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奪われる
水仙のつぼみがほどけるとき 過ぎる時の一秒が水銀のように重たく垂れる 地下鉄の通路を吹く風は 押し出された圧力で肌から湿り気をほんの少し奪うので きみは昨日、涙を流すことができた そのひとりの少女は ぼくたちが関係しあった結果として 健やかに伸びている 夕陽が切り裂き魔のように 中央線の走る街から光を奪ってゆく ビックバン以降 無から有は一度も生まれてないのだよ ぼくらは机の下で手を探り合うように 少しずつ奪い 少しずつ与える 火の灯った食卓に上がるほんの少しの葛藤とあたたかみ 雪の降る街でホットミルクは熱っぽく傾く きみのなめらかな首筋をかくすマフラー 携帯を閉じて空を見上げる視線 いつか神は奪う まず、奪ってゆく 月と海 潮の満ち引き 一定のリズムをよそおって 抵抗してぼくらは乱雑に唇を湿らせる 風が奪った湿度の分 組み合わせた指を解き どこからか 水分を調達して 大切な話がある きみが隣に腰かけた時の 膝のかたちが好きだ そうやって声を交わす まずきみはぼくを奪いたまふ
奪われる ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 878.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-12-09
コメント日時 2017-12-21
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
投稿有難う御座います。 きみが隣に腰かけた時の 膝のかたちが好き このフレーズ、好きです。もしかしたら、ちょっとドラマのセリフのようだと思われがちなフレーズかもしれませんが、このフレーズまでの流れが心情を抑えた「描写」が続いてのこのフレーズなので効果があるように思うのです。もっといえば、このフレーズをもっと前面に出してもよいような感もします。そこでいえば、「きみ」と「ぼく」の語りの部分を思い切って削ってしまうと、先のフレーズの存在が増すように思います。今後とも宜しくお願い申し上げます。
0最後のキメ台詞?の部分が、〈奪いたまふ〉なんだ、〈奪いたまへ〉ではないんだ、と・・・驚く、というのか、意外、と感じた、というのか・・・。ここで、作者としては悩んだのか、悩まなかったのか、伺ってみたいと思いました。 冒頭の流れるような二行、詩への入り方が、美しい。〈とき〉と〈時〉の使い分けも、ゆるやかに訪れる時間と、一瞬にして過ぎ去る記憶の対比、という印象が生まれて、とても良いと思いました。水仙のつぼみ、という具象的な映像が冒頭に置かれるのですが、〈そのひとりの少女・・・健やかに伸びている〉という進行により、水仙のつぼみのような少女、そして、その少女が早春(人生の早春)の冷気の中、ゆるやかに花開いていく、その予感を漂わせた〈とき〉に自然に変換されていく。 〈湿り気をほんの少し奪うので・・・ことができた〉構文だけみると、実に理屈っぽい文体なのですが、内容は論理を越えていて、語り手にとっての確信を提示しているに過ぎない。読者にとっては謎の「論理」なのに、語り手にとっては自明のものとして進んでいく、この意外性にも魅力を覚えました。 〈湿り気〉という言葉は、湿っぽい関係、という慣用的な言い方に通じます。 ドライな関係、というような言い方からも分かるように、人間関係の親密さを、乾燥の具合、水気があるかどうか、という「感覚」に喩えるのは、わりと一般的な理解の範疇なのに、新鮮さを感じるのは、なぜなのでしょう。 きっと、〈地下鉄の通路を吹く風〉が奪うものは、肌の湿り気、目の表面の湿り気、といった具体的な、手で触ることのできるような現実感を持ったもの、であるはずなのに、二人の関係性というような見えない湿り気を奪う風、となり、その結果として〈涙〉が零れる、という・・・見えるものから見えないものへとスライドしていく流れの鮮やかさに理由があるような気がします。 〈夕陽が切り裂き魔のように/中央線の走る街から光を奪ってゆく〉このフレーズも面白いですね。夕陽が切り裂き/切り裂き魔のように中央線の・・・と、二重にかかっているように読めます。ストレートに読むと〈夕陽が~光を奪ってゆく〉となりますが、光が光を奪う、という意外性が、心地よい違和感になっている。 解説するなら、夕陽が一瞬の閃光を残して、その後、昼の光が失われていく景を描写した、ということになりますが、「2人の会話」のように自然に置かれた〈ビックバン以降/無から有は一度も生まれてないのだよ〉という文言と光が響きあい、なにやら宇宙的な広がりを感じさせる行間になっています。 〈少しずつ奪い/少しずつ与える〉何を、奪い、何を、与える、のでしょう。愛?信頼?無から有は生まれない、それは、気持ち、に関しても当てはまるのでしょうか。 〈ホットミルクは熱っぽく傾く〉〈きみ〉へと熱っぽく注がれる〈ぼく〉の視線を背後に潜めつつ、グラスを傾けてミルクを飲む〈きみ〉の様子、その喉の動きまでもが浮かんで来る。 〈いつか神は奪う〉今の、この一瞬も、失われてしまう、ということか、二人の関係性も、いつか奪われてしまう、ということなのか・・・ビッグバン、月と海、といった、大きな広がりや重層的な意味を含んだワードが複数出て来るところに、さらに〈神〉という大きな意味を秘めたワードを持ち込むことが、果たして成功なのか、どうか。 ぼくらが、奪う、風が、奪う、きみが、奪う・・・という、ぼくら、に直結している関係性の内で奪われたり奪ったりする、なにか、がテーマであるはずなのに、さらに〈神は奪う〉まで広げてしまわない方がいいように思いました。
0〉三浦さん 感想ありがとうございました。結びは悩んだ部分でしたので、きちんと切り開いていただけて嬉しいです。今後ともよろしくお願い致します。 〉まりもさん 隅々までイメージを手に取るように読んでいただき、とても嬉しいです。 神様の登場は強すぎるし受け取られ方がとても限定的になりそうだったので悩ましい部分ではありました。 三浦さんの感想も合わせて、他の表現考えてみたいと思います。
0すごく勢いがあっていい詩だけど必然性に欠けるものがある。ここはこう書かなくてもいいんじゃないかとか、そういうことを思う節がある。
0>大切な話がある >きみが隣に腰かけた時の >膝のかたちが好きだ ここがメチャクチャかっこいいです。極端なイメージのギャップが効いています。ある意味セカイ系かなぁとも思うのですが、とにかく、三浦さんじゃないですが、上の三行が良いと思いました。
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