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わたしはわたしではなかった。これからもずっとそうだ。
わたしが路上に落ちている。わたしは誰かの躓きの石になりたい。 果たしてそれが本当にわたしの願望か。不安の花が、山茶花の花が首からもげて上昇していく。 ビニール袋の結び目を解いて、肉や野菜や穀物の食べ残しの中から汚れた魂が這い出てくる。魂は物理的に汚れている。それが何の魂か、わたしは知らない。 マリーン。海からやってきたもの。色のない記憶。いや、感覚のすべてから切り離された記憶。 わたしがわたしの股間をいじるとき、そういう記憶にわたしがなっていく。 当然濡れている長い指白い指。 海からやってきた。 光あるうちに光の中を歩め、すぐに暗くなる。短日。鳥は嘴から先に夜へ突っ込んでいく。羽を開き羽を閉じ、行先にある意味は総て無効化されていると、淋しくも知っている。 鳴く。そういうものだから。 神よ。 裂かれた生木の折りくちに、かつてわたしは性的な喜びを感じたが今はそういうことはない。なぜそんなことがあったのか。検証しようとし、それをなし得ないで路上に倒れ、頭を打っているのが今だ。 あなたはまだ世界の意味を問う歌を歌っているように見えるが。実際そうなのか。 眼の先にビニールで赤と黒に被覆された鋼線が絡まっており、その丸く絡んだ有様は何かのようだ。何だろう。 冬の薔薇。言葉と存在と、現象としての冬の薔薇。魂。 そしてわたし。 わたしというわたし。わたしと言えないわたし。わたしと言わないわたし。 回転扉を半透明の巨大な昆虫たちが列をなして通り過ぎていく。 わたしとわたしたち。
わたしはわたしではなかった。これからもずっとそうだ。 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1793.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 26
作成日時 2019-12-16
コメント日時 2020-01-23
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 16 | 15 |
前衛性 | 4 | 4 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 5 | 5 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 26 | 25 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 2.7 | 3 |
前衛性 | 0.7 | 0.5 |
可読性 | 0.2 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0.8 | 0.5 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 4.3 | 4.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
うまく説明できないけど、引き込まれて読みました。
0人間は考えることを放棄し、産まれた時から存在していた社会の仕組みの中に組み込まれてゆく。そんなのはわたしではない。わたしはたった一人の、誰かの心に住み着けるようなわたしでありたい。でもわたしってなんだろう。そもそもわたしを確立したからって世界がぐるんと一転してしまう訳でもないだろう。こんなとりとめもないこと考えたってきりがないからとりあえずはあの鳥のように終わり( 死 )がくるまで歩き続けている。そんな風に読みました。深読みしようとすればするほど広がりをもって、襲いかかってくる。だけどむなしさの表面だけをすくいとるように読んでも十分おもしろい。素敵な詩でした。
0蕪城一花さん、コメントありがとうございました。 引き込まれたといって頂けて嬉しいです。 夏野ほたるさん、コメントありがとうございました。 作者も気付かないような部分まで、丁寧に読んで下さっています。意識と無意識を行ったり来たりする文章のようなものを書こうとしています。
0引き込まれますね、抒情性。前衛性もありますね。推したい一編。
0エイクピアさん、コメントありがとうございました。 書いたかいがありました。勢いで書いたものなのでこれでいいのかな、とも思っています。
0とても抒情的で好きです。力強さを感じます。
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