別枠表示
友達
友達が海辺だった。ぼんやりと暗い真昼の部屋で、どこから迷い込んできたのだろう、蟹が蠢いていた。冷たく静かなベッドの上で、蟹の群れが、友達の中へ滑り落ちていく。少しだけ話をすると、友達は用事を思い出して、消えた。
友達 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2139.6
お気に入り数: 2
投票数 : 4
ポイント数 : 30
作成日時 2021-09-23
コメント日時 2021-10-08
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 10 | 10 |
前衛性 | 6 | 4 |
可読性 | 6 | 6 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 7 | 6 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 0 |
総合ポイント | 30 | 26 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 3.3 | 1 |
前衛性 | 2 | 2 |
可読性 | 2 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2.3 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0.3 | 0 |
総合 | 10 | 5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
私が生まれ育った場所は海がなかったのですが、 町の真ん中に、南北を縦断する川があって、 思えば私の友達は川でした。 学校、デパート、図書館、河川敷での野球 どこへ行くにしてもいつも一緒でした。 そうか、あの川は友達だったんだ、と、 記憶と景色を新しい光で彩ってくれた、 とてもうつくしい詩です。
2もう少し長く聞きたいような気がしました。妄想的で孤独な人物像が浮かびます。人が前にいるのに遠いよりは森で一人いる方が衛生的かなぁ、切ない、雑踏の孤独などを思います。蟹は無力感の表われな気がします。
1友達を海辺と表現するのはすごい素敵なアイデアだと思いました。それだけに私ももっと長いものも読みたいと思いました。 波のようにすっと訪れて去るのが人柄のようであり,いつもどこかでつながってるような縁めいたものを想起させます。私の場合,最初は蟹は友達の前触れ程度に読んでいましたが,確かに暗い部屋に這ってる蟹は陰の雰囲気がありむしろ部屋の主人の属性を思わせるかもしれません。
1ありがとうございます。 海辺は僕にとって身近な存在でした。数少ない友達の中で、最も大きな友達です。
2とても静謐な、ほの蒼い室内 ベットの上に蟹の群れ 幻を見ているような不思議な感じがします。 海辺が友達で、話をして、用事を思い出して、、 シュールで謎めいた光景。いいですね 綺麗にまとまっているように思います。
1潮の満ち引きをあらわしているんでしょうか?きれいな表現だと思います
1蟹が蠢いて友達(海辺)の中へ滑り落ちていくという情景が不気味でありながら美しいです。この話者は一人きりを好む人間で、海辺でそれこそ水平線などを眺めるのがただ一つの楽しみであり休息だったのかもしれません。しかし蟹。この蟹が何を表しているか分かりませんが、恐らく話者と、友達としての海辺の仲を切り裂く何がしかの要因と考えられもします。それによって海辺の消失にまで繋がってしまう。不穏で寂しげ、また孤独。それとももう一歩踏み込めば、この詩は海辺ほどの安らぎを与えてくれる友人が、蟹と表現される何かの障害に阻まれて失われていく様を描いたのかもしれません。何れも想像であり推察の域を出ませんが、友達と話者との仲が何かをきっかけにして失われる光景が謎めいて描かれており、一つ一つの単語が実際には何を意味しているのか考えてしまう作品でした。喪失からくる孤独が余白を以て描かれた秀作かと。「人は謎を好むbyサルバドール・ダリ」
1友達はレセプターだったのかも知れません。蠢いている蟹は癌化したあるもの、なので消えたとは死んだと言う事の遠回しの表現ではなくて、勿論詩の表現通り用事を思い出して出かけて行ったので居なくなったと言う意味での「消えた」でいいと思うのですが、癌化した蟹、あるいは癌そのものの解釈を巡って、その解釈がこの詩の読解のキーを握っていると思いました。
1「友達が海辺だった。」これが突然だ。突然よりも尚のこと突然のように、つまり、何でもない生きちゃった蟹の蠢きと同じく生きちゃったってこと、か?
1いい終わり方だと思った。
1