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光/ひかり
楕円形だとだらしなく見える、とパンを四角にくり抜いて、ぼんやりとした光の中から暖かい色のジャムを次々に取り出していく。マーマレード、とラベルがつくであろう色違いが、冷たい床についたわたしの両膝の横にいくつも連なっていくうちに、夜も端の方はいつのまにかちいさく点滅を始めている。昨日晩にたべた葡萄の表面に吹いた粉と同じに(ちょうど同じならいいのだけれど、)少し指にのこるものが(挨拶をするように)わたしの両膝に触れたとき、連なったマーマレードたちが橙色のグラデーションを作って、朝になる。床に並んだこのいくつもの橙色は、おだやかに発光して、(ほんとうの光のいちぶであったくせに)、かかげてみれば、にせものみたいにぴかぴかしている。この全てがあのゆたかな光の内からわたしが見出し、取り上げたものなのか混乱するくらいに、似た色ばかりで、ふらふらと立ち上がったわたしの足元は、ぴかぴかのにせものがつくる朝とそれが発するひかり、で埋め尽くされている。
光/ひかり ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1435.1
お気に入り数: 3
投票数 : 6
ポイント数 : 1
作成日時 2024-01-26
コメント日時 2024-02-11
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 1 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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技巧 | 1 | 1 |
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総合 | 1 | 1 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
暗喩表現が光っている詩だと思いました。単なる、パンにジャムを塗る朝という日常ではない、何か気持ちの悪さが含まれた詩で、私はとても好みです。 この詩のマーマレードは、食べるためのものとしては現れていない。それは、「わたし」のわずかなミスでパンから溢れ落ちた瞬間から、その発光する体の真価に目覚めたような存在。ただ、「わたし」の目からはそれは偽物の光に見える。朝陽の代わりになんてなれやしない、と。実存と本質の問題がここには隠れていると思います。物質と生物の在り方が逆転しているようです。 その逆転をまざまざと見せられる「わたし」。そのマーマレードの光を取り出したのも「わたし」。それらに埋め尽くされた「わたし」を、また光らせるように取り出してくれる人は居るだろうか、と切なさが香ってくるこの構成、素晴らしいです。 良い詩をありがとうございます。
0熊倉ミハイさん、コメントありがとうございます。 >何か気持ちの悪さが含まれた詩で 異様な雰囲気、光景を描きたかったのでそういってもらえて嬉しいです。見えているものと見られているものが=ではない状態について書いたので、そこにも実存と本質の問題というくだりで(おそらく)触れていただいていることもまたありがたいです。こちらはただただ異様な光景とそれを外部から見たときに、異様さのなかで何か目を奪われるような要素がないか、という点のみで書いたので、 > また光らせるように取り出してくれる人は居るだろうか、と切なさが香ってくるこの構成 と捉えて下さったのは、幸運なことでした。奥行きや広がりのある物を書けるように励みます。コメントありがとうございました!
