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沈黙
あなたが閉めた扉のむこうで くりひろげられるいんさん あなたがわたしの手を はじいたのか わたしがあなたの手を おしやったのか 扉を埋め込んだ壁は 宙空に浮いている 後ろに回っても 何も見えない なにもみえないのに じりじりとからだが溶けていく ・・・ことはわかる 肌を焼くとうめいな痛みに 心をひくく保ちながら 波が砂をさらっていく時の 足裏の感覚を確かめている わたしの手を握りしめた時の 冷たく汗ばんだ感触を思い出している 暗く深く穿たれた目の痕跡が 翳をにじませ渦巻いている雲の 真ん中に現れては 消えていくのを見ている くずれていくからだをひきずって 乾いた空白の中に戻る 目を取り出して扉の前に置いた やわらかな闇の中で 扉の声に耳をすませる あなたに 返せるものはなにもない ただ 手放すだけだ
沈黙 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 983.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-12-14
コメント日時 2018-01-02
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
まりもさん 御作にコメントさせて頂きます。 冒頭、くりひろげられるいんさん、のところだけひらがなで書かれているところに、御作の詩の見方の多様さを感じました。 終わりに向かっていく、守るための別れか救うための苦しみか。激しい痛みと苦しみがつめたい色となって広がりました。 最後の連、<あなたに 返せるものはなにもない ただ 手放すだけだ は、思いを断ち切る、葬るほどに強烈な印象がありました。
0>肌を焼くとうめいな痛みに けつれつのときの、全身の皮膚が野焼きにあったような状態。 >心をひくく保ちながら という野生の知恵に惹かれました。
0扉の向こうとこちら側で繰り広げられる思い。お互いの思念を考えれば、これもこころの傷みを伴う語り手の独白でしょう。沈黙とはその境界に佇む扉のことですね。このようなものをさらりと書いてしまう文章には力量を感じます。それだけに出だしに置かれた(くりひろげられるいんさん)漢字で表せば陰惨です。後々の内容を考えれば少しオーバーワードな気もします。
0さりげなく踏まれた韻が心地よい流れを作り出すなかで「・・・ことはわかる」でぐっとリズムを引っ掛ける。あえてひらがなを多く用いることで生まれる「均質性」。描かれているものはグロテスクでさえあるのに、なぜかすっと透明な風景が目の前にひろがっていくようなそんな軽やかな感覚。そのギャップ。言葉が本来の重たい意味を失って感情の残骸や感覚の渦としてただそこにある有様。くせになって何度も読み返したくなるような作品でした。
0夏生さん ありがとうございます。葬るほど・・・そうですね、気持ちを、埋めていくというか、そうしたくなる時が、ありますね。 fiorinaさん 野生の知恵、ですか、なるほど。いい言葉をいただきました。なんだろう、姿勢も低くして、上目遣いで、あたりを伺いながら、狙って進んでいく、ようなイメージかもしれないですね・・・。
0アラメルモさん 何と申しましょうか、さらり、と書いた、というわけではなく・・・ここ数か月の、様々な思いが、層のように重なっている、という感覚です。様々な出来事の層が、「わかれ」「拒絶」「思いが届かない」「断ち切る」といった・・・遮断のイメージで、真ん中を針で突き通されて、一つの塊に束ねられている、ような、そこから(たぶん)生まれた詩です。作者としては、たぶん、としか言いようがないというのが、自作に対する言葉でもある、のですが・・・。 survofさん 〈言葉が本来の重たい意味を失って感情の残骸や感覚の渦としてただそこにある有様〉ありがとうございます。具体的な意味、その濁りとか重さから・・・なんというか、澱を沈めるように、その上澄みの部分を取り出したかった、というか・・・きっと、「きれいなもの」にしてしまいたかった、のかもしれません。「美化」ということ、ですね。自分の中での、昇華/消化、のための。 花緒さん 詩語への傾斜、あるいは「美化」する、ということについて、考えさせられました。たしかに、その傾向がある、かもしれません。「とうめいな痛み」は・・・硫酸で肌を焼かれる、ようなイメージが元にありました。それを「できるだけ生々しく、他者に痛みを突きつけるように、剥き出しになるように」提示するか、あるいは、美化して、「きれいな」世界に回収する、ある種の人工的なイメージ、想像力で作り上げた世界に昇華してしまう(してしまいたい)という選択がある、ように思います。 硫酸のイメージから硫酸銅を連想し、あの透き通った青、に包まれるイメージを連想し・・・とうめいな痛み、というところに収めたのですが、果たして、それでよかったのかどうか。 赤剥けになった肌が、漿液を垂れ流しながら痙攣し・・・というような「具体的」で、生々しいイメージを繰り出していく方が、より「迫真性」は強まるのかもしれませんが・・・痛みそのものを強調したかった、わけではない。でも、伝えたかった「いたみ」はある、という・・・自作に関しては、なかなか「外に出て」語る、ことはできないですね。この辺で、やめておきます。
0激しい葛藤と痛み、そして別たれていく。内的な苦しみや痛みは人には解らない。けれど、それを共に感じることができる。人が関係し合うことと言うのは深く交われば交わるほどにどちらが、どうしたのか曖昧になっていく。素人の読みなので的はずれかもしれませんが最後の決断に至るまでに使われた、ひらがな、表記のワードが読後感の締めを作り出していると感じました。
0ちと引っかかってしまったのは・・・、の点々の表現の仕方が勿体無いかな、と思いました。 時間、沈黙、次に繋ぐ間、葛藤、等、確かに便利ですが点々の箇所で、この詩がもっと膨らませるのではと思いました。
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