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遺された町
病院で千羽鶴を頂いたがこのような物を 貰ってもわたしにはどうする当てもない 明日の飯代にもならないのだ 何処かで汽笛が鳴った 耳鳴りががやり出す くもの群れからは雪がこぼれ落ちてきて 雨ざらしの洗濯物は、はためくばかりである 鶴を一羽置いて、わたしは歩く 路上の薄雪には無数の足跡が往き交い 車は見えずバスストップのベンチは空いている 十字路には猫の鳴き声が残され コンビニには清潔な明かりだけ 鶴を一羽置いて、わたしは歩く 商店のシャッターは落書きだらけ 誰も見ない掲示板に貼られた沢山のポスター いつかタバコ屋だった空き地は均され 誰も潜める余地は無くなっていた わたしは歩く 河川敷に降りて行く 彼岸は遠くまだ遠く どう渡ればよいのかと途方に暮れる 橋の下にドラム缶はぽつんと座り込み 暖かな火を抱いてちろちろと舌を出す 千羽鶴を投げ込むと 灰が舞って風に巻き上げられた 火はわたしの視線に燃え移り 町は静かに焼却されて 耳鳴りも尽きていく 甘やかな匂いと騒めき 突き出されるカップ酒と手 雪は唸り声をあげ歌っている
遺された町 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 939.3
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-02-02
コメント日時 2018-02-12
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
花緒さま コメントありがとうございます。 わかりやすく纏め過ぎた感がありましたね。 確かに一般的なイメージとしては出られないように思われるかと思います。長期療養にもケースがあるので一概にはいえませんが、可能な個人的ケースから詩作しました。 とはいえ、共感しにくい書き方であることもご指摘の通りだと思います。 その点については今後の課題にさせていただきます。
0KURA_HITOさま 最初は、退院はしたものの病は完治せず……といった状況を思い浮かべました。 しかし、タイトルが『遺された町』とありますので、もしかすると主人公は、もうこの世ではないところから町を見ているのかな、とも思えました。「地獄の沙汰も金次第」という言葉も思い浮かべたりして。 無常感が全体に漂っていて、好きな作品です。
0一連目がとても直叙的で、入っていくのに抵抗感を覚えます。 比較して二連目が印象的な立ち上がりなので、ここから始めてみるのも一案かもしれないと思いました。 飯代の足しにもならない、千羽鶴の束から一羽をちぎり取って、見出されない「彼岸」への道のりを辿りながら、街中をあてもなく彷徨う。ヘンゼルとグレーテルが森の中を迷いながら、目印となるパンをちぎって置いて行ったような・・・そんな「目印」としての鶴。
0くつずり ゆう様 コメントありがとうございます。全体的に淡々とした語りを心がけ彼岸にいるような錯覚や雰囲気を醸し出したかったで、感想嬉しく思います。 書き出しに関しては敢えて曖昧に、解釈を委ねるように書きました。
0まりも様 コメントありがとうございます。非常に鋭いご指摘にギクッとなりました。実は一連目は後から付け足した もので、ご指摘の箇所から詩は始まったのです。確かに全体から見ると浮いているかもしれません。鶴はまさしく象徴ですが解釈は委ねています。ヘンゼルとグレーテルの例えは面白いですね。新たな詩が書けそうです。
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