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Tangerine Dream
腫れぼったい世界の空は 柑橘系の匂いと色で 眠り続けるアタシの中を 眩しい地下鉄が通過していく ねぇねぇ、まだ起きないの? ひからびた胎児が話しかける だめよ、まだ、 まだ早すぎる! だってアタシが目覚めたら 世界が弾けてしまうもの ありがちな話が好きな 伏せ目がちの神様が こんな宇宙にしちゃったの 無数のビー玉ころがして 遊びに興じる神様は ひからびた胎児の成れの果て ところで刹那と永遠って けっこうパンに合うらしいよ 千年前に無名の端役が 寝物語に教えてくれたの 惨い現実も残酷な真実も お腹いっぱい食べ飽きた だからアタシは目を閉じて みんなのために夢を見るの 誰か教えて始まりを そして終わりを連れてきて 誰か教えて有る意味を そして還して無の中へ 望まれなかった神話の 期待されない女神様は ディラックの海へ引きこもり バトンタッチを待っている
Tangerine Dream ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1017.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-03-01
コメント日時 2017-03-22
項目 | 全期間(2024/12/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
4行で進行していく地のフレーズと、サビのように置かれた6行のフレーズ。 思索的、感覚的なシャンソンを聞いているような気がしました。 永遠に目覚めることのない(目覚めた時は、自分が破たんする時)胎児を抱え続ける語り手の重さ、ディラックの海、思わずネットで調べてしまいましたが、「無」という羊水の中に漂い続けているような感覚がユニークだと思います。 「無」とか「有」というような抽象的、観念的なワードを、「刹那と永遠って/けっこうパンに合うらしい」というような、予想外の展開で「味わうもの」に変えてしまい、そのすぐ後に「惨い現実も残酷な真実も/お腹いっぱい食べ飽きた」と重ねていく。連としては途切れていて、全然つながっていないように見えるのに、刹那=惨い現実、永遠=残酷な真実、と、意味が内的に対応していくように思われ・・・転調して同じフレーズを繰り返すような、そんな感覚が得られると思います。ここはうならされました。 辛さを「食べ飽きる」ほどに味わってしまった主人公だからこそ、みんなの為に「夢を見る」ことができるのかもしれません。夢見ることを、仕事として引き受ける、そんな宿命を負っている、というべきか。その「しんどさ」に、ひそかにバトンタッチを、終わりが来ることを、待ちながら・・・。
0花緒さんへ 私は「夢沢那智」として活字媒体で書く時も、「无」や「もとこ」としてネット詩サイトで書く場合も、常に「わかりやすさ」を第一に考えるようにしています。私みたいに学がない人間が、本やネットで掻き集めた知識をひけらかしても滑稽なだけ。だから自作の詩を文字の読めないおばあさんに読み聞かせて、彼女がすべて理解できるまで表現を変え続けたという白居易の伝説を理想の創作スタイルにしています。 ただ、私は自らの無意識にある想い自体は単純でも安っぽいものでもないと思っており、同時にそれを表現するために難しい言葉は不要だとも考えています。今回の作品も分かりやすい単語と構成で、どれだけ深い所まで再現できるかを意識したつもりです。あくまでもつもり。ここ重要。あと、少女マンガは今や詩に負けない奥深さを獲得したと思っているので、その一節のようであるというのは私にとって最高の褒め言葉であります。あ、でも私という人間が掴みきれないのは、人として底知れないとかではなくヌタウナギみたいにヌルヌルと逃げ回るからだと思います。読んでいただいて、どうもありがとうございました。 まりもさんへ ディラックの海というのは、光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」で初めて知った言葉です。