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探せ。
今日の私が生まれたのは、昨日の私からです。 でも私、昨日のことは全く覚えていません。 ひょっとしたら コーラを買って飲んでいたかも知れないな。 濃緑の生臭い空気の中で、硬貨を取り出した。 小銭入れには溢れかえるほどに 百円玉が詰まって、ぎんぎん音を立てていた。 肩の上の鸚鵡が もうだめだ。人類滅ぶ。 って鳴いているのを聞きながら ダイエットコーラのボタンを、ひたすら プラスチック製でバックライトの仕込まれた コーラのボタンを、何度押したことか。 何度。 南から大風が吹いて、落葉樹の若葉の音。 耳元の羽音、頭の奥でモーターの回る音。 貨幣価値が落ちて砕け散る音。 身体の中でDNAの螺旋がほどける音も 青空が一瞬で凍る音も 今、まだ耳にあるのに それが本当に昨日のことか わかりません。全く覚えていません。 アステルパーム、保存料やさまざまな香料。 産業の精華が緑色、黄色の翼を広げ 炭酸の微細な泡のように舞い上がり 私を夏の底から昇天させる。 もうだめだ。人類滅ぶ。 明日、私は官能の天界に転生してるのに 明日を生む今日の私のお母さんは昨日で 昨日のことが全く思い出せない。 コーラを買ったなんてこと、絶対ありません。 もし、あなたが私に向かって お前きのう後藤に乳首を摘ままれて あふん、あふんっていってたじゃん なんていうなら 私、ためらいなくあなたを刺しますから。 私を探して下さい。 指を一本一本切り落として 胴を鋸引きにして 頭をまさかりで割って ミキサーで砕いてしまおう、私の身体など。 もし、もう一度、生まれ変わるのなら 私、柔らかくて形がはっきりしないものに なります。 紫の大きな尾びれをひらひらさせて 水圧の高い深海へ逆さまに潜っていく 魚のような地球外生物になりますから。 よろしくお願いします。 昨日の私を探しなさい。 探せ。 もうだめだ。
探せ。 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1242.8
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-08-18
コメント日時 2018-08-19
項目 | 全期間(2024/12/27現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
コーラになぜだろう、景色が見えなくて、これがオランジーナになるだけでなにかが変わる気がしまして、それはきっと食レポのそれと似ている気がしました。
0かるべまさひろさん、コメントありがとうございます。 う〜ん、オランジーナはお洒落すぎませんか?このコーラはコカコーラのイメージではないんです。どちらかというと、場末のサンガリアって感じですね。サンガリアにコーラがあるかどうかは知りませんが。 食レポとすると、蛭子さん以外には考えられませんね、主人公は女性だけど。
0”百円玉が詰まって、ぎんぎん音を立てていた。”ていう部分はこういう言い方もあるのかと勉強になりました。 ぎゅうぎゅうとかキンキンとかカラカラとかにしてしまいがちだけど、そこをぎんぎんって表しているのは僕には思いつかない言葉だなと思ってすごいと思いました。
0こ、この作品は、前作からのスピンオフ、河原弥生先輩がまた後藤君をいじっている物語であることを、右肩ヒサシファンとしてはコメントしておかなければならない。
0あかん、これは中毒性があります。肩の上の鸚鵡がからのコーラのボタンを押して、押して、押して、、、 三浦さんが前作との繋がりを言われていたので読み直し、また読んで、頭の中に彼、彼女たちがぐるぐるしてます。唸りすぎで壊れそうです。
0柿原 凛さん、コメントありがとうございます。 ご指摘下さった部分は、僕も気に入っている表現です。「銀」「目がギンギンに冴えている」などのイメージを借りて作ったオノマトペなのでした。 金属的な質感、重量感を視覚と聴覚、触覚から援用したものを統合したつもりでいます。
0誰かの内心の発露の受け皿として作品が存在価値を与えられるなら、これは捻転する誰かの内心という荒れ球を苦心惨憺リードして試合を作る優秀なキャッチャーですね。でもきっと試合が壊れて終われとも、内心考えている節がある。グレートリセットのために。本当なら俺がマウンドに立っているべきだったし、立っていたはずだろ?という無念を感じる。もうだめだ、と言い残してマウンドを下りられるやつに俺の気持ちは分かるまいという凄味があるッ! >私、ためらいなくあなたを刺しますから。 とは河原先輩(キャッチャー)が須田(一塁ランナー)に向かって発した言葉であるように思えるが、実際は不甲斐ない後藤(ピッチャー)に向けて発したそれなのかもしれないと思うと、 >指を一本一本切り落として から始まり >魚のような地球外生物になりますから。 で受ける河原先輩の独白を、とても親しみをもって受け止めることができる。 昨日が終われば、今日のスコアブックは、昨日の結果に関わらず白紙となるものだろう。にも関わらず、のっけから「もうだめだ」はいかんでしょとは思えないのは、本当は人類滅べと宣いたい河原先輩と口唇術でやり取りするベンチの苦労が手に取るように分かる気がするからなんだろう。
