今日の空は青くて遠くて、とびきり綺麗だったから、空は青くて綺麗だと、そっと書いてみてけれど。
青くて綺麗としてしまうには、空の青はただの青ではない気がして、ふと鉛筆を止めたのだ。
無数にある青の中、あの青色は何色だろうか。
止まった鉛筆は「綺麗だ」の「だ」の濁点を一つ書き損ねた。
青くて綺麗としてしまうには、空は綺麗なだけではない気がして、ほかになにか、この綺麗を表すにふさわしい言葉を探した。
無数にある形容詞から、綺麗という言葉を選んだものの、それを書いてしまったらあまりに安易でつたないように見えて、消しゴムで消してひらがなにした。
空は青くてきれいだった
それでもやはり、あの青を表すにはきっとあまりに不完全で、鉛筆はやはり、最後に「。」を書き込むことができなかった。
例えば。
あなたにこの空のきれいさを伝えたとして、私がこの空の青さを必死になって伝えたとして、それはどれだけ伝わるものなのだろう。
この青のきれいさを、私だけのものにしておくにはあまりに惜しくて、それを伝えるための言葉を選ぶには私はあまりに不勉強。
悔しくてまた消しゴムを取った。
空が青かった。
今日は、今は、きっとこれが及第点。
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 695.6
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 60
作成日時 2023-02-27
コメント日時 2023-02-28
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 20 | 20 |
前衛性 | 10 | 10 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 10 | 10 |
技巧 | 5 | 5 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 10 | 10 |
総合ポイント | 60 | 60 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 20 | 20 |
前衛性 | 10 | 10 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 10 | 10 |
技巧 | 5 | 5 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 10 | 10 |
総合 | 60 | 60 |
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2024/11/21 22時46分32秒現在
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心が豊かな人なんだろうと言う印象 高い場所から街並みを眺めている気分 その中で俺は海の青さと空の青さと街並みの豊かな色を見ました 誰かを何処かに連れて行ける文章 CP9
0とても素敵な作品だと思いました。空の青さを人に伝えようとすると、確かに安易な表現になり、難しいですよね。でもその過程を丁寧に記すことでうまれた、 >空が青かった。 話者の「人に伝えたい気持ち」がとても伝わりましたし、私もいつか青空を見たときに、そんな風に呟いてみたいと思いました。
はじめまして。 自分が感じたことを、どんな言葉で表現すればいいか、どんな言葉だったらしっくりくるか思い悩むのは、詩を書く人皆に共通することだと思います。 私もそういうことがよくあります。 思い悩んだ末に見つからず、次善の言葉で済ましてしまう。でもそのことが、いつまでも気になってしまう、なんてこともあります。 画家が自分の作品について、これで完璧、これですべてOKと思ったら、その時点でその画家は終わりだ、という話を聞いたことがあります。 仕上げた直後は完璧だと思っても、すぐに気に入らないところが目についてきて、それを克服する新たな絵を描きたくなる。 そんな絶え間ないの不全感がなければ、前に進めず止まってしまう、のだそうです。 詩人も同じだと思います。 ところで、言葉が見つからず、濁点の途中で筆が止まってしまうのは面白いですね。 二度目に筆が止まるときは、最後の「た」の途中で止まって、「ナ」のようになってしまった、みたいなほうがより面白くなるかもしれません。 詩に対する真摯さが伝わってくる作品です。 詩を書く者として共感できました。
0中に書かれている空の青について、伊丹十三さんの本の中で「赤、青、黄の三原色で一番拡散性が高いのが青、一番直進性が高いのが赤。だから夕暮れは赤く、昼の空は青いのです。」というのを読んだことを思い出しました。 結局見え方、届き方なのかなあと。 空、いいですよね。
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