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夜の掻き手
急をしらせる電話が ぷつりときれました。 丹頂の糜爛した あかさのように せんめいに 籠からとびでた セキセイインコが 屋根のむこうに 消えたように みえないところで 血をながしている わたしの手のひらに もどるには さがさなければなりません。 折れた翼を 冷たい片脚を たとえば あの谷は 崖の下にあり 水墨の老人に 怨めしく 見あげられてあり そこには ひとつの孤独が落ちており そこには ひとつの静寂が生きており 烈しく雪崩れる表情でありました。 まてどくらせど くるのは「 無人の行列 」 それは みずみずしい夜の掻き手であります。 墨と水の競演が 流血願望の砦となるように 白絨毯に敷きつめられた黴が 群生し 生命欲に充ちているあたり 似合いの文鳥が 白と黒の声で ちちち、と鳴いたのです。 うつくしきかな 冬の朧月 桃色の嘴 月の光あびて 乞食は 岩虫になあれ。 海の光あびて 岩虫は 少女になあれ。 陽の光あびて 少女は 鳥になれ そして翔べ 夜の掻き手は 跫音ごと拭い去るのであります。 人筆に 無風の魂を逆さまに浸し 優しい聲が奈落をみるように ありとあらゆる涙は 少女の足下で そのなかで合掌するのであります。
夜の掻き手 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 780.2
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-02-03
コメント日時 2018-02-08
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
訃報。水墨の濃淡。丹頂と、セキセインコと、文鳥と、桃色の嘴の彩り。乞食から転じた少女の飛翔。掻き手と書き手の人筆に跫音は不似合いなのかしら、など、取り止めなく考えて、考えるのが心地いい作品でした。水墨画の黒白の中に、悲しい作品なのかもしれないけど、鮮やかなイメージが灯され、それを頼りに桟道を進むような足元の覚束なさも楽しめました。
0墨と水の競演 白絨毯に敷きつめられた黴 のような、清濁入り交じった表現がとても映像的で、尚且つ読み手(或は書き手も?)現実的に訃を刻むような、そんな感じが好きです。
0miyastorageさま 考えるのが心地よかったと仰っていただき、とてもうれしいです。 書く、掻く、どちらも対象を傷つけて痕跡を残すようなところがありますね。自らを傷ける少女の傍で吐くべき言葉はなくて。 自分の言葉って何だろうと思ってしまいます。 お読みいただき、コメントもいただきありがとうございました。 北村灰色さま 表現が映像的、と言っていただき、とてもうれしいです。 哀しみといっしょに、いろいろな映像が湧き出たものを綴った事が伝わっていましたら、よかったなあと思います。 北村さん、水墨画お好きですか? 油絵のきらきらした感じも素敵ですけど、水墨画の魂抜かれる感じも好きです。 お読みいただきコメントいただきまして、ありがとうございました!
0水墨画は詳しくないですが、非常に色彩と像に溢れた視覚と空想を刺激される作品だと感じました。
0KURA_HITOさま 視覚と空想を刺激されたと仰っていただき、安心いたしました。 暗い影が浮き彫りになってしまって読み難いと申し訳ないなと思っていました。 すこし時代がかった口調もありますが、おゆるしください。 お読みいただき、コメントもほんとうにありがとうございました。
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