便所の落書きみたいな人生 - B-REVIEW
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便所の落書きみたいな人生    

私の名前は山田進、前へ進んでゆけという意味で母がつけてくれた名前だ。厳しい受験勉強を乗り越えやっとの思いであの有名校に入学できて、母は大いに喜んでくれた。これが私の最初で最後の親孝行だった。  入学後、私は人と話すのが苦手だったが、みんなに気まずい思いをさせたくないので精一杯明るく振る舞った。どうやらそれが気に食わなかったようで私はクラスメイトから虐められるようになった。「おい、邪魔だろ。ほんとキモいな、お前。」「あっ、ご、ごめん。」「障害者は支援学校に行っとけよな」「きゃー言い過ぎ。まぁホントのことだけど。」 ゲラゲラという笑い声が教室に響き渡る、誰もそれを止めることはなかった。私にできたことは、ただただ耐えることだけだった。  入学してから丁度一ヶ月経ったころ、「明日、授業参観らしいね」母からその言葉が聞こえてきたとき吐き気がした。シングルマザーの母には迷惑をかけたくなかったので、私は必死に、来ないでくれと懇願した。私が虐められてる所を、見させるわけにはいかなかったんだ。だけど母はいつもみたいにニコニコ笑ってて、それが私には堪えられなかった。  授業参観当日、教室の後ろでは知らない人がたくさんいる。冷や汗が止まらない。落ち着かない様子でふと隅の方に目をやると母がいた、手を振ってる。だが安心しろ私、今日は授業参観で沢山の大人が見ている、奴等が私をいじめるなんてできるはずが無い。授業が始まる前の休み時間、奴等がやってきた。「お前の母ちゃん、どいつ?」もう何も聞かないでくれ。今日だけは関わらないでくれよ。今日だけは。 「あっ、その、僕のお母さんは仕事で授業参観には来てないんだよ。」心臓の音が聞こえて、汗が額を走る。「それなら何してもいいよな。」  ガチン、と無情な音を立てて私の頭は机に叩きつけられた。まるで時が止まったように感じて、ジーンという耳鳴りが聞こえて、僕の視界は涙でぼやけた。え?なんで?周りを見る、大人たちの顔を。彼らは何もなかったような顔をしてる。どうせ子供同士のふざけ合いだとでも思ってるのだろう。ただ一人、私の母だけが気づいていた。目には涙が、きっと先程の会話が聞こえていたのだろう。私の名前が聞こえてきた気がしたが、決して振り向くことはできなかった。永遠に近い時が経ち、思い切って後ろを振り向いたが既に母の姿はなかった。  最悪の時間が終わり家に帰るもつかの間、母がぎゅうと私を抱いてくれた。肩の辺りがじんわりと濡れて、私も泣いてしまった。長い沈黙を経て、びしょ濡れの口を開き一言、「ごめんなさい。」違うんだ母さん、僕が聞きたいのはそれじゃないんだ。母親からの謝罪は、高校1年の私にとって余りにも非情で、耐え難いものだった。きっと母さんもそれは分かっていたはずだ、だからこそ私は母を許せなかった。様々な感情が渦巻く中、聞こえてくるのは母親の悲痛な叫び声だけであった。 「ごめんなさい、全部私の責任だから。実は私、病気を患っていたの。それがどうやら子供にも移る可能性があって、お父さんは反対してたんだけどね。産んじゃった。あなたは何も悪くない。本当にごめんなさい。」  僕が望んでいたのはね、謝罪なんかじゃないんだ、母さん。あの頃みたいに、ただ一言でいいから、「愛してる」と、言って欲しかったんだよ。  悪いのは私?母さん?父さん?それともあいつ?あいつの親か?何もかもが混ざり合って、僕の感情は限界を迎えた。怒り、強い強い怒りがあっという間に僕の体を蝕んでいった。その後のことはあまり思い出せない。思い出したくない。ただ一つ、今でも忘れられないものは、血まみれのナイフを持ち、母親を見つめる自分自身の愚かさだ。  進、前へ進む。そうだ前へ進む。母さんからの遺言だ。もう泣かない。腐った心に、悪意が詰まった光が輝く。奴等に……僕と同じ結末を。


便所の落書きみたいな人生 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 1
P V 数 : 323.7
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2024-08-18
コメント日時 2024-08-18
#現代詩
項目全期間(2025/04/15現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
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叙情性00
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閲覧指数:323.7
2025/04/15 03時10分38秒現在
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    作品に書かれた推薦文

便所の落書きみたいな人生 コメントセクション

コメント数(1)
おまるたろう
おまるたろう
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(2024-08-18)

なんの転換もないし、詩の強度もないし。暗い内容に反して、作者が常に安全な所にいて書いているのが手に取るようにわかり、鼻につきます。

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投稿作品数: 1