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疫病神
おびえた愛想笑いで今まで生き延びてきたから、「どうしたい?」って聞かれてもねえ。 ぼくがカチンとこなかったらそれでいいよ、怒り方なんてもう思い出せないけど。 周りは静かなぼくを「優しい」なんて言うけど、それは違う。 そのうちどっかで、頭のどっかで何かが弾けて、ぼくは人を殺したりするんだろうね。 怖いね、まったく。 テレビで見かける犯罪者の顔。ほとんどがオナニーしたあとのぼくにそっくりで嫌になる。 辛酸を舐めきったようでいて、実は世の中を舐めきっていただけの、何にもしていない顔。 でも辛いことばっかり味わったって、疫病神にさえなれやしない。嫌になる。 君がたびたび見せる、何かを隠したような笑顔を見るたびに、 ぼくは体のどこかが弾けそうになって、何かを抹殺したいような気分になる。 でもその何かは、気づいたらいつもぼくにすり替わっている。 窮屈だな、と思う。 昔なら海の底を歩けるほど自由だったのにね。 みんな青色を疑って空に消え失せてしまった。 だからここにはどんな悲しみもありはしない。 ありはしない。 でも、枯れそうな花を握って歩いてきたぼくらの目の前には、 ただぼんやりとした焦燥が横たわっていて、 そんなとき君のことをちょっと、抱きしめたくなる。 ただ一緒に居たいだけなんだ。 たとえそこが深海であろうとも。
疫病神 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1996.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 15
作成日時 2019-05-06
コメント日時 2019-05-26
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 7 | 6 |
エンタメ | 5 | 4 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 15 | 13 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0.7 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2.3 | 1 |
エンタメ | 1.7 | 1 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0.3 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 5 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
自分が人と違うと考える鬱屈が、鬱屈業界の凡庸な程度だったりすることがあり、「疫病神さえなれやしな」くて、更にこじらせるも、異常と言うには遠い。 今では「深海」で呼吸ができない状態で、 アンニュイより黒くて、発狂よりグレー。 そんな印象です。
0何か惜しい印象。思ったことを、感じたことをただ書き連ねているという感が若干拭えない。個人的な闇、鬱屈を描くにはもう少し詩として、読み物として面白くする工夫が必要かなと思いました。やや辛口で失礼を。
0拝見しました。 >テレビで見かける犯罪者の顔。ほとんどがオナニーしたあとのぼくにそっくりで嫌になる。 この表現が、タイトルとかみあっていていいなと思いました。 すこし情景描写が少なく感じたので、それを入れるともっと読んだときイメージしやすくなると思いました。
0生きてきた「流れ」を感じさせる詩。 「疫病神」とタイトルをつけられておられますが、タイトルは「深海」の方がいいかもしれないと思いました。 「ありはしない」「ありはしない」と繰り返すことで、鈴木歯車さんの哀しみが伝わってきます。 私がタイトルが「深海」の方がいいと思ったのは、怒り方も思い出せず、テレビで見る他人の顔に自分をオーバーラップして、何にもしていない顔と断じ、「でも」と続き、嫌になる。「でも」と続き、窮屈だなと思う。 ここで、一行開けると、その前と後との詩の変わり方がより明確になる様に思います。
0今の世の中の窮屈さや鬱屈など、とても共感できる内容だと思いました。 客観的な言葉や、語り口の妙味など詩人としての才を感じさせます。偉そうですみません。 前半の語り口が面白いので、そのトーンで独白を続けたほうが良かったかな?とも思いました。
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