萩尾望都がマンガ化した時にも、ラスト近くで重要なキーワードとして使われていました。私は数学とか物理はさっぱりなので概念としては理解していませんが、「百億〜」でのイメージが強烈だったのでいつか使いたいと思っていました。 この詩で頭を使ったのは「刹那と永遠がパンに合う」という部分くらいで(あかんがな)、この言葉が浮かんだ瞬間に「やったね俺! 明日はホームランだ!!」と、年相応の喜びに包まれたのでありました。作品の解釈に関しては私の意図したことをほとんど読み取っていただき、まりもさんの読解力に感心するばかりです。読んでいただいて、どうもありがとうございました。
0もとこさん、こんにちは。 わかりやすさ、とても大事だと思います。一語一語は決してわかりやすくないのに、わかったつもりになってしまうところはうまく作者の術中に嵌っている気もしますが。 僕は、地下鉄の中で半睡半覚の状態でいる少女を思い浮かべました。無責任で目が笑っていないイケメンにだまされて頬をぶたれた後、着の身着のままで彼氏のアパートだかマンションを抜け出して帰って行く。かつては望んでいた妊娠に、今は不安として苛まれながら。少女のことだから、自分と世界が混同されてしまっているのですが、目覚めたら壊れるのは彼女にとっての世界ですね。座席での心地よい刹那の眠りを永遠のものとしたい、という欲求が黄泉国の食(じき)であるパンとなって少女の内なる霊体の食欲を満たしていくわけです。 ディラックの海、僕も漫画で読みましたよ!なんだったか、オリハルコンで作った天球儀のようなフレームの向こうに阿修羅一人が逃れていくんでしたっけね。この世界の存廃も大きな反応炉の中にあって、それを外から制御しようとしている研究者のような声が聞こえてきて終わるんでしたっけ?少女の夢としてはとてつもなく大きなスケールですね。
0Migikataさんへ 語り手を人間とするならば、やはりそういう解釈になりますよね。それにしても設定がリアルすぎ。「百億の昼と千億の夜」のディラックの海ですが、シッタータとオリオナエは消えてしまったはずなのに、阿修羅王が意識を宇宙へ拡散させた時に彼らの気配を感じるんですよね。これだけ絶望的に膨大な時間と空間を持つ宇宙が外の世界の反応炉における小さな乱れにすぎず、その外の世界の外にもまた……という仏教的な壮大さを持つSFでした。 望まれない神話における期待されなかった女神様は、ディラックの海で次のバトンタッチを待っている。もしも次の女神候補が現れなかったら、彼女もまた「ひからびた胎児」になるのかも知れません。読んでいただいて、どうもありがとうございました。
0これは凄くいい。正に「Tangerine Dream 」。適当に、緋色の夢とかなんとかカッコつけて言いたい。凄いなぁ、この幻想的な世界。レスする余地がないなぁ…あるとしたら、多分思い切って何連か削除して切り詰めたら、より幻想的になるだろうなという予感がします。これは個人的な好みでもうちょっと濃密なカルピスが飲みたいという欲求でしょうか。そしたら、多分読むのが大変になるかもしれないけど、多分最強というか僕の中では優勝していた。もっと読みたい。
0hyakkinnさんへ 気に入っていただいて素直に嬉しいです。確かに削ろうと思えば何とかなるんですけど、この歳になるとカルピスも薄めが美味しいと感じるのです。この詩はタイトルが先に浮かんで、そこから連想される言葉のパーツを元にして一気に書き上げたものです。 ところで今さらなんですが、皆さん「Tangerine Dream」がバンド名だということをご存じなんでしょうか? 私は彼らの音楽はもちろん、バンド名から連想される色彩のイメージが大好きです。それはビートルズの「Lucy in the Sky with Diamonds」に出てくる「ママレードの空」という言葉にもつながっていて、今回の詩における柑橘系の色と宇宙の闇のマーブルの材料になりました。読んでいただいて、どうもありがとうございました。
