私の世界が飽和した
凝析した心が積もっていく
描いては描いては消していった日々が
マリンスノーのように
細胞が隅々の細胞が
アポトーシスを始める
こうなることは始めから決められていた
手から水かきが消えるように
私の世界が飽和した
無限に広がっていた宇宙を
ガラスのドームにねじり込んで
それでもガラガラ
空っぽな気がする
ここが、心臓の辺りが
鼓動が伝わる
僕は生きている?
空っぽな気がする
穴が開いているようでそれでいて心は飽和している?
いや、まだ足りない足りない
じわじわと降り積もる消しゴムのカス
指先からアポトーシスが始まる
こうなることは始めから決められていた?
いや、決めたのは僕
大きく息を吸う
足元につるが巻き付く
もう動けない?
いや、走り出したい
大声で世界の壁を粉々にして
大きな手で灰色の街を殴りつぶして
永久に空っぽな空き缶を
宇宙の果てに蹴とばして
そう、大声で、大声で
ショーウィンドーのガラスのドーム
一人ぼっちのバレリーナ
僕はそれを握りしめ大きく振り下ろしたら
雪がキラキラと
そう、意味もなくキラキラとキラキラと
きれいと思って悲しくなった
作品データ
コメント数 : 7
P V 数 : 918.8
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2023-08-11
コメント日時 2023-09-08
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 23時09分21秒現在
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こんにちは。 化学と生物学の用語を用いた詩ですね。 理系の出身の方か学生さんでしょうか。 飽和→凝析→沈殿物 飽和→細胞→アポトーシス そんな図式をイメージしました 沈殿してしまうほど、アポトーシスを起こしてしまうほど、飽和しているのに空っぽな感じもする。 そんな矛盾に苦しんでいる様子が窺えます。 ちなみにアポトーシスは、個体発生の際に正確な形態を形作るために、過剰に増殖させた細胞を削り取るときや、修復不能なほど遺伝子が傷ついたときに、細胞の癌化を防ぐために自滅させるときなどのための機能だそうです。(たぶんご存知でしょう) ですからアポトーシスは正常に誕生してくることや、身体の正常な機能を維持することに必要なものであるとも言えます。 そう考えると、この詩の細胞が死んでゆくことは、矛盾の苦しみを克服して生まれ変わるためのもので、決してマイナスのことではないようにも読み取れます。 芋虫が蛹になって蝶へと羽化する過程にも、アポトーシスが関わっているように。 そして沈殿物が生じるということは、見方によっては浄化を表しているようにも思えます。 スノードームの雪がキラキラときれいに見えたのもそのためなのかなと、そんなふうに感じました。(違っていたら済みません)
0きれい、が悲しい、というのは人間らしさの表われで、そこを語ることに時間を費やすことが詩かもしれないですね。小汚いことや醜いことが詩ではなく、良く生きる、そういうことを思い出させてくれます。人間が思念し、生きることの価値は、多勢に無勢では覆されない価値があるのだ、そう思いだしました。
1m.tasakiさん こんにちは。 コメントありがとうございます。 この詩は社会の一部として機能する前の、まだ何者でもない人の心情、葛藤を表現しようとしたものです。社会や周りの人間が自分に求めてくるもの、自分が自分に望むもの、自分の可能性や夢、自由、自分の限界、そのようなものの中で感じる矛盾や葛藤に苦しむことを表現できたらと思いました。 アポトーシスを経て社会の一部になっていくこと、でもそれは本当に自分が望んでいる自分なのかという疑問や、そのことに対する拒絶や受容。 もう一杯一杯でどうしようもない気持ち、それでいて何かを、それが何かも分からないまま強く渇望する気持ち。 「この詩の細胞が死んでゆくことは、矛盾の苦しみを克服して生まれ変わるためのもので、決してマイナスのことではないようにも読み取れます」 確かにそうです。きっと大人になる前に必要な過程なのでしょう。 「そして沈殿物が生じるということは、見方によっては浄化を表しているようにも思えます。」 そうかもしれません。でもその過程で生じた沈殿物はかつて自分の一部だったものでもあるのです。
0湖湖さん コメントありがとうございます。 「きれい、が悲しい、というのは人間らしさの表われで、そこを語ることに時間を費やすことが詩かもしれないですね。」 そうですね。きっとそうだと思います。 「あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするがゆえに尊とい。」と夏目漱石が言っていますが、情報にあふれ時間に追われるような現代では、良く生きる、ということを忘れがちです。そのような時代こそ詩が必要とされているのかもしれません。
0うーん、難しい語が多く並べられているなーと思い ネット詩としてあまり見ないので勝手若い方の作品なのかな、と。 そうして非常に行儀の良い詩作品で、美しいのですけれど もっと、行数を減らすなり「研ぎ澄ました」方が雪、らしいのかなと。ふと思った。
0田中恭平さん コメントありがとうございます。 用いる単語と行数や全体のバランスなども意識してみようと思います。
1生きる儚さが伝わります。 そして、孤独です。 無力感に苛まれる自分が、 大きな鳥籠の中で、 しかも決して逃げ出せられない、 寂しい場所で、歌を歌っているような、 悲しい心が伝わりました。
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