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「うつくしい」
きみはよく「うつくしい」と言っていた きみの目に映る全てが 「うつくしい」であったかのように いつからだろう そんなきみの口癖に どこか、うとましさを感じていた僕が きみの言葉を辿っていくようになったのは きみが嗅いだのと同じ風の匂いを鼻孔に取り込んだ 渓谷の石を伝わってゆく流れに足を浸した その川辺の煌きの眩しさゆえに目を覆った 雲のゆらめく影が落ちる午後の草の痛みに背中を任せた 遠くの低い山並みの静けさの、その静けさに耳を葬った 街のおおきな通りの木陰に腰をおろした なにげない挨拶を行き交いながら交わした 都市の路地裏の奥行きの、その奥行きの奥の花を愛でた 雨の日々、家々の屋根の濡れた様をじっと見つめた 晩秋の古寺のイチョウの葉をつまんだ 冬前の曇り空で赤く輝く南天の実を頬張った 世界はきみの言ったとおり 「うつくしい」 過ぎ行く世界の中に きみがいた季節を 追いかけるたびに 「うつくしい」、その言葉の、その存在の そう、それが存在することがゆえの「うつくしい」 その言葉の精華を呑み込んだ ランタンの灯 揺らめく夜に かつてのきみのように あっさりと 本当にあっさりと言ってみせる 「うつくしい」 そして、またきみのいた日々に発つ
「うつくしい」 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1010.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2024-07-07
コメント日時 2024-07-17
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
恋人から良い感化を受ける、そんなすがしさが閉じ込められて好印象でした。
1コメントありがとうございます! 実際、この詩も感化されて書いたからね……。
1>雨の日々、家々の屋根の濡れた様をじっと見つめた 濡れた屋根が美しいという発想はなかったので、とても新鮮でした。 でも、そう言われてみると美しく思えてくるから不思議です(笑) 遠いところに行ってしまったことで、逆にその人の存在感を感じることがあるとはよく言いますが、彼女の言葉にまずフォーカスして、そこから彼女という存在へと到るという流れも新鮮でした。
1コメントありがとうございます! 言葉はずっと痕として残りますからね。
1うん、だから「きみ」ってだれ? みなさん安易に「きみ」「キミ」って書くけど いったいだれなの? いや、真剣に考えて欲しいな。 だれかが「キミ」と書く。あなたも「きみ」と書く。 このあいだに差異はないようにみえる。 どうか「きみ」ってだれか教えてほしい。
0考える必要あるのだろうか……? だって、僕にとってはあくまで創作における技法くらいなもんだし……。 それが誰かなんて大した問題じゃないんだ。 それこそ僕は読者の判断に委ねるね。「適当に考えといて!」って。
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