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月の頃
海が 遠い (君はいつも僕より早くに寝て、僕より遅く起きた。それから何も言わずに出て行く。カーテンが揺れるたびに、光を床にばらまいている。僕はただ、君に、なぜ「愛してる」なんて嘘をつくのかの訳を聞かれたくなくて、いつも寝たふりをしている。気が付かないふりをしている。窓辺で煙草を吸う癖がある。僕が踊ると嬉しそうに笑う。それだけで良かったし、他に何も要らないのに、と思う。) (真夜中は僕の楽園だった。地獄も天国も主観の問題だ。そして君が一緒にいれば僕にとってそこは生まれ故郷みたいに自由になれる場所になった。生まれ故郷が、何よりも一番嫌いな人って、いるけど。僕はそこであった間違いを許せないと思ったことがない。僕は誰よりも強くて、弱くて、意気地なしで、だからこそ誠実であらなければならなかった。皮肉は忘れた。どんなに言いたくても、忘れた。) (君は与えられることを知らなかったので、僕から与えられるもの全ては神様の仕業なのだと真剣に信じていた。ぬかるみを穴の開いた靴で進み、破れた靴下を履き、陽の光に弱い体を前へ前へと急いで走り回った日々が、僕の努力ではないと言い切ってしまった。絶望はある地点を通過すると笑いに変わる。僕はうんざりして言った。それは僕の愛だ。なぜ君は神になれると本気で思っているんだ。) (君は僕に特に何も求めない。生理の日にナプキンを忘れた時だけだ。でもそれは上っ面の話で、いつだって僕が僕の持てる全てで君を愛することを望んでいた。愛されている自分にだけ価値があった。だから傍に居るといつも苦痛に満ちた顔で、傷付いたように俯き、横暴に服従させようと必死だった。関西の人は鶏肉をかしわと呼ぶ。どうでもいいだろうが本当のことだ。) (雑貨屋で蝶のブローチを買った時、アクセサリー屋で十字架がモチーフのネックレスを買った時、古着屋でどこにも着ていけないような真っ黄色のトレーナーを買った時、店員がすごく嬉しそうな目で笑っていた。接客以上の心からの笑顔だった。それは多分、隣に君がいたせいなのだろう。そして多分、僕も彼らみたいに心から笑っていたのだろう。) 君に 会いたい
月の頃 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 974.8
お気に入り数: 1
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2024-06-13
コメント日時 2024-06-25
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
どことなく綺麗な感じのある詩だと思いました。
0いつもそうだという訳じゃないんですが、 無私の境地に至るたびに綺麗と言われているような気がします。 誰かを好きになると人は綺麗になる。
0括弧っていいですね、本当のことを小声で呟いている感じがします。括弧の中の部分、光に溢れてて暖かくて心から嬉しくなりました。 読み終わって思いましたけど、その関係ってなんだったんだろうなぁって。まあでもありますね、そういう、恋愛ではないかもしれないけど、すごく居心地がいいと感じる関係、、切ないですね。
0当時は結構見掛けました、友達同士で一緒に行動する女の子。 彼らが成長して今どうなっているのか、生憎私には分かりません。 楽しかったですね。切ないのは、きっと過去のことだからです。
0ほとんどクラウン?みたいな「僕」と、無限に距離のある「君」と、で、真面目さとユーモアが交互にやってくる。凝ってますね。「僕」の見解が述べられているが、その肝心の「僕」、他のものごとに対する時と比べると、彼は自分自身には、あまり頓着してない風で、じつにあいまいな(あいまいっていい言葉ですね)もんやなああ。短篇小説に向いている文体です。
0初夏の風を感じるのは、 昨日無理して買った白い開襟シャツを着ているからで、 会社で特になんのいわれもなく怨みを買ってしまった人達のことを考えるせいで、 久し振りに会う家族と熱心に話をした後の心地好い疲れからで。 その、気持ち良いなぁ、には、今の人生のすべてが含まれるのです。 僕のこのあいまいさは、そういう感じなのかなと思いました。有難うございます。
1あまり確信は持てないですが、 詩の中の 「君は僕に特に何も求めない。生理の日にナプキンを忘れた時だけだ。」 と、コメントの 「当時は結構見掛けました、友達同士で一緒に行動する女の子。」 というところから、皆さん言及されてないんで自明のことなのかな? とか思ったんですが、女性どうしの同性愛についてでしょうか? あまり、そこ以外に匂わせる表現がなかったので、普遍的な愛についての詩だと読めるようにしているのかもしれません。 「そして君が一緒にいれば僕にとってそこは生まれ故郷みたいに自由になれる場所になった。」 この部分ですが、映画の「ブロークバックマウンテン」を思い出しました。愛のかたちというのは、ただ単に子どもを作るだけじゃなくて、相手と「故郷に似た場所」を作ることもあります。まだまだ愛については勉強中ですが、羊飼いさんはより深く向き合っているように思えます。 構成が気になりました。括弧内の最後の方、しなければならなかった、本当のことだ、必死、というような終わり方と、一連目(括弧の)と最後の連の終わり方は「思う」という曖昧な表現になる。この違いはなんだろう、と思いました。 共通点は「笑い」でしょうか。「僕」の踊りに、「君」が笑ってさえいればいいことと、「僕」も「彼ら」みたいに笑えていたということ。手がかりに、「絶望はある地点を通過すると笑いに変わる。」という表現が中盤にある。「僕」は、「笑い」というのが純粋な感情じゃないと悟っている存在で、だからこそ「笑い」を信頼できない。 「君」が本当に心から笑えているのか。「僕」も「彼ら」みたいに笑えているのか。後者には同性愛の苦悩(?と言っていいものか)、屈折も見られるようで、「僕」と「彼ら」の間での「分かり合えない、わだかまり」があるように思えます。 会っているけれど、本当の「君に 会いたい」という想いで締められる、そんな詩だと受け取りました。
0あまりにも大きな穴を見ると、誰もそれを穴だと思わない、 ということなのでしょう。(笑) 決まった相手が見付かるまで、お互いに約束を裏切らない契約を結んだ関係の子。 そういう人を指す言葉を知りません。 恋人ですけど、いつかは違う人と結婚するという前提の付き合いです。 「同性愛」は誠実な結婚に至ることもありますから、違いますね。 僕には普遍の愛が必要だったんですけど、 彼女の方は結婚した後もその自己愛に僕が付き合ってくれるもの、と誤解していて。 自己愛は、人を騙す、偽る、裏切る行為でしかありません。 彼女たちが自分以外のものを愛せないこと、 普遍の愛を求める僕とは二度と会えないこと、なんかを書いたつもりです。 僕らは、違う道を選んだ。会えないから会いたいのです。 僕も、他人を我が身のように愛することが出来る人間かどうかは分かりません。 これもひとつの過程で、ひとつの恋の終わりです。
1「決まった相手が見付かるまで、お互いに約束を裏切らない契約を結んだ関係の子。 そういう人を指す言葉を知りません。 恋人ですけど、いつかは違う人と結婚するという前提の付き合いです。 「同性愛」は誠実な結婚に至ることもありますから、違いますね。」 ここの言葉の重み、凄まじいですね。久し振りにプライベートな私が揺さぶられています。想像以上です。その鋭い眼を一つの武器として持って、このままも突き抜けていって欲しいです。現代人に必要な作品だと思います。応援しております。
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