殉職と贖罪 - B-REVIEW
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殉職と贖罪    

さて、今日はどんな迷える子羊が私を訪れるかな。 神父様。 私の罪をお聞きください。 私は大罪を犯してしまったのです。 しかし、この話をする前にひとつ、約束をしてください。 口外されてしまうと文字通り部外者によって私の首が吹っ飛んでしまいますんでね。 いいですか、では、お話しますね。 私には一人の娘がいました。 それはもう目に入れてもいたくないような程かわいく 愛情を注いで育ててきたつもりでした。 親の立場からすると、子はいくつになっても子なのです。 親バカではあると思いますがそれほど大事に育ててきたのです。 何があっても娘が第一優先でした。 しかし毒親というものにはなりたくない。 進路は彼女自身の判断に任せ、私は応援することにしました。 そんな娘が私はK大学の法学部に行きたいと言い出しました。 ええ、K大学というのは神父様もご存じの通りこの国の中で1、2を争うほど難しい超難関国立大学です。 厳しい受験生活になると思うが、私は彼女を応援する。 結果がどうなろうと、娘は全力で立ち受かったのだからいい経験にもなるし私が口出しをする権利もない。 そう考え私はサポートに屈しました。 厳しい受験勉強。猛勉強の末、彼女の努力が実を結び見事に現役合格を果たしました。 私は娘がここまで育ったことに感動しました。 私が育て上げたんだ、という気持ちではなく、娘自身が自らやり遂げて成長し立派になったんだなと感じたからです。 念願の大学生活も年月を経て、娘は大学3年生になりました。 このころになると恋愛ももちろん経験するでしょう。 当然、娘も結婚を前提に交際している恋人を家に連れてきました。 恋人は同じ大学、同じ学年の医学部に所属する好青年でした。 いえ、決して医学部の人間だから、という理由で好青年なのではなく、娘が選んできたこと、そして私に対する態度などで判断したものですぞ。 話の順序が前に戻りますが、私は以前、妻に浮気をされ逃げられました。 娘は男手一つで育ててきました。 愛する娘にはそんな相手と結婚しないでほしい、そう思うのは当然ではないでしょうか? 娘の恋人はそのようなことはしないと思いました。 そう感じてしまったのでした。すべてを神にゆだねてしまったのでした。 でも、それが間違いだと気づいたのは、もう取り返しのつかなくなった時でした。 結婚したのち、婿は、浮気をしそれを娘に問い詰められると逆上し、娘を殺しました。 私は、、、、どうしたらよかったのでしょう。 気が付くと私の足元には婿と思われる男の骸が転がっていました。 それが婿だと気づくのには時間がかかりました。 それほどまでに私は怒り、哀しみを込めた刃を婿の顔面に躊躇なく何度も突き立てたのでした。 いえ、神父様、私はあなたを殺しに来たのではないですよ。 確かに私は殺人犯だ。だが、それはあなたも同じ結末をたどるでしょう。 神父様。あなたは何食わぬ顔でそこに座って私の罪を聞いておられます。 あなたは事件当時こう言いました。 犯人を見つけたら私が息子の仇をとる、と。 私は謝罪がしたくてたまりませんでした。 親の気持ちは痛いほどわかってしまうのです。 さあ、神父様。罪を断罪していただきたい。 私は〇〇番地〇〇号室に住んでいる。 いつでもお迎えに来ていただきたい。 娘は認めないだろう。法学部で裁判官を志していた彼女は 私や神父様が法以外の力で解決することを認めないだろう。 だが、我々悪魔には手を血に染めるしか方法は残ってないのだ。 それが私にとってできる唯一の贖罪なのだ。 さあ、神父様。いつでも私はあなたと、あなたによってもたらされるお迎えをお待ちしている。 私から逃げられるとおもったら、それは大間違いだ。 さあ、いつでも迎えに来るがよい。 男はそう言ってにやりと笑うと帰っていった。 さて、どうしたものか。 神父というめんどくさい職に就いてしまった以上私がすべき行動は決まっている。 私は私の息子と運命を共にするだろう。 私ら親子は地獄で再会するとしよう。 そのときまで待っていてくれ。息子よ。 私はそう決心しあの父親が娘の元へ行けるよう神に神父としての最後の祈りをささげた。 そして指定された住所へと歩き始めた。


殉職と贖罪 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 1
P V 数 : 290.4
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2024-05-10
コメント日時 2024-05-10
#現代詩
項目全期間(2025/04/15現在)投稿後10日間
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閲覧指数:290.4
2025/04/15 09時05分54秒現在
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    作品に書かれた推薦文

殉職と贖罪 コメントセクション

コメント数(1)
イチノセ
イチノセ
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(2024-05-10)

補足です。 殉職とは、職務を全うし死ぬことです。 神父は、男の愛娘を殺した婿の父親でした。 婿が浮気をし逆上して結婚相手を殺してしまったことを知ってしまった神父は 今まで全貌を知らなかった自分こそが罪を背負っていると感じました。 そして自分の発言には責任をとろうと考え、息子の仇を取るべく男を殺害しに行きます。 そして、男を殺害したのち贖罪として自ら命を絶つ、というお話です。 私が今作を通して最も伝えたかったことは2つ。 人間の愛は人をも殺す刃物になりえる 無知こそが一番の罪である ということでした。

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