物質と記憶 - B-REVIEW
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物質と記憶    

印象は セミの幼虫の記憶となり、 背を割り、 伐採された木々を想う。 闇に反りかえり発芽する、 ちぢれた、 アルビノの身を垂らす。 鉄パイプの 骨組だけを晒す、 碧い宵の空に露出した、  胡瓜畑のビニールハウス と 涼やかな夏祭りの夜店、 眩しい白熱電球のもと、 つらつらと壁に並ぶ 妖しいプラスチックの面。 それは 幼少期のイマージュであり、 生命力にあふれる、 無限とじかに続いていた 自分の価値であった。 児は机を丁寧に拭き、 未完成である作文や 未完成な自画像、 真新しいシャツにこめられた 親の情念を並べ、 できあがった無限の印象を、 児の個人的世界を、 リコーダーと一緒に 密閉すべき鋼鉄箱に入れる。 封印されたイマージュを 灌木の生えた 校舎敷地内の暗い地中に。 頬のふっくらとした、まるい手をした、  もしくは忘却は、 記憶の楽園に棲む者たちの残り香であり、 掘りおこされたとき、 心の奥、深くにしみいる。 忘れ去った意思を、学習ノートの紙面に見つけ、 時の量を、 消耗された自分の夢をみいだすのであろう。


物質と記憶 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 12
P V 数 : 985.2
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2017-12-01
コメント日時 2017-12-20
項目全期間(2025/04/06現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
可読性00
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音韻00
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閲覧指数:985.2
2025/04/06 18時46分02秒現在
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    作品に書かれた推薦文

物質と記憶 コメントセクション

コメント数(12)
エイクピア
(2017-12-01)

物質と記憶、どこかで聞いたことがあると思ったらアンリベルグソンの著作のタイトルだと分かりました。でも詩は流麗に展開し、イマージュに一部の隙も無いと思いました。二行目のセミの幼虫の記憶から幼児期のイマージュ、自分の価値、未完成な自画像、親の情念と拾って行くと、この詩は抒情詩にも叙事詩にも見えると思いました。

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ふかお
(2017-12-01)

エイクピアさま、印象を与える文体であれたでしょうか。そうあったなら幸いです。お読みいただき、コメントをいただき、感謝いたします。ありがとうございます。

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まりも
(2017-12-05)

あえて、硬い文体で、所々に説明口調を入れながら書いたということなのでしょうけれども・・・句読点がつけられていますし、行分けにする必然性(文章の進行のリズムや、読みの呼吸など。あるいは、余白のレイアウトや文字の並びが生む視覚的効果など)が、あまり感じられない。きっちり詰めた散文詩にしてみたら、印象はどのように変わるだろう、そんなことを、まず最初に感じました。 印象は、と主語的に始まりますが、これは「春はあけぼの」と同様の、テーマの提示ですね。主語として、私は、が隠れている。その「私」(想像力の主体)が、蝉の幼虫の内部に意識を内在させ、そこから「伐採された木々」に思いを馳せる、という、人間くささ、とでも言うような落差が面白いですね。 自分の価値であった、と、あえて説明してしまうのが、何となく蛇足のような気がしてしまうのですが、ビニールハウスの骨組み、幼児の目に不気味に迫るプラスティックのお面、と、具体的な景と、その「物」が、無限に連なるこわさをもつものであったこと、それゆえに好奇心を惹き付けてやまないものであった(らしい)ことが語られていく。 幼児期に感じた怖れや感動を、もっと、当時の新鮮さで呼び戻していく・・・そんな描き方をしてみるのも、ひとつのアイディアだと思いました。

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ふかお
(2017-12-06)

まりもさま、お読みくださり、感謝いたします。 改行は、ポエジーをうみだす手段なので、改行の必然性が感じられないのでしたら、詩作自体の失敗です。拙作をお見せして失礼いたしました。 無限とじかに続いていた自分の価値であった、ですが、これを書かないことには論述としてなりたたなく、詩の主題でもありますので、お許しください。つまり、無限とじかに続いていたのは自分の価値ということです。 これは、だれにでもそうであると私は考えていますので。そうでなければ私の考え違いです。お許しください。 もっと、当時の新鮮さで呼び戻していく・・・そんな描き方をしてみるのも、ですが、イメージがわくように書いたつもりだったのですが、実力不足なのでしょう。異化の手法はとらなかったつもりです。

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ふかお
(2017-12-06)

追伸、 異化の手法はとらなかったつもりです、と書きましたが、読み返してみると、いかにも詩らしく書いてある部分もありました。

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まりも
(2017-12-06)

あくまでも、ひとつの「意見」として、コメントは読んでいただければと思います。 〈鉄パイプの/骨組だけを晒す・・・露出した・・・ビニールハウス〉〈妖しいプラスチックの面〉 その景が、幼児期の語り手に残した鮮烈な印象、それこそが主題であったのだろう、と思い(あるいは、そう読みたい、という思いがあり)無限、という得体のしれないものと、つながる瞬間に立ち会ってしまった、そんな幼児期のおののき、そこを、もっと読みたい、と、個人的に思ったのでした。

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ふかお
(2017-12-06)

そんな幼児期のおののき、そこを、もっと読みたい、 大人である語り手には、幼少期にもった印象を語ることはできないと考えます。それは、ふるぼけた記憶でしか残らないはずです。しかも、その印象は、幼児期でしか得ることができないのですから。大人になってから、まったく同じ体験をしても、経験が作用して、同じ印象が得れるはずがありません。 未視感を、文章技巧(異化)を駆使してあらわすことは可能でしょうが、日常にすれた大人が未視感を感じることはまれで、それを文章にするとわざとらしくなってしまいます。

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アラメルモ
(2017-12-08)

癖のある文体には注文を付けたい点は幾つもありますが、記憶の中から観念的に捉えた物質の意味。実存に置き換えたときの情念との関わりを手繰ろうとして読めてきます。なかなか佳いと思いました。

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ふかお
(2017-12-08)

アラメルモさん、お読みくださり、ありがとうございます。

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m.tasaki
(2017-12-09)

学校の敷地に埋めたタイムカプセルの詩ですね。 幼少期の独特な世界観が、巧みに表現されていて、私も見習いたいと思いました。 記憶は物質に込められるのか、物質に惹き起こされるのか、記憶自体が物質なのか、思索に引き込まれます。

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ふかお
(2017-12-09)

m.tasakiさま、お読みくださり、ありがとうございます。 タイムカプセルの詩であり、本文中の、密閉すべき鋼鉄箱に入れるとは、幼児期との隔絶を意図して記述しています。

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百均
(2017-12-20)

セミの孵化と、タイムカプセルという組み合わせが面白かったです。セミは七年地中に埋まる訳ですからね。という発想が面白かったです。案外ありそうで無かったなぁと。そこから色々と意味を引き出せるように、かなり汎用性のある表現の発見だと思いました。そこがつかめると一気にするっと読めて、ああ、いいなぁと思いました。 物質と記憶とあるように、記憶そのものを思い出すには何かしらの媒介が必要ですよね。その媒体たり得ていると思いました。

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