0読者の皆さんにはイミフな固有名詞が続くと思いますが、勘弁してください。↓ 『Tangerine Dream』というタイトルをみて、既視感に襲われた。これはなんだっただろうと・・ 渡辺美里の歌?もしくは、佐野元春が「新しい航海」という曲のデモ版で呟いてたアレ?いや、そんな80年代の主流で聴いた言葉じゃない。たしか、渋谷陽一さんがロッキングオンでラジカルやらなんちゃら云っていた頃に耳にした言葉だ。なんだったけかな。。たしかね、ギタリストなんだ、神経質そうなギタリスト・・ そうだ!ロバートフリップ! キングクリムゾン! プログレ! 失礼しました。まあ、いわゆる、そういう作品ですよ。 その・・一度、パンクムーブメントによってロック(死語)が解体されたんです。で、そのパンクが敵視してたのが、プログレなわけです。(これは平たく話す三浦の持論)で、なので、元パンクスの私からしますとですね、本作『Tangerine Dream』は破壊対象です。そこで、作中のプログレ仕様言語は私がパンク言語に置き換えます。 『伏せ目がちの神様』⇒泥酔した神様 『千年前に無名の端役』⇒バッドエンドで有名になった死体役 『期待されない女神様は ディラックの海へ引きこもり バトンタッチを待っている』 ⇒権力にのさばる王様は ドーバー海峡へ放り込め ダッチワイフに手錠しろ 作者もとこ様、思わずダイブ、やっちゃいました。大変失礼しました。
0三浦果実さんへ 渡辺美里ですか。ドリームつながりなら「ライオン・ドリーム」とか。色彩のイメージなら「Born To Skip」かなあ。佐野元春ですが、あの曲が入っているアルバムでは「雨の日のバタフライ」が一番好きです。雨の日のイメージを見事に表現した曲だと思うのです。彼の曲のイメージで一番近いものを選ぶとすると、画期的なポエム・リーディング・カセット「エレクトリック・ガーデン」に収録されていた「リアルな現実 本気の現実」ですね。 プログレへの言及ですが、そもそも「Tangerine Dream」というタイトル自体がジャーマン・プログレの代表格のバンド名ですから、書いている時には彼らの「フェードラ」や「ルビコン」あたりの音のイメージがありました。同時に、ビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」の「マーマレードの空」とかも。 あとプログレとパンクの関係ですが、マイク・オールドフィールドはその潔癖な音楽性ゆえかパンクを毛嫌いしており、自分が所属するヴァージン・レコードがセックス・ピストルズと契約した時は激おこで最終的にレーベルから飛びだしてしまいました。圧倒的なテクニックと構成力が売りのプログレから、世の中すべてに不満を持つ街の若者が下手なギターをかき鳴らすパンクへと移行していったのは歴史的必然だったのかも知れません。本来、「もとこ」はパンクが似合うと思っているので、そっち方面の詩も書いてみたいと思います。読んでいただいて、どうもありがとうございました。
0タイトルを見た瞬間に、お!と思いました。Tangerine Dream。クラウトロックに興味があります。 どこかからりとした印象を受けて好感を持ちました。二個優さんの「約束印の絆」とはまた違った種類の、魅力的な女の子のような詩に感じました。一人称があたしだからかな。 シュールな言葉が並びますが、なんだか上質な児童文学(冒険物)を読むような、わくわく感を感じながら読みました。 最終行の「バトンタッチを待っている」はループする世界という印象で、自分の世界観にもしっくり来ます。 ただ、私はそれを少なからず悲痛なものと考えているふしがあるので、こうして軽やかに描かれてると、ループに対するイメージがs健やかなものに変換されていくような気がしました。 今日は休日なので、分からない単語を調べてTangerine Dreamを聴いてみようかと思います。 言葉の選びと主人公の女の子がとても好みな作品なので、繰り返し読んで、意味を想像したいです。
