ほら、見てごらん
指先が少し光っているよ
表情のない肖像画が呟いた
ベランダに出て
夜空に透かしてみたけれど
少しも光っちゃいない
ん… 指が石化している
でもキーボードを打つには問題ない
肖像画はまた呟いた
眼が少し光っているよ
洗面所の照明を消して
鏡を見たけれど
少しも光を発しちゃいない
ん… 見るものすべてが輝いている
でもちっとも眩しくはない
肖像画がまた呟いた
耳が光っているよ
部屋のテレビを消して
耳をそばだてていても
何も聴こえなかった
ん… 深海からのアダージョが聴こえる
でも少しも悲しくはない
肖像画がまた呟いた
全身が光っているよ
部屋の灯を消して
姿見の鏡の前に立つと
ぼくは透明な結晶になっていた
肖像画に聞いてみた
彼は無表情のままで
何も語らなかった
やがて何も不自由はなくなり
ぼくは空間に溶けていった
作品データ
コメント数 : 9
P V 数 : 582.3
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2024-03-01
コメント日時 2024-03-05
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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閲覧指数:582.3
2024/11/21 23時28分28秒現在
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歳がバレちゃいますが、 冒頭の――指先が少し光っているよ――のところで 映画「ET」を思い浮かべました そして眼→耳→全身へと まるで読者を弄ぶかのように 次つぎと光る場所が変わり、 やがて「ぼく」は透明な結晶になってしまう そこから先は、 肖像画は無表情のまま何も語らない ラストでは、 ◆引用:「やがて何も不自由はなくなり」 ●引用:「ぼくは空間に溶けていった」 こうして作中の「ぼく」だけではなく 読者にも不思議な解放感を与える 意象とメタファー、 矛盾と対比、 静けさと孤独、 結びつきと解放。 なんとなくですが、 「表情のない肖像画」は、 レタスが大好きな人の顔のようにも思えました
1コメントを頂き有難うございます。 あぁ… 早速解剖されてしまいましたね(^^; atsuchan69様には敵いません。
0空間に溶けていくのはなぜか、気になりました。
1仏教の色即是空、空即是色という言葉を思い浮かべました。 哲学的なようにも読める素敵な作品ですね。
1これは仏教でいうところの 諸行無常 是生滅法 生滅滅已 寂滅為楽を イメージしました。輪廻の果てに溶けて無くなる快感或いは解脱とでも言えるでしょうか…
0そうですね。そうとも言えますね。無即有 無即有 在るようで無い 無いようで在る メビウスの輪の中に入ってしまう事を意識しました。
0幻想的な情景を清冽な文章で描いていて、すごく良いと思いました!
1誤記がありました。 無即有 有即無 でした。 大変申し訳ございません。
1テイムラー隆一さん、ご返事がかなり遅くなり申し訳ありませんでした。 拙作を評価して頂き有難うございます。嬉しく思います。
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