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迷彩
迷宮のような木々を抜けるとそこには 白骨化した首吊のスーツがぶら下がり 迷彩柄のメイクをしても顔がこわばり 敵に見つかって射撃されるに違いない 静かに眠った山猫を捕らえて皮を剥ぎ 迷惑そうなそいつの死に顔に笑いかけ 風に唸る大木に背中を合わせていると 迷信が現実的な仮定として現れてくる 迷走していた自分の足跡を眺めて佇み 夕日に染まる景色に懐かしさを感じる 迷界に陥る幻には負けない精神力だが 体力はもうほとんど使い果たしていた 導く者はどんな姿形でもありがたいが 迷い子はいつも自分勝手な方向を向く 空にあく無数の穴から差し込こむ光が 迷い星を照らして僕の目は潰れそうだ 迷彩服が光に暴かれてしまうと畏れて 更に木々を抜けて奥に向かって行くが 迷う先に彩られるのはやはり死の色で もはや受け入れる他に術はないと悟る
迷彩 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 847.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-02-12
コメント日時 2018-03-03
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
奇数連では第1・第3行頭が、偶数連では第2・第4行頭がそれぞれ「迷」という字から開始されていると同時に、スマホの縦画面で見たときにちょうど折り返しも余白もなしで表示されるように各行が17字で構成されているため、詩全体がテクスチャーのように模様を持ちながらぺたーっと貼り付いているかのように見えます。森は狂気や死に至る精神的危機の比喩でしょうか。
0原口昇平さん、コメントありがとうございます! 迷という字から始まる箇所について、気付いていただけて光栄です。 張り付いているように見せたい詩です。確かに、精神的にどこかしらネジが外れたような人物が語っていて、この文章を書いた時の僕の不安定さも物語っています。
0(敵側なのかよくわからない)山猫をむやみに命を奪うところは、自分自身が狙われていることやその過程(笑っている等)もあり、精神的に不安定になっているんだろうなという表現がわかりやすくて良かったです。ただ、迷宮のような木々に何でスーツがあるのかな?何で迷彩柄じゃないのかな?と思いました。仮にスーツと同じ道を進むことになるのなら、何故自身はスーツではないのか。スーツも精神的に不安定になって迷った末にそこに辿り着いた…のか、敵側に命を奪われたのか…、と気になりました。それと、「迷彩服が光に暴かれてしまう…」というところで、暴かれるのはその迷彩服本体なのかそれとも、迷彩服をきた本人なのか?もし本体の方での解釈なら、本人は迷彩服を一人だけ着ているのかな、とも思いました。あ、あと一つ。「彩られるのはやはり死の色で」から「もはや受け入れる…」のところで、死を色に例えているのならその色を具体的にしなくても、色に関係した動詞のほうがいいなと。
0この詩を俯瞰してみて、意味や文章の流れによって長さを変えるということをせずにきっちりと最後までルールを厳格に適用してしまう部分からは、強迫観念の現れを感じました。精神的に不安定な場合にこのように強迫観念に襲われてということは感覚として私も想像しました。 しかし、全体としてみたときにはそのような不安さに対する厳格なルールのように見えていたものが、その内容を見ていく過程においてはむしろ余裕の現れのように私には思えてきて、それは一つには「迷」から始めるというルールの存在です。この詩において「迷」を始めに持ってくるということは、明らかに語り手が迷うということのテーマを伝えようとする意志があってのことであり、従って語り手はそのように自分を客観的に提供できる立場にあるということが示されているように思われます。また、この詩では視覚が中心に取り上げられていて(「白骨化した首吊のスーツがぶら下がり」「迷走していた自分の足跡を眺めて佇み」など)、やや迷彩服や射撃などの語句と関連して私がやや過剰に連想してしまったのかもしれませんが、視覚という点ではキャラクターを眺めるプレイヤー視点に近いものを少し感じました。個人的には強迫観念というものはより身体的なものであって、例えばドアを閉めたかどうか気になるというような場合でも頭に何か負担がかかって軽く眩暈が誘われているような感覚がするというような、内部の感覚のように思っていたので、視覚を中心に表現されているのは少し意外に感じました。 しかしこうしたものが、そうした迷いの現れとしても読めるかもしれないと考えました。「スーツ」「メイク」「皮を剥ぎ」「迷界に陥る幻」等に共通するのは中身ではなく、むしろ中身を失った外見そのものということで、つまり生々しい感覚を失ってただ中身を失った自分を見ている光景が繰り返されている夢、そうした浮ついた感覚(と言って良いかは分かりませんが)の強迫的な反復として、この詩は語られているのかもしれないと思いました。
0あべこべサチ子さん、コメントありがとうございます! 返信が遅れてしまい、申し訳ありません。 山猫については、映画のタイトルからインスパイアされたのだと思います。山猫は眠らない、を眠った状態にすることによって、自分を狙ってきているスナイパー(妄想の中の敵)のことには気がついているものの、それが妄想であることに気がつけていない状態、というイメージだと思います。山猫は山猫であり、敵ではなく、ごく普通の山猫です。 迷宮のような木々の中のスーツのイメージは、幼いころから樹海の中で首吊り自殺をしたサラリーマンの恐ろしいイメージがあり、それを書いたのだと思います。 この詩の主人公はおそらく、迷彩服も着ていません。 何を着ているか?は、僕自身も意識して書きませんでしたが、「本人は周りに溶け込んで隠れている」という設定だったので、迷彩服すら妄想の産物なのでしょう。 確かに、死の色はもっと凝ればよかったと思いました。 赤、黒、灰色、白、それに似た比喩表現もありましたよね…。 とても貴重なご意見を聞けました^^。
0Rixiaさん、コメントありがとうございます! この詩が生まれたきっかけと言うか、ルールがきっちりと決められている理由は、僕の中でどの文章の長さで切ったら読みやすいか、また、どの文章の長さがバランスよく、効率よく表現できるかを実験しているからです。 今取り組んでいるのは、決められた文字数の中でさまざまな男たちの詩で、この詩もその中のひとつです。 生々しい感覚を失って…という感覚は、確かに強くあります。 僕は心が不安定になると、ものすごく自分を客観視してしまいます。身の回りのものがすべてくだらないような、そんな虚無感がするのです。 そこで、イメージの連続を述べ、「そこには何もないし、意味なんてないけどね」と笑っています。この笑いは、自己嫌悪や劣等感から来るものです。 そんな絶望の形を、表現してみたいな、とも思いました。 ただ、僕は思いついたまま、頭の中に浮かんだままを詩に映すことが多いので、基本的には肩の力を抜いて詩作を続けていけたらうれしいなと思っています。
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