1感覚的あるいは視覚的に展開された文章の滑らかさと想造性が、読んでいてとても心地良く感じました。ぼんやりとした光の中から暖かい色のジャムを次々に取り出していく、という反復の動作があるのはこの一文だけなのですが、気が付くと足の踏み場もないくらいの“ひかり”で埋め尽くされている、といった光景に帰着させるための過程が、決して説明的過ぎてはいないことが良かったと思います。一点ぴんとこなかったのが、光とひかりの関係でした。作者の方の内では、“光”と“ひかり”が別々として存在をしているのか、例えば“光”が発するのは、光ではなくて、“ひかり”みたいに。もしくは純粋に“光”の偽物(一部)として“ひかり”みたいな。きっと大切な事柄のような気がしますが、そのあたりが捉えにくく思いました。筆力のある書き手の方だと思いますので、願わくばもっと連を連ねていって、読み手がその想造性に蹴り飛ばされて頭がふらふらになるような詩を、いつか読んでみたいと思いました。
0現代詩的なる、散文的叙述が際立っております。 マーマレード=加工されたにせものの光、が「朝」を造り、「ひかり」を発する。 詩的記法に拠ってしか記述し得ない事象関係の顛倒が、ひとつの美的迫真を伴っており、実に見事、と感じ入りました次第でございます。 読み遂せたか如何か、は分りませんが、自身はその様に感受を致しました次第でございます。
0現代詩的なる、散文的叙述が際立っております。 マーマレード=加工されたにせものの光、が「朝」を造り、「ひかり」を発する。 詩的記法に拠ってしか記述し得ない事象関係の顛倒が、ひとつの美的迫真を伴っており、実に見事、と感じ入りました次第でございます。 読み遂せたか如何か、は分りませんが、自身はその様に感受を致しました次第でございます。
0二重投稿と為ってしまいまして失礼を致しました。 点数を加えて終いましたので、 加点2点分の1点を、集計の際は差し引いて下さりますと助かります(運営の皆様へ)。
0>一点ぴんとこなかったのが、光とひかりの関係でした。作者の方の内では、“光”と“ひかり”が別々として存在をしているのか、例えば“光”が発するのは、光ではなくて、“ひかり”みたいに。もしくは純粋に“光”の偽物(一部)として“ひかり”みたいな。きっと大切な事柄のような気がしますが、そのあたりが捉えにくく思いました。 1.5Aさん、コメントありがとうございます。投稿して、こちらのコメントを拝見して始めて光とひかりの区別の弱さに気づきました。これだけでも投稿した甲斐がありました。まだ長い物が書けないので、徐々に長さと書いた物の密度や必然性を伸ばして増やしていけるように頑張ります!ありがとうございました。
2>詩的記法に拠ってしか記述し得ない事象関係の顛倒が、ひとつの美的迫真を伴っており、 鷹枕可さん、コメントありがとうございます。引用させて頂いた部分は、私が書きたかったこととも重なっていると思いますので、なお嬉しいです。コメントありがとうございました!
2ハツさんは結局文体が良いんだよね だから作品も良くなっちゃう その事が長い目で見てハツさんの為になっているかどうかは不安ではある 顔が良くて相手に困らないみたいな感じで、磨ける部分が その為に磨かないので。 (磨く必要性を感じなくなるので) 完成度は高いが、これで完成形だと物足りなさも感じるな どうすれば良いのかと言うアドバイスはちょっと浮かばないけど やはり小説とかにシフトする方が良い気がする 文体もより活かせると思います
0吸収さん、こんにちは。コメントありがとうございます。 >その事が長い目で見てハツさんの為になっているかどうかは不安ではある > 磨ける部分が その為に磨かないので。 (磨く必要性を感じなくなるので) 上記引用は、なんとなく自分で感じている部分もあります。できそうなことをやってるだけなので、出来なさそうやできないこと(長い文章を最初から最後まで同じ熱量、力で書き上げるために、推敲を繰り返すこと)から逃げていると自分では思っています。そこに向き合っていけるかなんですが、なかなか難しい。調子が上がってきたら、また長い文にトライしたいですが、わたしの集中力と継続力の無さでは厳しいので、ぼちぼちでやります。それとは別に、短い物をクオリティ高く書くことの練習もしているので、現状のわたしの全力がこれなんでしょうね。
