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Cocco/少女、の祈り
(to Cocco and a girl) 音がしとしとと空間を満たして 聴衆の頭を濡らす したたり落ちる、しずく (わたしの歌を聞いて欲しい、から、この白い花束を手向ける) 一つとなった聴衆が ばらばらになり始めて 歌姫が声高に、祈る (祈りというのは、パターンから構成されている。主への呼びかけ、感謝、報告、願い、締めである。これを覚えておけば祈りができるんだよ) 「天におられるわたしたちの父よ 「御名が聖とされますように 「御国が来ますように 「御心が天の行われるとおり (…) 「わたしたちの罪をおゆるしください 「わたしたちも人をゆるします (…) (口語のダメなところは、この部分なんだよ。なんだよ、人をゆるしますって。どの立場で言っているんだよ (…) 「これらのことを主イエス・キリストの御名によってお願いいたします (お願いいたします 「アーメン」 「悲しみはいらない、やさしい歌だけでいい、あなたに降り注ぐ全てが、正しいやさしいになれ」(Cocco「ジュゴンの見える丘」より) ばらばらになった聴衆から現れた少女 の心に届いた祈り 歌姫は まるで水をかき分けるように 両手を広げ、体を揺らす 彼女の羽根が (拒食症と自傷行為の痕が見える)体から はえてきて (ああ、そうか 雨が強くなってきた その理由が わかった) 祈りが羽根の力で天に昇り 雨がざあざあと泣き始めた すると 少女の目が濁ってきたのは そこに雲がはえたからだ 目からしたたり落ちる あめ あ、め 歌姫の祈りを聴き終えた人々は 「強く儚い者たち」となって 次のステージへと歩みを進めるが 少女が濡らした地に 足がつかない ああ、ぼくは 「焼け野が原」にいるのか 「抱いて、ちゃんと抱いて、この体に残るように、強い力で、もう泣かないでいいように」(Cocco「焼け野が原」より) (歌姫の祈りが、少女の祈りと重なって、少女の目から、雨が降った、のか (地に足がつかないから、立ち止まって、祈る、 この焼け野が原に、いつか、きっといつか、めぐみ、というものが、はえますように、その前に、今日ここで、雨に濡れたことを、感謝しています、だから、お願いです、この焼け野が原にめぐみをください、したたりおちたしずくを、拾い集めますから、めぐみを、ください、この祈りを、御名によってお願いいたします、アーメン) 歌姫が歌い始める前に ステージで手向けられた白い花束は きっと したたりおちたしずくを 拾い集めて 育てた ひとつひとつの花の集まりだ (どれだけのしずくを集めれば、花を咲かすのだろうか 少女の祈りが何であったのか わからない いつか、叶うのだろうか (きみが祈りを叶えたいのならば、いままでしたたりおちたしずくを、拾い集めればいい、しずくが足りなければ、ぼくのしずくを貸そうと思う、だから、ぼくのしずくが足りない時は、きみのしずくを貸して欲しい、祈りが叶えば、もうしずくはいらないんだ) (もう、泣かないでいいように)
Cocco/少女、の祈り ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1210.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-07-30
コメント日時 2017-08-23
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「(もう、泣かないでいいように)」という最終行が、響いたか響かなかったかで言えば、それほど響きませんでした。そもそも冗長な作品に思われ、読んでいる途中ですでにやや気持ちが醒めてしまってもいました。しかしそれは、Coccoという歌手のことを、私が知らないからかもしれません。また、これは私の全く主観的な感情でしかありませんが、今作のように希望を描こうとする作品のことが私は好きですので、好感度の高い作品ではありました。
0おぅ! なつかしいですね~。 曲を知っている人にとっては、自然に彼女の歌声が重なる作品ですから、面白く読めるんでしょうね。 「知っている人」「知らない人」でぜんぜん読み方が違うっていうの、実感しました。
0VIP KIDさん 冗長的と言えばそうかもしれません。ただ、これらのことを表現するためにおそらく結論はなく、生まれたままに書き上げました。 Coccoという、どうしても固有名詞の持つ引力にひかれてしまうのは計算違いでした。 希望というのは、語り手にとってなのか、少女にとってなのか、Coccoにとってなのかで印象が随分と違うように思われます。 花緒さん Coccoの歌を聴いた時、どうしても祈るということを考えざるを得なかったのです。 それを何とか表現したく、また僕自身がかつて祈る人として熱心であったことを盛り込んでみました。 田中修子さん 僕としては、知らない人にも楽しんでいただけるようにしたつもりでしたが、それでも、知っている人だとどうしてもより楽しんでいただけると思います、ありがとうございます。
0この詩を読んで、時間感覚について考えました。僕は、良い詩の鑑賞法は、時間をどう色づけるかということによる ものだと思っていますが、なかたつさんのこの詩は、時間を良い具合に染めてくれました。結局のところ、 メッセージを押し付けないコントロールがある点で、なかなかないような詩ですし、破たんしないように丁寧に作って おられるようで、鑑賞が美しくできました。 >人をゆるしますって。どの立場で言っているんだよ ここが、少し強い意見だと思いますが、愛憎なんだと考えると、ここを強く感じた語り手が、Coccoの立場に立って、 彼女を大切にしているような気がしました。 >雨が強くなってきた >その理由が >わかった) 自然と神と歌姫と祈りとある少女。 この詩には、地上楽園を見出そうとする切実な思いが感じられます。 全体に、構成がうまく、静謐が最後には感じるようになっていると思います。それはきっと、読者が祈りを思う ようになってほしいな、少なくとも、祈りの心だけは誰かが救いださなければならないな、というような、 控えめな語り手の世界が、静かな声だが確かな存在感として、現れていると思いました。
0黒髪さん さっそくありがとうございます。 自分で自分の作品を見返すいいきっかけになりました。 全体として、的を射ているように思いました。 一つ一つの出来事は点として、偶然の出来事として記憶に残るものですが、それらの点はきっと歴史や過去をはらんでいて、点と点が時間的にも空間的にも結びつくようなことを意識して書いています。 ついでに、祈りとは、自らの何かが変わることへの願いもありますが、この作品ではきっと、自己犠牲、と言ったら言い過ぎですが、誰かの何かが変わることを願っているのでしょう。
0雨がざあざあと泣き始めた すると 少女の目が濁ってきたのは そこに雲がはえたからだ 「目」の中に雲がはえた、というのには、 今までの詩にはなかった、ひと味違う表現力を感じました。 雲が「映えた」なら、ありきたりかもしれませんが、 雲が「生えた」のほうだとしたら、 大きな瞳の中に、さあーっと空をはしる雲が映った、という意味で、 ここに至るまで 偶像的に描かれてきた少女が ここで一旦、生身の人間として再帰・呼吸しますから、 他人事として流れていた映像に、1ヶ所、 命を感じる部分でした。
0渚鳥sさん 「はえた」がひらがななのは、もちろんわざとです。 どちらでもとっていただけるようにと。 僕がそれを現実のものとして、見ていたかはさておき、少女が雨の中泣いているのを見て、即座に、こういった映像・言葉が頭に浮かびました。
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