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歌声へ(螺子と種子)
そして歌声は沈んでゆき 螺子と種子が降る その濁流の混在の欲望の漂流の底へ 「みなもと」 そして歌声は白く 青く 沈んでいきます 宇宙の底へ 長く青白く 黒い 残響の尾を引いて 私の飢(かつ)えた小指が幽かに震えます 私は震える指で宇宙の襞を捲り ほんの僅かに裂き(その意識を私は貴方に、紛れもない貴方、歌声に習いました) その濡れた襞の奥深くに刺します 私の黒髪は逆立ち乱れ揺らめき 歌声が 頭の中をスパークしてきらきらとダストを舞わせます 声が漏れる 、 それは蒼黒い宇宙の底であり果てであり そこには乾いた涙を零す無数の瞳達が生えていて けれど、それらの生息域よりももっともっと深いところへと 歌声は沈んでいくのです 貴方だけが辿り着く場所 宇宙に一番近い場所 意識の果て 震える魂の淵 あぁ、貴方を追いかけて私は今日、ここまで来たのです あ、あれは黒曜石 あれは茸 あれは恐竜 あれは蜥蜴 あれは切り花 あれは犬 あれは家 ねぇ、歌声 翼を持つ歌声よ 種子のことから話そうか 螺子のことから話そうか 種子はそのイメージの皮膚を破り 幻想の双葉を深々と広げます 螺子が 私の頭の螺子はゆっくりと剥がれ落ちて 歌声 貴方のその優しい狂気によって 私という感情の螺子は剥がれ 壊れ 歌声が体現する優しい抱擁とキスが あらゆる私を つまり昨日までの私という存在の全てを解体していきます 32年間の記憶を これは髪 これは首 これは乳房 これは性器 これは心臓 これは肺臓 これは肝臓 これは膀胱 これは腕 これは足 これは骨 これは唇 これは爪 これは目玉 これは記憶 これは意識 これは 魂 それは慈悲深い行為です 私は生を憎んでここまで来たのですから 宇宙の気流よりも強く 歌声 貴方が私を嬲る 種子の甘い双葉が広がっていくのを見ます 薄水と濃青の斑が混ざり合い揺らめきながら光沢を放っているのを 私は仰向けに寝転び 顎を反らせながら 横目に見ます 耽溺しているように見えますか? 私の意識は今までになく平明です 「見えるの?」 育つ種子 そして私の螺子は壊れて生きます 広がる青い葉 伸びやかに光る茎 そして私の螺子は壊れて生きます 剥がれて生きます きっと 私は 喪うために貴方を追ってきたのです 歌声 貴方を喪失するために 彼らの意識は混迷を深めていきます TVSHOWは単調な調べを繰り返しています 魂について述べることは滅多にありません しかし彼らは剥き出しの愚かな魂そのものでしょう 裸の私を鏡に映した 彼らに似ている けれど 歌声 貴方だけが私に着いて来た あの日の途方もない孤独を殺しに 種子が 螺子が きりきりと響き 歌声 貴方がたゆたう場所に 私は 溺れながら 浮かんでいく 少しずつ見えてくるものの尾を捕まえるためにタイプします これは私の為の祈り そして貴方に捧げる行為です 決して届かないのだろうか 私の意識は誰にも辿り着かないのだろうか 彼らの意識が私に辿り着かないように しかし歌声 貴方は私の首筋に優しく纏わり着いて絞め上げる 貴方が私を世界と繋ぐ そして私は従順に貴方を喪失する 喪失する 喪失する 喪失する 喪失はどんな人間にとっても 悲しみです けれど私達は決して判りあえない 歌声 貴方だけがそれをすることが出来るのです 絞め上げられて 私の喉が か細い悲鳴のようなものを幽かにあげます 初めて 私の喉から 声が 本当の きっと本当の 声が漏れるのです あ 今 双葉が何か囁くのを聴いた 貴方が解体した私の耳が 初めてそれを捉えた 私は その微細な響きを 感じることが きっと 出来る 風に震える それは 歌声 貴方の残滓でしょうか 私の中に吸収された貴方の欠片が 私の喉を伝い みっともなく零れ落ちて生きます 私の歌声を 歌声 貴方に捧げます それは祈りを孕み いったいどんな行為なのだろうか 願わくば この歌声が 届くように これは私の祈りです 今 暗闇の目を見開き 光を見ます 歌声を 光の中に 無数の痛ましい歌声は浮遊している 或いは螺子の 或いは種子の 貴方が組み立てなおした私の耳が それを聴く 歌声を
歌声へ(螺子と種子) ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 801.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-12-15
コメント日時 2017-12-17
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
投稿有難う御座います。白犬さんの神秘性のある作品、イマジン重視の作品よりも本作のような、作者の「気持ちの感触」が浮き出ている作品の方が私は好きです。短文コメントでごめんなさい。一旦トップへ上げます。
0最初のイメージは饒舌で溢れている歌。テーマも種子に絡めていて、壮大です。丁度今大学の授業で地球の誕生から現代までの話を聞いているのですが、それに似た感じを思います。そして溢れすぎていて、僕自身上手く受け止めきれてないですね。三浦さんがレスされていますが、気持ちの感触というのは、多分僕も思いました。少し日を置いて、余裕があれば再読したいと思います。
0声、歌声・・・ が喚起する陶酔、没入の瞬間を、冷静に見つめ、解説しよう、とすると、このような流れになっていくのだろうと思いました。 冒頭三行め、単語を畳み掛けながら「読み」のリズムを作っていく文体になっていくのだろうと思いかけたところで、語りの文体に切り替わっていく。 うたう、歌われる、誘われる、誘われる・・・ことへの憧れを、やはり歌い上げてしまうと甘さ×甘さ、という感じになってしまうので、語りの文体を用いて正解だったと思います。 他方、優しい狂気です、というような言い直しの部分は、感覚的な把握を、説明的な文脈に引き戻してしまうので、少し見直した方がいいかもしれません。 語り手の推測部分も、たくさん入ると過剰感が生まれるので、そうした部分を見直す形で絞り混んでいくと、もっとうねるような抑揚や、ドラマティックな音楽的な流れが生まれるのではないかと思いました。
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