0イメージをことばにおとすとき、ヒカリと見えるもの。マーマレードの橙、甘みと皮の苦味、泡を孕んだ透明℃、その色や香りがたゆたうヒカリとして変わっていく工程を、取り出し 詩の形にしている。コメントで騙っていましたが、『〝異質さ〟の中で何か目を奪われる』、そういった要素はみえませんでした。光/ひかりの差も分かりづらい活かしきれてないと思います。形として穏やかに発光して、心として残らないぐらい、ぼんやりとしたすがたかたちを取り出し。並べ立てた印象がある、終始キレイに読ませることができるけども。 この詩を心に残すためにわたしだったら、始めの文を最後に持ってきます。 >楕円形だとだらしなく見える、とパンを四角にくり抜いて、ぼんやりとした光の中から暖かい色のジャムを次々に取り出していく。 そうすると詩のかたちとして明確にヒカリとして立ち上がり詩の下モトに収まるのではないでしょうか。
2ジャムに関する一章ですね。そうやって記述されてみると、果物と光の関りが、はっきりとしてきます。 西洋絵画では、静物といえば、果物が描かれる。温かいような光。ジャムの質感のマーマレード。 パンを食べるだけでこんな詩的な感情が、実は私達には与えられている。それを指摘してくださった のはハツさんです。とても、嬉しいです。
0A・O・Iさん、コメントありがとうございます。 >『〝異質さ〟の中で何か目を奪われる』、そういった要素はみえませんでした。光/ひかりの差も分かりづらい活かしきれてないと思います。形として穏やかに発光して、心として残らないぐらい、ぼんやりとしたすがたかたちを取り出し。並べ立てた印象がある、終始キレイに読ませることができるけども。 アツいコメントです。並べ立ててキレイに読ませることはできても、心に残る鮮烈さや、意図が活かしきれていないとのご指摘、ありがたいです。 >この詩を心に残すためにわたしだったら、始めの文を最後に持ってき たしかに、場所を変えるだけで何のために何をしていたのかがハッキリする印象ですね。締まる感じがします。書き直す時に、どこに何を足そうかと悩んでいたのですが、なるほどと思いました。次からは意図を活かすように推敲します。コメントありがとうございました。
1黒髪さん、コメントありがとうございます。暖かいコメント、こちらこそ嬉しいです!
1光の素で埋め尽くされた箱がある、そこから取り出された、マーマレード、とラベルがつくであろう色違いたちは、冷たい床についたわたしの両膝の横にいくつも、いくつも連なって、不規則な列をなしていく。そうしているうち、夜も端の方はいつのまにかちいさく点滅を始める。昨日晩にたべた葡萄の表面に吹いた粉と同じに(ちょうど同じならいいのだけれど、)少し指にのこるものが(挨拶をするように)わたしの両膝に触れ、連なったマーマレードたちのつくる橙色のグラデーションが(わたしが夢中で、気が付かないあいだに)ゆっくりと朝を生み出していた。床に並んだこのいくつもの橙色は、おだやかに発光して、(ほんとうの光のいちぶのくせに)、かかげてみれば、にせものみたいにぴかぴかしている。この全てがあのゆたかな光の内からわたしが見出し、取り上げたものなのか混乱するくらいに似た色ばかりで、立ち上がったわたしの足元は、ぴかぴかのにせものがつくる朝とそれが発するひかり、で埋め尽くされている。楕円形だとだらしなく見える、とパンを四角にくり抜いて、ひかりではこころもとないから、と暖かい色のジャムをまた、次々に取り出していく、光の箱から。
3作者の方がこのように推敲された作品をまた挙げられるというのはとても良いことだと思います。結論から言うと推敲前の作品より、状況・動作の説明が丁寧に書き出されていて、イメージはより伝わりやすく、作品の縁取りが際立った印象があります。取り出された光は、やがてにせもののひかりになり(にせものの朝?になり)、それではこころもとないから本物の光を取り出し続けなくてはいけなくて、という繊細な心の機微が感じられました。作中のわたしが何をしたかったのか、読者として感じられる(寄り添える)部分、そういった成分が多くなったと思います。この推敲後の作品を仮に完全とすると、人間が不完全なものにどうしようもなく惹かれてしまう気持ちも同時に分かった気がしました。こういった心の隙間に入り込んでくるような作品、それを書くことができる方が増えてくることを願っています。それから、僕のとても好きな本のひとつに「どうぶつの修復」があって、きっと合うんじゃないかなと思います。機会があれば読んでみて下さい。
1再びコメントありがとうございます。コメント内容も合わせて、うれしいです!「どうぶつの修復」しらない本でした、図書館で借りてみようかな。
2(ちょうど同じならいいのだけれど、) (挨拶をするように) (ちょうど同じならいいのだけれど、) (ほんとうの光のいちぶであったくせに) これらカギ括弧内のセリフの様な心の中の言葉であるかのように思われ、詩に清新の気風を送っていると思いました。
0エイクピアさん、コメントありがとうございます!清新の気風!かっこいい言葉うれしいです。コメントありがとうございました。
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