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abaddon
「それを掲げてはならない」{襤褸切れの赤旗 「それを説いてはならない」{錆釘に撃たれた両掌 「それを祈ってはならない」{量産される鉤十字擬き ――幽霊の悪夢、廻る七二の関節が軋む錆びた錻力。 右腕に吊り下げた老王の額を突き刺すは詩、死に滴る赤と黒、至る。痛る。 蛾蟲の大群を焼払う左腕には黒い猿の頭が牙を見せて嗤っている。 白塔を目指せ、塩の墓標を踏み拉き。禍として轟音を為し。 「有らん限りの憎しみを以て彼奴等の尽くを斬潰すべし」 臓腑に打ち込まれた鉄塊の柄に灯る反逆の音を聴け。 最早、伽藍堂の鎧に護るべき肉は無く、 ただ粘つく感情だけが灰の空を舞う鷹を射るだろう。 空虚に兆す漏斗型の聖職機たちは眼を輝かせて言う、 「心の貧しき者は幸いである」 「即ちニンゲンとは青き豚畜生の別名である」 食餌を待ち侘びる彼らが皮膚の剥された、識別番号付きの重い頭蓋を垂れるたび、 二一グラムの奇跡の価値が尻を拭く為の新聞紙と化す。 暗闇から射し出す筋張った掌に骨牌を託して河を渡る。 奈落の王殺しは巡礼する。 「詩を掲げてはならない」{襤褸切れの赤旗 「詩を説いてはならない」{錆釘に撃たれた両掌 「詩を祈ってはならない」{量産される鉤十字擬き 天使を殺し、辱め、掻き出し、喰らうために。 そうあれかし。 そうあれかし。
abaddon ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 940.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-04-08
コメント日時 2017-05-04
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
abaddonはヨハネ黙示録に登場する奈落の王であり、破壊と滅びの象徴。「錆釘に撃たれた両掌」とはキリストのことでしょうか。「青き豚畜生」とは、もしかしたらダンテの「神曲」に登場する高利貸し一族のスクロヴェーニかも知れません。「二一グラムの奇跡」とは魂の重さのことでしょうし、最後の「そうあれかし。」まで含めて全体的に極めて宗教色の強い詩のようです。 ただ、この詩は「人間への憎悪を描いた宗教的な物語」という単純なものではない気がします。私には「聖職機」が「生殖器」の意図的な変換に思え、その他にも様々な寓意的表現を駆使して詩や詩人に関する様々な状況への、皮肉や風刺をこめた作品に思えるのです。私の解釈の正誤はともかく、こういった文体の詩は実際に書いてみると想像以上に難しいものです。作者の豊富な知識と技量が、この詩の個性として結実していると感じました。
0コメントありがとうございます。 >私の解釈の正誤はともかく、こういった文体の詩は実際に書いてみると想像以上に難しいものです >「人間への憎悪を描いた宗教的な物語」という単純なものではない気がします 丁寧な読み込みに感謝です。答え合わせはしたくないので具体的には言いませんが、大体がご想像通りかと。詩を掲げたり説いたりすることで人格者ぶる蒙昧な大人たち、或いは自分自身もそうなっているのかもしれない恐怖と、自己を弁護するための大仰な言葉の鎧=伽藍堂の鎧に覆われているのは虚ろな自我でしかない、と。 >わたしには、なにが書いてあるのかよく読めない 言い訳がましいようですが、そのわからなさ、はったり、衒学的なものも、もしかすると作品として結実するかもしれない、と考えて書いています。ただそれが「宗教的モチーフへのやや専門的な知識」のせいなのか、「拙い文章力」のせいなのか、後者であれば直さねばならぬ課題点なので次回はそのあたりも明記して下さると助かります。
