どうでもいい路地裏が愛おしい
横目に過ぎ去り六秒後 脳裏をかすめ
次の間には記憶通り十番地 路地に入り
中央で立ち止まる
右に雨どい
左に小窓 突然開き
腕を掴み引きずり込む魍魎
いやしないと 三秒間の妄想から還ってみれば
前脚一本後ろ脚二本 ずぶ濡れの生き物
ぼやけた形でいつやら前方に佇んでいる
くっきりと見えてきた
猫だ 野良か?愛玩か?
近づいていくと猿になった 溺れていたのか?
と思えば飛蝗になった
すると さっきの雨どいから
蛙が足元を素早くすり抜け襲い掛かっていく
跳躍勝負を観てみたいものだ
その翅も舌も引っ込めて
純粋な脚力の戦いだ
とはいえ 体格や状態を比べると
飛蝗の方を贔屓してしまいたくなる
「やせ蛙 負けるな」という声もある
確かに骨が浮き出ている
どう転ぶ?
どっちに土が付く?どっちが殿様だ?
考えている隙にどんどん遠くなっていく
追い掛ける気は起きない
ただ向こうには進めるようだ
みるみるうちに また猿になる
先導ご苦労様 貝には気を付けて
そして とうとう猫になる
尾は何本だか分からない
すっかり姿が見えなくなった
路地を出て 戻ってきた現在通り八番地
茶店の硝子に映る空を横目に家路を急ぐ
作品データ
コメント数 : 9
P V 数 : 1688.3
お気に入り数: 2
投票数 : 8
ポイント数 : 6
作成日時 2022-11-01
コメント日時 2022-11-15
#現代詩
#縦書き
#受賞作
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 4 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 6 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 4 | 4 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 6 | 6 |
閲覧指数:1688.3
2024/11/21 22時54分17秒現在
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貝には気を付けて 理由がわからない。
1お読みくださり有り難う御座います かの猿は案内役でありますゆえ
0実に小気味良い語りですね。散歩というより遊歩、読むと気持ちが弾みます。
1お読みくださり有り難う御座います どうでもいい路地裏一点に意識を巡らせていた為、語り手の歩く様には目を向けられておりませんでした そこに関心をお寄せいただき、嬉しく思います
0とてもおもしろかったです。路地裏といえば、普段は居酒屋のことしか空想しない私ですが、今夜は同じ「殿様」を名乗る両者の対決を真剣に空想してみました。 でも、虫が苦手な方は、トノサマバッタをGoogleで検索しない方がいいです。いきなりリアルな3D画像がでてきて、それこそ、 >腕を掴み引きずり込む魍魎 これより私は怖かったです。 すごく真面目に考えると、トノサマバッタもトノサマガエルも路地裏には生息しないんですけど、空想だから何でもありです。 少し近づくと猫に見えて、もっと近づくと猿に見えて、RPGゲームのような感覚になりました。(正確に思い浮かんだのはファイナルファンタジー。) >追い掛ける気は起きない >ただ向こうには進めるようだ ここが、いかにも空想っぽくて好きなのですが、 >純粋な脚力の戦い この結果は私が明日見てきます。明日の夕方、路地裏がたくさんある通りに用事があるので、うまく空想できればも勝敗が見えるかもしれません。 でも、本当は蛙も猫も猿も飛蝗も、みんな人間なのかもしれないと予想しています。
1お読みくださり有り難う御座います 想像させてしまったら申し訳ありませんが、飛蝗は個体群密度(一定の範囲に生息する生物1種の個体数)の変化によって、同一種に異なる形態や習性が生じる、相変異と呼ばれる現象を起こすようで、変容していく生き物の姿の1つとして採用しました ほぼ文の順番通りにオブジェクトを浮かべていき、田舎生まれゆえ、雨どいから蛙を連想し飛蝗の天敵として据えましたが、どちらも名に殿様を冠する種がいることに気づき、2匹に共通する長所を活かして跳躍勝負の運びとなりました 当方、ファイナルファンタジーはスーファミ最後の作品であるⅥ以来、自らプレイしたことがないので懐かしく思いつつ、時折、Ⅶ以降のナンバリングのプレイ動画などを視聴し、幻想的な映像世界に没入しております 是非、2匹の勝敗の行方をお見届けください
1今更ながら、作品へのレスポンスとなっていたことに気づきました 失礼しました 改めまして お読みくださり有り難う御座います どうでもいい路地裏一点に意識を巡らせていた為、語り手の歩く様には目を向けられておりませんでした そこに関心をお寄せいただき、嬉しく思います
0小林一茶の句も出て来ました。普通の散歩だったのかもしれません。魍魎の存在に畏敬の念を持って居たのかもしれません。変化(へんげ)の連続。跳躍勝負は詩作者の妄想なのか、現実なのか。蛙とバッタの勝負。そして再びみたびの変化。「家路」が印象的でした。
1お読みくださり有り難う御座います。 小林一茶の句は、蛙を登場させた際に浮かび、どこかで入れたいと考えていましたが、跳躍勝負に持っていったことで、自分の中では割と上手く差し挟めたかなと思っております。 魍魎に対して、恐怖を超えて、確かに畏敬の念がある気がします。 最後は家路に戻れて良かったと、自分でも安堵しています。
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