていて駄目なんだけれど、作者様は結構読んでて筆が乗っていると思うので 頑張って欲しいなと思います。
1文章力が凄いですね。比喩が上手くて、全体的に、楽しく面白く読めます。叙述の対象は、 「本物の認識」かなと思いました。
1このポンポンと軽妙に書いていく連想の握力。
1ものすごく一連目が散文的で、詩らしくない始まり方だなと思いました。銃の怖さがひしひしと伝わってくる、緊張感が小説を読んでいるようです。 しかし、散文っていかにも「人生」で、そこに銃口を突きつける仕掛けだと読むと面白い。最終連はコスモスの夢から流れるようにピリオドの弾にいく。死に際は詩情を思い出しているような、そんな展開。 「どうしたってこの世界は!」 から始まる連の叫びは、この詩全体の息の詰まる色に合っているかは、再考の余地があると思いました。
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