リバー - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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リバー    

   さくばんはうまく眠れなかった。禁煙のせいかも知れない。CBDオイルのせいかも知れない。呼吸がうまくできなかった。かつてボブ・ディランが歌った。息の仕方を知っているだけ奇蹟だぜって。  悪夢を悪夢な現実で包んだような夜を越えようと。だって非常に暑さで寝苦しかったし、といってクーラーで除湿モードにすれば寒過ぎた。僕はついに煙草を吸った。僕の家はコンビニまで百メートルもない。コンビニではピカピカのパッケージに詰められて煙草が壁として陳列してある。依存症の僕が抗う術、ある?コイン五枚で支払った。秋めくというの、満天の星空の下、灰皿のもと、ラッキーストライクを思いっきり吸いこみ、吐いたその煙の天にのぼっていく感じに感興した。  家は二階建てで、多くの物が視神経にさわるような感じがした。暗闇と光と残光も。 ベッドに腰かけ、窓の方を向き、只、祈るような気持ちだった。カフェインレスのインスタントコーヒー粉をカップにぶちこんで、氷を放りこみ、水を流しこんでガチャガチャ鳴らした。飲み干して、この冴えなかった一日に、ショックを与えたかった。幽霊とか宇宙人とか妄想すべてぜんぶ、このコーヒーで風穴を開ければ眠りに近くなると考えた。  スマフォの設定すべてが面倒になって、ベッドの脇の卓に放った。呼吸がもう完全におかしくて、なぜか泣けてもくる。  涙は脳のバグしている部分、或いはウィルス、不穏なホルモン?ぜんぶ流しきってくれた、冷たい、そしてあたたかい不思議な涙だった。  ほんとうにダメな奴だな、俺は、というナイーブな自責から解き放たれ、なんだか楽しくなってきた。窓の前に立った。エモーショナルな光を灯して車たちが走ってゆく。  結局、浅い眠りになってしまった僕は、近く、外灯で照らされている橋から川を見にいった。思いの丈ぜんぶカタストロフする川をのぞみにいった。  私は人生という蔓に必死に掴まり耐えている孤独な旅人だ。その蔓も今、夜をシンボライズする黒い鼠が齧り切ろうとしている。  とっさ、そこらの草の二、三本を引き抜いて、こんなもんじゃないぞ、って念じつつ、川へ流した。草はすぐに流れ消えてしまった。  「どうして僕たちはこんなに傷ついているんだろうね?」いつかスルーした誰かの設問が頭の左から、右へ流れる。  僕は橋から家に戻り、ひかりさすベッドの上でギュッと両手を握り合わせて、ただ窓の外に視線を送った。  呼吸に意識を集中させて、そっと部屋のエアコンの設定をいじる。  重たいのは明日が来る、という事実だけれど、それではまるでうつ病を患っているひとと共感しあえる不安なのかな、なんて考えたりして・・・。  僕はノート・パソコンを起動させると、コフコフと咳をしつつも、言葉を書いてゆく。センテンスが下段になる度に、夜は純粋になるとすれば、それは僕の意識だ。  ここまで書いて、僕はついに、無になりきったのか、眠っていた。


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作品データ

コメント数 : 5
P V 数 : 744.0
お気に入り数: 0
投票数   : 2
ポイント数 : 0

作成日時 2024-08-12
コメント日時 2024-09-17
項目全期間(2025/04/17現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
可読性00
エンタメ00
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音韻00
構成00
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 エンタメ00
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閲覧指数:744.0
2025/04/17 01時40分14秒現在
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    作品に書かれた推薦文

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コメント数(5)
田中恭平 new
田中恭平 new
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(2024-08-12)

主語、失敗している。。。すいません

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おまるたろう
おまるたろう
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(2024-08-12)

>主語、失敗している。。。すいません いいじゃないのよ細かいことは。 >だって非常に暑さで寝苦しかったし、といってクーラーで... >吐いたその煙の天にのぼっていく感じに感興した >とっさ、そこらの草の二、三本を引き抜いて 「といってクーラーで」「感じに感興した」「とっさ、」とか、 定型文ではない部分に、なんつーか、「勝負」があるなと感じました。 オーラルヒストリーみたいな。 限りなくエモな。限りなくはてなの増田的な。

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吸収
吸収
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(2024-08-12)

LIVE感 ボールは常に投げられているんだけどファールが多くて 粘る打者でヤジも大きくなるタイプ そんな印象だったが この作品はボールを芯で捉えていて 目線で追う必要が無いくらい。 豪快にスタンドに飛び込んでいく打球 理論で打つ嫌いがあって 状況から固める感じだったけど 今回は本能で振り抜いた感じがあったな 打つべき人がやっと打ったみたいな この感触を記憶してスタイルとしてくれたらと思いました やっぱり打つ人が期待されて、そして応えないと。作者の人生が噛み合ってきている気がしたな

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おまるたろう
おまるたろう
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(2024-08-13)

再訪して、もう一度読んでみたんですけど、すごい傑作だと思いました。今月では、いちばんいい。すみませんそれだけです。

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田中恭平 new
田中恭平 new
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(2024-09-17)

自分なりに結局、いろいろ考えてみたけれど、なんでこんな作品を書けたのか、自分でもわからなかった。

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投稿作品数: 1