もし過去に戻れるのなら
桜並木の続く早朝の坂道を
あなたと一緒に登るだろう
薄明かりの中ひらひらと
花びら絶えず舞い降りて
覗うように見上げる笑顔に
ちょっぴりすくみながらも
胸はどうしようもなく弾けるんだ
途中僕はバテてしまい
「ほら、行くよー」と笑いながら
あなたはズンズン進んで行く
薄明かりの中はらはらと
花びら絶えず散り降りて
小さい背中がカッコよくって
痺れるくらいにカッコよくって
"行かないで"―
強いあなたは去っていき
弱い僕だけ残されて
吐息虚しい桜坂
"大丈夫!いつか追いつけるからっ"
いつものサバサバした語り口
逆に哀しくなるから、やめてよ
2人のあいだはどんどん開いて
てっぺんの丘 小さなあなた
手を振るあなた 笑顔が咲いて
淡い朝日に 目の茶は煌めき
ほうれい線は はんなり優しい
ああ―その前歯の仄かな黄味が
憎らしいくらいに懐かしいよ
小さな小さな 大きなあなた
小さな小さな 大きなあなた
僕より背が20cmも低かったけど
あなたはずっと僕の―
大きな大きな、お姉さんだ
*
いつかまた巡り合えたら
そのときはずっと
ずっとずっと
この手を引いていて
あのか細いけれど逞しい5本の指で
無骨なこの手を しかと包んで
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 667.4
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作成日時 2023-07-02
コメント日時 2023-08-19
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 21時04分34秒現在
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あっ女のひとのことだとは思ってたけどけっきょくお姉さんのことだったんだねっていう驚きがありますね 家族がテーマのポエムってエモいことが多くてこれもちょっぴりエモいですね あと音韻を気にして書かれている気がします 朗読すると >"大丈夫!いつか追いつけるからっ" >いつものサバサバした語り口 の部分とか映えそう 演出が効いてるポエムだなって思いました
0この詩好きです。 こんな気持ちになりそうになります。 僕の横に僕よりずっと先に行く人がいるって、先にいるのに横にいるような、そんな感覚があって好きです。
0なるほど、そうお読みになったのですね。あくまでお姉ちゃんのような彼女、という感覚で書いたのですが、考えてみればコーリャさんのような読みも、普通にできる。 朗読したら映えそうとの評、うれしかったです。そこら辺が山場だと思って書いたので。彼女は実に、サバサバした姉御肌の女性でした。
0ありがとうございます。そう言っていただけると、書いた甲斐があるというものです。 先にいるのに横にいるような、というのは鋭い指摘だなと思いました。先に先にと歩いていく彼女を見ている僕はしかし、そんな彼女をある意味で横にいるとき以上に身近に感じている。つまり遠のけば遠のくほどに、逆にかえって近くなってゆく…そうして意識していたわけではなかったのですが、ご指摘いただいたことで、結果として、そんな心の機微を書くことができたのかなと思えました。それがラストの、彼女が手を振る場面で極まるーそんな感じですね。 実際、遠くに行ってしまったいまこそ、彼女をひしひしと感じている僕です(笑)
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