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世間
今となってはなぜ守衛室にいたのか定かには思い出せない。工場の守衛だった恰幅のよい年配のおじさんが、正門を出入りする人や車両をよそめに僕たちアルバイトの三人に聞かせた。とつとつと、しかしはっきりとした口ぶりで言い放った。人は皆自分のことしか考えてない、あてにならんもの、だから、あんたらも大変かもしれんけれども、自分のことは自分でやっていくしかない、誰もあてにできんよ、と。突然だったからか、冷徹な言葉一つ一つにもっともらしく頷きながら、僕らはただただ、ぱりぱりと剥がれ落ちる室内の、割れんばかりにはりつめたまぎれもない空気に黙りこんだ。 どれほど年月が過ぎたのか、僕は、あれこれしながらどうにか生きてきた。おじさんが放った言葉は、正しいと思う、正しくない、とも。そしてこれまで、あのような事を、言葉を、聞くことはなく、話すことも。 今でもおじさんは狭い守衛室のなかで人や車両をチェックしているだろうか。今朝はとてもとても寒い冬の朝だ。
世間 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 474.4
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2024-08-01
コメント日時 2024-08-18
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
面白かったです。表現が丁寧で、読ませる力がありました。 寡黙な男ってかっこいいですよね。何を考えているかは分からないのに、信念があるように思える。だからこそ、時々口にする言葉が、深く念頭に刻まれる。
1さか たけお さん 名前も素性もよく知らない一人の大人の男が言った事などが引っかかり、書き留めてみた次第です。 大人となり、世間を生きながら、自分が同じようなシチュエーションで同様のことを言えるか、言い切れるか。わかりませんが、意味や語り口は淡々とした冷徹そのものでしたが。 ありがとうございました。
0暗い。それは悪い意味でもいい意味でもなくて。社会の、世の中の片隅に生きる人々が淡々と描かれてるせいだろう。なんだか理由はよく分からないが、モノホン感のある作品。僕とは嗜好が違うので書かないし書けない。
1小説の冒頭と結末をくっつけたような感じがありました。見た目には、途中がスパッと切り取られているように見えるので、書かれた文章以上のことを書くことは出来ませんが、そういった可能性を感じさせる作品であったと思いました。
1stereotype2085 さん 私もこれは暗いと思います。暗いままに明けるか明けるのかもわからない冬の心情から書かれたような。あまりおすすめはしないです。 ありがとうございました。
01.5A さん 前と後。なるほど。 このままでは不親切なものでもありあるべきかもしれませんし、あるならばどのようなものを目指して作り込むか。読み手にゆだねてしまうのが良いかなど。作品タイトルと本文との違和感もまた悩ましいですかね。 ありがとうございました。
1どれほど年月が過ぎたのか、 みたいなフレーズはあかんって気付くところからだなあ
1完備 さん ? あかんの? そんなん考えてないわ 少し考えてみるけど。
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