0白犬さんへ 作品というか、語り手である女の子をこんなに褒めていただいて、夜勤続きでヘロヘロな心と身体も活力を取り戻す思いです。クラウトロックに関してですが、私の世代だとジャーマン・プログレという呼び方が主流でした。タンジェリン・ドリーム、カン、グル・グルなど代表的なグループはどれもお気に入りですが、個人的にはクラフトワークが一番好きです。彼らのサウンドの中にある無機質な叙情性を、いつか詩に変換できたらと思っています。 これまでの自分の音楽鑑賞歴を振り返ってみると、イギリスとドイツのアーティストが多い気がします。でも読んでいただいた方はご存じの通り、「ひからびた胎児」は当然あのエリック・サティからきているわけで、ここで「フランスじゃねーか!」と突っこんでいただけると嬉しいです。 ループする世界観というのは、確かに希望にも絶望にもなり得ますよね。今回は、けっこうヘビーな運命を背負った女の子を、なるべく軽やかな感じで描きたいと思っていました。その辺をきちんと読み取っていただき、嬉しく思います。読んでいただいて、どうもありがとうございました。
0いきなり結末部分について触れるのですが、「誰か教えて始まりを」の連は一体誰の声なのだろうかと考えました。そして、「望まれなかった神話の」の連も同様に誰の視点から見た世界なのだろうかと。特定はできないのですが、「誰か教えて始まりを」というのは、アタシの声でありながらも、もとこさんの声でもあるように思えるのです。最後の連における「期待されない女神様」は「アタシ」であって、それまでは、アタシ視点で詩行が展開されていたのに、そのアタシが女神様という三人称になって俯瞰された世界へと展開されている印象を持ちました。 「アタシが目覚めたら/世界が弾けてしまう」のは、きっとアタシが神様の一種、もしくは自意識によって神様だと思い込んでいる存在なのでしょう。そのアタシと対比されている「伏せ目がちの神様」や「ひからびた胎児」の行ったことや言ったことに、アタシは納得がいきません。ただ、このアタシに問いたいのは、目覚めたら世界が弾けてしまうということを本当に知っているのでしょうか。世界が弾けたらアタシもそこに存在できないのではないでしょうか。それとも、世界が弾けてもアタシは神様だから世界の外に存在するものとして存在し続けられるのでしょうか。 「惨い現実も残酷な真実も/お腹いっぱい食べ飽きた」のは、やっぱりこのアタシは神様としていろいろなことを見てきたという自負を表しているのでしょう。食べ飽きた=見飽きたからこそ、現実や真実を見るのではなく、目を閉じて夢を見るのでしょう。 そんなアタシは見飽きた現実や真実をそれでも見続けないといけない宿命にあるから「誰か教えて始まりを」という連の欲望を抱くのでしょう。神様はいつまでも生き続けなければならないから、始まりも終わりもなく、ただ有るのであって、無になることもありません。 このように考えると、やはり最終連の女神さまが「バトンタッチを待っている」のもこの宿命から逃れたいアタシがそこにいるように見えるのです。
0なかたつさんへ 最終二連の解釈は、三人称への移行も含めてほとんど私の意図した通りです。ここまで作者の希望通りに読んでもらうと、嬉しいのと同時にちょっと気恥ずかしい感じでもあります。 佐藤史生の傑作SFマンガ「ワン・ゼロ」には「打天楽」という続編があるのですが、その中で中国の伝説に登場する鰥(クワン)という魚が出てきます。この魚はずっと眠っていて、その夢がこの世界だというのです。だからクワンが目を覚ますと、世界が終わってしまう。胡蝶の夢にも通じるSF的な発想です。この詩の語り手が本当に女神なら、「バトンタッチ」の時は私たちの宇宙の終わりということになりますね。読んでいただいて、どうもありがとうございました。
0天才詩人さんへ 御指摘の通り、第1連と第2連の間のつなぎ方はちょっと甘いかなと思っています。その一方で、唐突な場面転換のイメージだからええじゃないかええじゃないかよいよいよいよいと開き直る自分がいるのも確かです。全体的にはタイトル通りタンジェリン・ドリーム的ですが、地下鉄の部分だけは意図的にチューブウェイ・アーミーの「フレンズ」あたりのイメージを挿入しているつもりです(すごーい!)。結果的にこの意図が伝わらなかったのは、私の力量不足のせいです。読んでいただいて、どうもありがとうございました。
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