0全体に漂う終末(破滅)の予感、預言的な高揚感(人間以外の者から告げられた言葉のような・・・)、漢語の語彙や音感、撃たれる、軋む、突き刺す、といった動詞の強靭さ(表現主義絵画の色彩感やタッチの激しさ、のような)が、ひとつの完成度を持った作品に至らしめている、と思う一方で・・・その強さや烈しさの連続や多用が、大仰な、芝居がかった印象を生んでいるとも感じました。作者が意識的にドラマティックな情景構築を目指したのであるなら、あとは受け取り手の好みの問題ですが(モネが好きか、ココシュカが好きか、といったような)多くの人が《荘重な情景》と感じる詩的空間を構築したい、ということであるなら、強度を持った言葉の使用量について、再考する必要があるかもしれません。 特に考慮すべきは、音の喚起する多義性を引き出すための「掛詞」なのか、意味を無化して言葉の意味性(読者に与えるインパクト)を軽量化しようとするための「言葉遊び」なのか、判然としない同音異義語の多様です。(詩/死、至る/痛る:これは、文法的にかなり無理がありますね:伽藍堂/がらんどう、など)文語を使用し、全体に力のこもった、荘重さを目指した作品であるように感じるので、意味の軽量化ではなく、意味の多義性を目指している、と思われるのですが・・・ 襤褸切れの赤旗、量産される鉤十字擬き、こうしたフレーズの選択に、預言書的な終末観と第二次大戦の悲惨のイメージが重なりました。これから起こる(かもしれない)破滅の予示としての・・・預言としての詩、託宣としての詩、という古代からのイメージも喚起されました。 冒頭に「それ」と提示されたものを、最後に「詩」と種明かししてしまうことの効果についても、考えねばならないと思います。始めの方で「右腕に吊り下げた老王の額を突き刺すは詩」と述べている時点で、「詩」は世界を破滅から救う存在であることを予感するのですが、すぐに「死」と書き換えられてしまう。「詩」が「死」となって、破滅をもたらす者としての「老王」を突き刺し、死に至らしめるのか。「右腕に吊り下げた老王の額を突き刺す」この部分、右腕に老王が吊り下げられている、とも読めてしまうので(たぶん、詩/死を右腕に下げた戦士のイメージなのでしょうが)言葉のリズムや音感を重視するのか、意味の伝達を重視するのか、推敲の際によく吟味してほしいと思います。 後半で「即ちニンゲンとは青き豚畜生の別名である」と「漏斗型の聖職機たち」が宣言する。この時点で、滅ぼされるのは人間そのものである、という予告であると読みたいのですが、レスを拝読すると、「詩」というものを特別な力を持った、なにか神聖なもの、のように扱いたい衝動と、そうしたすべての欲動に反発したい衝動、その双方がせめぎ合っているように感じます。(詩を掲げたり説いたりすることで人格者ぶる蒙昧な大人たち、或いは自分自身もそうなっているのかもしれない恐怖と、自己を弁護するための大仰な言葉の鎧=伽藍堂の鎧に覆われているのは虚ろな自我でしかない、と。)大仰な言葉の鎧、そのことを自覚しつつ、その手法で表現する、この矛盾をどう解決するのか。あえて「どぎつさ」や「あざとさ」で勝負するのか、過度な動きや大仰なセリフを抑制するのか。難しいけれども、魅力的な課題を抱えた作品だと思いました。
0丁寧なコメントありがとうございます。 >音の喚起する多義性を引き出すための「掛詞」なのか、意味を無化して言葉の意味性(読者に与えるインパクト)を軽量化しようとするための「言葉遊び」なのか、判然としない同音異義語の多様です どちらも、といえばどちらも目指しているのですが、伝達したい「意味」のみを優先すると如何にもショボくなってしまい、やや無理をしてかさまししている、というのが正直なところかもしれません。読解してくださった内容を見る限り自分の伝えたかったことは伝えられているのですが、 >大仰な言葉の鎧、そのことを自覚しつつ、その手法で表現する、この矛盾をどう解決するのか 意味を伝達できかつリズムを維持できるような言葉の選び方に検討の余地がありますね。自作の推敲の歳に気を付けます。
0繰原さんの作品群に対して、単純にどう声を掛けたらいいのかというので、正直にいうと大分悩んでいました。それで今思うのは、そう、ビジュアルとして多分B-REVIEWで一番濃いのは間違いなく繰原さんの作品群であろうという事でしょうか。そういう事をまず思います。 これは、余計かもしれないですけど、詩を読んでbloodborneプレイした時みたいな体験が出来たら多分凄く面白いと思います。それを言葉でどう演出するのか、というのは難しいかもしれないんですけど、達成出来たら多分面白い事になると思います。個人的に本作は今までの作のなかで一番面白い。
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