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好きなことは下手でもやり続けるしかないよな、生きろ。
例えば 水たまりを越えようとして かかとが派手に水しぶきをあげること おれの脚は短かった、思ったよりもきっと水たまりは広かった 成長期はずいぶん昔のこと、これ以上脚が伸びることはなく どうして越えられるといつも思ってしまうんだろう 越えるという選択肢があるからだ 選択肢が思考を誘導する 答えを間違えるのではない、何を問うのかが答えを決めるのだから 例えば 詩 を書きました 詩は水たまりです 晴れた日には気にも留めないアスファルトの窪みが 雨が降ったとたんに 足を踏み入れるのが躊躇われる場所になる こころの 表面の でこぼこに 痛みや愛情の甘やかな雨が降り、 アドレナリンやオキシトシンの水たまりを越えようとして見誤り、 跳ねたしぶきが裾を濡らした あんたがたがとうに知っていることしかおれには書けない 当然のことだが、自分のために繰り返しておこう 詩を書こうと思うことはできない そうだろう? きみは深く頷いている 詩が先にある すでにある詩を思うことなどできない 詩人ではない人間が詩人になることはできない 完璧なものがすでにある 完璧なものに入口はない 詩は常に書かれてしまった後であり、これから書こう、などと 思うようなものではないよな、あんたがたなら知っていることだろうけど 埋まらない履歴書の特技に自己レンビンと書いてニヤニヤ笑った 日が射して 高い場所を鳥が横切る 影を映した水たまりの表面は 静かにおれに対して閉じている おれは詩を憎んでいる 水たまりを前にしたおれは 答えを変えるために質問を弄り回している それでも衝きあげてくる 答えが先にある 脚は伸びない
好きなことは下手でもやり続けるしかないよな、生きろ。 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1032.1
お気に入り数: 3
投票数 : 5
ポイント数 : 0
作成日時 2023-10-07
コメント日時 2023-11-12
項目 | 全期間(2024/12/04現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
こんにちは。 「詩を書こうと思うことはできない」 というところを読んで「ん?」と思ったのですが、その後の 「完璧なものに入口はない」 「詩は常に書かれてしまった後であり」 というところを読んで、何となくわかるような気がしました。 「答えを間違えるのではない、何を問うのかが答えを決めるのだから」 というのは、言い方を変えれば「答えは問の中にある」ということでしょうか。 選択肢がなければ思考は生じない。それしか道がないのだから。でも選択肢があればそこに問う余地が生じる。その問いが導いた答えが裾を濡らす飛沫だったということ。 この詩を読んで感じたのは徹底的な絶望です。 「詩人ではない人間が詩人になることはできない」 「おれは詩を憎んでいる」 「脚は伸びない」 それらの言葉の内には己の詩の才能への徹底的な絶望が潜んでいるように見えます。 でもその絶対的な絶望と対峙して生きてゆかなければならない。 何だかニーチェの「運命愛」みたいですね。
0ゼッケンさんこんにちは この詩大好きです。詩は出会うタイミングも重要だと私は思っていて、たとえば、あと数年先に出会っていれば好きになれたかもしれない詩、十代のころに出会っていたら好きになれたかもしれない詩といった感じで。 それで、わたしは今このタイミングでこの詩に出会えてよかった。 水たまり、それに映り込む世界、さらに水たまりと思考が呼応していて、作品の世界観に広がりができているところが素敵です。 最近ともだちに「生きろ」と叱られたところだったので、もう、タイトルで刺されてしまいました。わたしはこの友達と、このタイミングで出会ったこの作品をずっと大切にしていきたい。
0読んで好きになる作品でした 詩観があってそれを突き放している文体が清々しいようでもあり読み入りました。
0>何だかニーチェの「運命愛」みたいですね。 超人現る。運命愛、いただきました。永劫回帰もなんのその、ただただ書き続けるさだめのゼッケンです。。。上達もせず。tasakiさん、こんにちは。だって永劫回帰だからね! 上達しようなんて思っちゃ駄目さ。うおおん、私は百万回生きても下手なままなんでしょうか?
0>詩は出会うタイミングも重要 ああ、これは本当にそうだと思う。あやめさん、こんにちは。ゼッケンです。読む方の状態で同じ文章でも存在する理由が変わります。そういう意味で作品は読者のものです。この作品もいい人のところにもらわれていったな、と感謝でございます。ひとつ懸念があるとすれば、読者のステータスが変わると、なんでこの作品なんかが好きだったんだろう? っていうのもよくある話で。そのときは、あやめさん、成長したな、と思います。
0>ゼッケンさんも実に自分の世界観を持っていらっしゃる書き手 そう。世界観なんですよね、良くも悪くも私が書けるのって。世界観どまりというか。山人さんとか黒髪さんとか、「世界」じゃないですか、書いているの。詩が身体化している。詩を取り上げたら、おふたりとも血をドバっと吹いて死にそうだもん。ここらへんなのかな、20年近く前、私が2chの詩板で書いてた頃、まんこ将軍(これ、いまダメなんじゃないのかな)にいろいろ怒られてたことって。なつかしい。山人さんのコメントで昔のことをなんとなく思い出してしまいました。そう見ると、いまも変わらず、頭でっかちから抜け出せないままです。
0>詩観があってそれを突き放している文体が清々しい いやぁ、照れますね。ゼッケンです、あたらしい、いや、あたらちいち、ち、ちへい、ガフっ、舌噛んだ。らとかちとか多すぎ。目がちかちかする。すみません、ちへいさん、こんにちは。清々しいと言われるの、とてもうれしいです。
0水たまりに対するこだわりと言うよりは、詩を解明したくて、水たまりが存在していたと言う感じだと思いました。詩イコール水たまりなのだろうか。確かにそういう詩行がありました。詩作者は水たまりを水だけのものとして見ているのかもしれないと思いました。詩を憎んでいると言うのも、単なる自己韜晦なのかもしれません。詩は死なのか。追い越しのきかないものと言うとどこかの国の哲学者が出て来そうですが、詩は既に書かれてしまったものと言う詩行からは、詩に対する絶望ではなくて、内省が深められて、これから詩を書く前駆的な段階を詩にしようとしているのだと言う事が読み取れました。
0あ、エイクピアさん、こんにちは。ゼッケンです。 >これから詩を書く前駆的な段階を詩にしようとしているのだと言う事が読み取れました。 その前駆的な段階自体が詩だっていう気がしてて、ぼくらは詩を書いているんじゃなくて詩に書かされている。ほら、赤ちゃんって生まれてくるでしょ。生んでるんじゃなくて。詩って、推敲すると遠ざかりませんか? まあ、ちゃんと勉強してない素人の思い込みでしょうけど。文章としては不完全でも、すでに詩があるというか。部分の文章をいじると全体としての詩が損なわれる感じというか。 >詩を憎んでいると言うのも、単なる自己韜晦なのかもしれません。 いや、たしかに憎んでますね。私には届かない場所という確信があって、まあ、羨望、嫉妬を含めてどろどろの感情が渦巻いてます。だからこそ、それでも、っていう。到達不可能ならば無限に挑み続けられるでしょ。そういう転倒した執着もあります。下手の横好きと言ってもいいでしょう。枯れ木も山の賑わいというし、まわりをちょろちょろされて目障りかもしれませんが、大目に見て欲しいよ。
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