0序盤の「昨日のこと全く覚えていません」から「 あふん、あふんっていってたじゃん」付近までの流れ、あくまで冗談ですかイラッとさせられてしまいました。こう、ロジックが崩壊しかかってる人間の「私、ためらいなくあなたを刺しますから。」という攻撃性は極々一般的な(現代詩などには多分関わらない)人々をイラッとさせるのに充分だと思います(褒め言葉)。最後「もうだめだ」と考えるのをやめるかのような一節がありますが、右肩さんのツイッターを拝見して僕が思うのは、右肩さんは「またどうでもいいものを書いてしまった」なというものです(賛辞)。最後に「南から大風が吹いて、落葉樹の若葉の音 耳元の羽音、頭の奥でモーターの回る音 貨幣価値が落ちて砕け散る音」との音に焦点をあてた連はとても僕好みだと書いて締めさせていただきます。
0ひとまず、乳首を触ると出るオキシトシンという幸せホルモンには、子宮を収縮させる効果がありますので、女性が妊娠中に乳首を愛撫されたり自慰したりするのはよろしくありません。同じ理由で妊娠中に中出しされるのもよろしくありません、精液に子宮を収縮させる成分が含まれているからです。 ダイエットコーラの自販機は、語り手の女体の比喩。 【コーラのボタン】は、後藤に摘まれなかった乳首の象徴。 【炭酸の微細な泡のように舞い上がり/私を夏の底から昇天させる】 のはオキシトシンないし中出し精液、その比喩が 「自販機から出てこなかった(買えなかった)コーラ」。 比喩として【明日の私】を妊娠中である【今日の私】が 仮に、コーラで昇天した場合、 胎児である【明日の私】に危険が及び 【もうだめだ。人類滅ぶ。】 【今日の私】が人類滅びもせず生存しているのは 【昨日の私】が昇天しなかった証拠なので 【コーラを買ったなんてこと、絶対にありません。】 *** メロメロ病が治ったらまた来ます。
0たくさんの方にコメントを頂けてうれしいです。昨日は返信の途中で疲れて寝てしまいました。 三浦⌘∂admin∂⌘果実 さんw、コメントありがとうございます。 >河原弥生先輩がまた後藤君をいじっている物語 とすると、多少齟齬が生じるかも知れません。ちょっとキャラが違うかな。ま、別人でもいいか。とにかく後藤は不幸なやつでよしよし、と思いながら書いていました。 ファン宣言、ありがとうございます。信用していませんがw(もちろん本当であって欲しい)。 それで、なぜコメント冒頭でどもるんでしょうね?
0帆場蔵人 さん、コメントありがとうございます。 何も考えなくても、何処か気になっていつの間にか読み直している、という中毒文学を作れたらいいですね。 彼ら、彼女ら、帆場さんの頭の中でぎゅんぎゅん唸らせてやって下さい。お願いします。
0miyastoragemiyastorage さん、コメントありがとうございます。 甲子園、真っ盛りですね。テレビ画面を見るだけで暑くて。しかも凡戦だったりするとげんなりしますw。 おお、これは三人の心理ゲームでもあったわけですね。後藤だったら、酔った勢いでありもしないことを言い散らしてくだを巻きそうですから。 人の荒れ狂った心理を「詩」のかたちにまとめようとするのは確かに大変です。これを書いている「作者」も隠れた登場人物ですよね。
1stereotype2085さん、コメントありがとうございます。 イラッとする、というのは本当に「褒め言葉」だととらせてもらいます。実際、人生の大半はイラッとする何かを無理矢理口に突っ込まれて戻しそうになるような経験で埋め尽くされていますから。それが伝わったということですね。「思い出せない」というのは実は嘘で、忘れられないことを「思い出せないこと」にしてしまいたいという絶望があるのだ、と。そういう解釈、いいですね。 音のところ。主観にかかわらず入ってくる、モノの素に近い何か、が主体と癒着していく状態を書いたつもりでした。力を入れた部分です。
0澤あづささん、コメントありがとうございます。 返信、遅くなりました。 僕は女性の身体に対する知識はほぼないので、参考になりました。 「妊娠」は、書いた僕は比喩的な意味で用いていましたが、生々しい女性の現実として捉えると、また凄まじい解釈になりますね。面白いです。「明日の私」は「私」を託す子どものことだったのか。 コカコーラのボトルの形が女性のボディラインをモデルにしている、という話は良く聞きます。そのことは多少頭にありました。この作品は自己疎外がテーマになりうるでしょうか?自分が自分であろうとすればするほど、何かがずれていってどんどん自分が憎くなる。自我肥大した一般人の呻きを、身体を取り巻く外部の自覚の中に置いている。そういうつもりで書いています。自分というアイデンティティは昨日という時制の中で容易に見失われ、幻想と幻覚だけがのたうっていることをおおよそ自覚しながら生きている主人公です。
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