不眠症 - B-REVIEW
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ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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不眠症    

 冷たい夜だった。天井近くに小さな窓があった。そこから射した光が朝を告げた。周囲の寝息は途絶えなかった。僕も寝たかった。寝息がうるさかった。においがあった。決していいにおいではなかった。においと感触はどこか似ていた。音だけはちがった。僕も息をしていた。僕の体の下に汗ばんだ体の感触があった。炙るような酸っぱいにおいがしていた。体はくっきり寝息をきざんでいた。その下にも、体があった。たくさんの寝音が紛れて、誰の寝息かわからなかった。感触もわからなかった。においが共同体をつくっていた。感触に思えてきた。僕の想像が、一層ずつ深みに進んでいった。においは強まって、光はなくなった。腐敗が進んでいた。生きている人は一人もいなかった。底はまだ遠かった。皮膚と肝臓は液体だった。とてものろく、沼に似ていた。想像が沈むにも、時間がかかった。寝息は遠くで、かすかにふるえた。時間が進んで、音は消えた。感触とにおいだけになった。ふたつはひとつに収斂した。ながい間なにもかわらなかった。やわらかいのと、かたいのが繰り返される、ひとつの感覚だった。やわらかい、かたい、言葉がたしかではなかった。0と1で示すのがよかった。0と1がでたらめに生成され、羅列ができてきた。てんぽが心地よくなっていた。子守唄のように聞こえた。てんぽという言葉が正しいのかわからなかった。0と1の分布に過ぎなかった。情報だった。音でも、感触でも、においでも、光でもあった。すべての感覚だった。0と1はとめどなく生成された。真っ暗な映像だった。強いにおいを感じた。音はうなりに似ていた。風がなく、野外ではなかった。窓がないのか、夜なのか、わらなかった。時間が経つと、それは夜だとわかった。冷たい夜だった。天井近くに小さな窓があった。そこから射した光が朝を告げた。


不眠症 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 4
P V 数 : 678.9
お気に入り数: 1
投票数   : 3
ポイント数 : 0

作成日時 2024-08-10
コメント日時 2024-08-23
#現代詩
項目全期間(2025/04/15現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
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閲覧指数:678.9
2025/04/15 01時24分59秒現在
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    作品に書かれた推薦文

不眠症 コメントセクション

コメント数(4)
さか たけお
さか たけお
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(2024-08-10)

訂正* 夜なのか、わらなかった→ 夜なのか、わからなかった

0
天才詩人2
天才詩人2
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(2024-08-12)

わーすごいクリエイティブライティングですね まず文章が上手いなと思って読み始めたら いっきに引き込まれてしまった リズムももちろん良いんですが 詩的な言葉にしか通じない裏道で 世界の秘密を教えてもらったような 形而上のアートというか とにかくかっこいいですね すばらです

1
黒髪
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(2024-08-12)

不眠症ってつらいけど、こんな感じですよね。丁寧な描写の詩。病者と健康、朝と夜の境。

1
熊倉ミハイ
熊倉ミハイ
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(2024-08-23)

面白い詩です。 私もよく、夜眠れない日があるのですが、何か考え事が次々と浮かんできて、それについて脳がずっと話しているんですよね。1時間でも2時間でも。 数を数えるのって、そういう思考を乗せてしまう「言葉」から離れた無機質な記号だから、眠りに行きやすいのかなと気づかされました。 タイトルは「不眠症」ですが、詩中主体は最後、五感がまた研ぎ澄まされて夢の中に誘われたのかなと思いましたが、「真っ暗な映像」なんですよね。そしてあっという間に朝。おそらく夢も見れず、眠れたのも一瞬のような感覚。その気持ち悪い感覚が表現されている好きな終わり方でした。 各文が短文なのも良いです。

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